その昔、あすかコミックス他で出版された名作たちが次々と蘇ります! 十年程前に手放してしまったのを後悔していましたので、本当に嬉しい。
●二日月●粘着質な転校生に違和感を感じ始めた頃、彼女の異能力が話題になり…。 (1990) 『けれど 彼女のグループ内での立場は変化しました』 山岸先生が時代に先駆けてメンタルトレーニングを描いた作品。 悪意ある者の言葉に縛られる事こそ、本当の呪いなのかも知れません。
●ティンカー・ベル●美しい母と姉ふたり。顧みられない末っ子は妖精と友達になる。 (1973) 『あたしにはティンクがいるもの うるさい友だちなんかより数倍…』 級友の兄の登場シーン、サリンジャーのナイン・ストーリーズを思い出しました。 ティンカー・ベルの金粉って、ディズニーが最初なんですね。収録作最古作品。
●幸福の王子●盗みに入った家に置き去りにされていた子供、その純粋な魂はやがて…。 (1975) 『こいつの心臓がイカレちまったら 食事代ぐらいじゃすまないからだ』 O・ワイルドの「幸福の王子」を下敷きに、ツバメ代わりに奔走する羽目になる男。 彼は小心者の泥棒ながら、初恋の女性の忘れ形見の少年を見捨てられない。
●貴船の道●病で死にゆく女。その家庭に後妻として入った愛人は悪夢に苦しめられる。 (1993) 『醜い…わたし すべてを許せないわたしが 悲…しい… 苦し…い…』 夢に出てくる前妻はいつも後ろ姿。邦画「リング」も、顔を白紙で隠してる幽霊が怖かった。 不倫がバレてないと思うのは当人達だけですね。女性版『蜃気楼』のような作品。
●黒のヘレネー●身も心も美しいと讃えられる女の内実は、利己的な欲望の塊でしかなかった。 (1979) 『称賛されるのはあたりまえ ほんとお母さま いつもおかしなことをおっしゃる』 ブラッド・ピット主演で映画化されたトロイア戦争。その発端となった美女ヘレネーと その姉クリュタイムネストラ。『蛭子』『星の素白き花束の』と違い自覚のない悪意を描く。
●朱雀門●独身のイラストレーターである叔母は、芥川龍之介「六の宮の姫君」をこう解釈した。 (1991) 『「生」を生きない者は 「死」をも死ねない… と彼は言いたいのよ』 主人公である少女と自由業の叔母という関係性から、一見『二口女』に似てると思いますが、 このテーマはむしろ『天人唐草』と同じ。自ら漕がない人生の船は、幸せの岸でなく滝壷へ…。
●愛天使●憎い父の家庭に乗り込んだ先妻の娘はそこで、世間から隔離された少年と出会う。 (1977) 『わたし 見たんです あの子の後ろに天使が立っているのを』 これも早々と自閉症児をテーマにした作品。山岸先生は「いま読み返すと忸怩たる思い」と 仰ってますが、先駆けて世間に認知を広めるという素晴らしい功績はあると思います。 ●奈落●金髪の姉とブルネットの妹、どちらも母に瓜二つだが、賛美されるのはいつも姉…。 (1988) 『こうしてお二人並んでいると まるで色違いのお人形のようですね』 仏女優C・ドヌーヴとF・ドルレアックを想定して描かれた作品。ドヌーヴは実際に 「子供の頃、姉さんが死にますように、と願った」と漏らした…と読んだ記憶があります。
●天使カード●締切に追われる女性と、その飼猫ワビ。ある日天使が鬼の形相で襲ってくる! (1996) 『ネコはもともと自分が主人だと思ってるわよ』 途中で「えっ何?ホラーなの!?」と思いましたが、山岸先生が見た夢だそうです。 私の愛猫も甘やかし過ぎて、自分を中心に世界が回ってると思っているようです…。
面白くもあり、登場人物にいらだちを感じたり、2巻完結まで読みました。 次回作を楽しみにしております。
著者の山岸氏は、2007年に手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞していますね。 もちろん、彼女は大御所なので、それ自体がすごいことではないのかもしれませんが、 この話の”イラストT賞”の話に重なるような気が……。 家相なんて、要は、自己暗示も働いて、気の持ちようだというのは、このストーリーの中でも 示されているのですが、やはり人間はそういうものに影響されやすいですよね。 私は、この巻で示されている、あまりよくない家相が自分の家にあるのを発見して しまいまして、ちょっと不安な気分になりました。 多分、他にもそういう人はいるでしょう。 ほどほどに気を付けて、でも影響され過ぎないようにするべきですね。 話は面白いので、一気に読んでしまいました。 ここに出てくる占い師(風水師?)の人の話を聞きたいなあ。
長かったローザンヌ編が一気に完結しました。
読者の想像がつかない結果ですごい盛り上がりでした。
六花ちゃんと、ローラ・チャンの関係もドラマチックです。
第一部の第一巻から読み続けてきてきて、
ここ最終巻にきて、今までのストーリーを懐かしく思いだしました。
最後まで、六花ちゃんに先はあるの〜?
と、終始スリリングな気持を保持させられながら引っ張られてきました。
ハンデで悩みながらもバレエをやめないで、
コリオグラファーの才能が開花していく六花ちゃんの成長を見るのが楽しみでした。
忘れられないショッッキングな出来事があったのを思い出したり。
また充電されてから、続きを描いて欲しいです。気長に待ちます。
漫画が軽く見られる要因の一つに、ストーリーが主人公の独壇場で当たり前の展開、
浮世離れした現実味の無い内容、エセファンタジーで欲求不満解消と
毒舌家に非難されても仕方の無いリアリズムの欠如が挙げられる。
そのリアリズムの追求が万人の共感を呼び、指導者ならば、当事者ならば、
両親きょうだい親戚友人、その他様々な人がどのような思いで、
その世界に関わっているかを見事に描ききっている今回。
「踊る」ために、そこに至るまでにどんなことが起こりうるか、
臨場感溢れる展開のバレエ漫画。
姉の過酷な短いバレエ人生を背景に、妹がどうやって成長していくのか、
手に汗握る展開・・・のはずが、ローザンヌを背景に引っ張る引っ張る。
しかし、この中に書き込まれた様々な状況が一つのコンクールに参加すること、
その手間と労力と刻み込まれた修練と努力が、一瞬のうちに脆く崩れたり、
何かのきっかけで助けられたり、落ち込んだりという、鮮やかな構成。
特に、最も得意とするコンテンポラリーに出演できなかったことが、
どのような結果になるのか・・・。いやはや、本当に見ものです。
若い時からこんな風に人生の修羅場をやり取りして積み重ねていく・・・。
その先に見えてくるものは何なのか?
漫画の世界とはいえ、この設定にため息・・・。
やはり、魅力的な作品です。
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