本書は大隈重信の公開霊言をまとめたものである。
大隈重信と言えば、立憲改進党を設立し、総理大臣にもなった
初めて政党内閣を組閣した人である。また、東京専門学校
(現・早稲田大学)を創立し学長を務めた人でもある。
つまり、政治家でありながら教育者でもあった方なのである。
学校設立と言えば、慶応義塾を作った福沢諭吉を思い浮かべる
が、福沢諭吉は教育者であるが政治家ではなかった。その意味で
言えば、より多くの仕事をなした人と言ってもいいだろう。
本書の中で大隈重信はスケールの大きな政治論と教育論を
展開している。現代の諸問題についてもかなり勉強されて
いるようで、日本が向かうべき方向性を指し示していると
言っても過言ではないだろう。
そして幸福実現党が向かうべき方向についても言及している。
あとがきにもあるように方向性はハッキリと見えている。
それは宗教改革、政治改革、教育改革である。
そして新しい経営思想を打ち出して日本を発展させることである。
福沢諭吉による「新学問のすすめ」も良かったが、本書はそれをも
凌ぐ奥深い硬派の内容である。
是非多くの政治関係者並びに教育関係者に読んで頂きたい良書である。
緻密で正確な調査とそれを表す堅い言葉のおかげで、読みながら思い描く福沢や大隈の人間像が鮮明でした。 とても不思議なのですが、二人とも何処かしら「愛すべき人物」的な印象が残ります、その時代、そこに生きた人々を深く知るためには静かな愛の心でじっくり寄り添うことが必要なのだと池田勇太先生の文章から教えられました、次からの著書も楽しみにしています。 川柳もどんどん発表して下さい。
早稲田大学の創立者である大隈重信の生涯に国際通貨の「円」誕生の話をなぞらえた小説。大隈重信は佐賀鍋島藩の出身だが、佐賀藩は江戸時代初期から福岡藩と交代で長崎港警備を幕府から命じられていた。膨大な警備費用が必要な半面、西洋文明をいち早く入手できるというメリットがあり、アームストロング砲を製造する技術も長崎に近かったという地の利があったからこそである。
さらに、大隈重信個人に置き換えれば、フェートン号事件によって従来のオランダ語に加えて英語の必要性を痛感し、外国語習得にも地の利が生きていたことになる。世界の先進的な知識を入手したことで諸外国との問題を解決し、その名声が中央政府に届くようになり、活躍の場は東京になる。外交の重要さは財政とともに、現代ニッポンにも同じことがいえるが、その難局を大隈は切り盛りしてきた。
しかし、社会は順風満帆の人間には批判はすれど援助はしない。
まさに、大隈重信の人生に、その典型を見ることができるが、これは大隈重信の生涯を俯瞰することで納得できる。
日本は侵略国家であったことを反省していないとアジア諸国から糾弾されるが、その原因をもたらしたのは欧米である。その欧米の傲慢な対応は本書でも随所に出ているが、大隈重信たちの尽力があって、日本は欧米の植民地となることはなかった。
現在、アメリカの基地が存在する現状を大隈重信はどのように評するのか、聞いてみたいものと思った。
内容はタイトルに同じ。日本近代史における歴史上の人物たちの 肉声を余すところなく収録したCDです。
一通り聴いた限りでは永井柳太郎が一番演説慣れしているというか 聴き取りやすい話し方です。その他の人たちは話し方が不明瞭だったり (音盤の状態に起因するものもあるが)噛んだりしているものもあって 面白いです。
解説書については各人のプロフィールが1ページづつあるだけであり、演説の 背景とか音源に関する話題はありません。
大まかな音源データは「SP盤貴重音源 岡田コレクション」 の ホームページで参照できます。
久恒啓一氏の編著の「志」。白いカバーにつつまれて清楚な感じを漂わせる書だが、ページをめくれば、なんとすごい気迫とエネルギーが炎となって燃え上がってくる。
久恒氏は5年ほど前から日本全国に散在している人物記念館まわりを始めた。この人も志を立てたら、一念発起のすさまじさというか、すでに250館を回ったという。
人物研究をする人は、一人の人間を深く掘ってゆく人が多いが、久恒氏はまず広く人物記念館をまわって、日本の偉人の探検をおこなった。
その結果いろいろみえてきたものの一部がこの本に結実したといえよう。
収録した人物の発言は全部で130語ほどである。歴史上の著名人もいれば松井秀樹のような若い現役の人も含んでいる。あらゆる階層、あらゆる職業、分野を網羅しているといってよい。「志を立てる」「志を育む」「志を磨く」の3つにわけて、本を組み立てている。
さて、ここにあるのは、偉人や著名人などひとかどの人の口からもれた急所、カタルシスのような言葉である。決して大言壮語ではない。名言というのでもない。思わずもれたというか、自らを律して語ったことばである。まさしく、これを拾いだした久恒啓一の著作だなあと感じたのである。偉人の発言に言い添える形で、久恒さんの解説がつづく。その理解の深さ、味わいがいい。まるで偉人の隣に立って、いいたりないところを補っているかのようだ。
「志を立てる」で偉人たちは声高らかに言う。志というものはあたかも自分に下された天命、神から命じられたものだ。自明きわまるもの、として微塵の迷いもない。
「わだばゴッホになる」(棟方志功)
「私は、この世界に、何かをやりとげるために、生まれてきたのだ」(野口英世)
「志を育む」段階の偉人たちは、もう迷わず、右顧左眄せず、反省せず、一直線である。先はどうなるかなどと案じている気配はない。
「事の成る成らぬは天に任し、自分はひとえに その日その日の務めを全うすれば足る」
(新渡戸稲造)
「最初にそれがとても至難だとおもわれるものを、屈服せずにやり遂げると、それは必ず至難でないものであることが分る」(堂本印象)
「志を磨く」段階の偉人たちは到達した至言をものす。初心を忘れず、動ぜず、反省せず、ぶれない。強烈な自信に支えられて、しかものりをこえない。
「僕は死ぬ迄進歩する積りで居ます」(夏目漱石)
「反省をしなければならない。しかし、改心をしてはいけない」(頭山満)
「自分がやりかけた仕事を一歩づつたゆみなく進んでいくのが、不思議なことだけど、この世の生き甲斐なんです。(いわさきちひろ)
結局、久恒さんがいいたいことは、偉人たちはたゆまず継続してやった。継続させていくものが志である、ということなのだろうと思う。心の疲れた人がいつでもページをめくれるように、静かなトーンの白表紙にしたのは、名編集の賜物だろう。
私自身もピタッと感じてうれしくなった言葉がいくつもあった。
「他人が笑おうが笑うまいが、自分の歌を歌えばいいんだよ」岡本太郎
「私は精神的に弱いので、逆にそれを人にさらけ出して、どうしてもやらざるを得ない状況に自分を追い込んでゆくのである」(植村直己)
「作家にとって大切なのは勉強すること、つまり本を読むことだ」太宰治 へえー あの太宰が・・。
「もう、これしかない。一つの業です」(手塚治)には同感!人生って結局一つのことをやるしかないんだな。
「運動は事務の堆積である」(市川房江)
「やはりもう一度女に生まれて、婦人運動をしなければならないね」市川房江
私は40年もNPO活動をやってきたが、この言葉には参りましたね。NPO活動のちまちまこまこました事務がいやになってきた時、ドーンとこの言葉。しかも、もう一度女にうまれて婦人活動をしなければならぬ、というのですから、青天の霹靂みたいなお言葉です。市川さんは神様ですな!
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