五味康祐といえば無頼で鳴らした著名昭和作家の一人ですが、オーディオ愛好家としてもつとに有名でした。
その独断と偏見(?)に満ちた論評には賛否両論が沸いたものですが、当時やや否定的に捉えていた小生がジックリ読み返してみても、腹の据わった評論であることがよく分かります。
つまりは「何者にも媚びへつらっていない」ことが十分に伝わってくるのです。
私人としての著者の芸術的感性を十分感じ取ることが出来る名著であると思います。
薄桜記 (1959年 / 日本 )
監督: 森一生 原作: 五味康祐 出演: 市川雷蔵 勝新太郎
赤穂浪士の仇討を背景とした時代劇
中山安兵衛が高田の馬場へ伯父の決闘の助勢に駆けつける途中、すれちがった旗本丹下典膳は安兵衛の襷の結び目が解けかけているのに気づいたことから始まる時代劇。
小宮山隆央
行きがかり上のトラブルが発端となり、同門の一派から恨みを買い、妻をレイプされた旗本・丹下典膳(市川雷蔵)。 武士としての面子から、親族や世間に対しては、自らの体を張ってまで、「妻の不名誉」を隠しつづける一方で、その妻に対しては、「(レイプされたことは)そちの罪ではないから、とがめはせぬ。とがめはせぬが、そちの体を許せぬのだ。」と別れを告げる典膳。 この映画、チャンバラ・シーンや役者の「古典的演技」はあるけれど、時代劇という枠の中にくくられる作品ではないと思います。どんな男女の間にも存在しうる、普遍的なテーマを真正面から問うています。 職も財産もなくし、ひたすらレイプ犯への復讐の時をうかがう典膳。 しかし、その先には、あまりにも壮絶な結末が用意されて??る・・・この物語。 果たして、これを愛と呼ぶのでしょうか? 私には、もう、判断できません。
セリフは文語調、複雑な人物相関図、ストーリーもいいところで暗転しまくる上巻。
上巻は相関図をメモしたり居合の用語を調べながら、最後まで読むべきか、
現代小説に慣れ親しんでいるナンパなわたしは悩みました。
* * *
下巻の前半でやっと慣れ、面白くなってきました。
軟弱現代人にはイタいところですが、かつての日本のよき精神としての、武士道、信・偽。。
全ての人の行動・人生において精神のありかたを問われているような
Take it easyに侵される前のストイックな美学に貫かれています。
武芸帳を発端に禁中・殿中の関係のなか天下平定のために暗躍する柳生の真意とは。
攻略のために研究行動する日本、一方、危機を迎えてからこそ緻密に敵を探る中国。
朝鮮・中国とのスパイものへ急発展か?いったい柳生はどう関わっているのか?
じゃあ謎多きあの人はいったい?あの人たちは何でしつこくあちこち登場したの?
といった雰囲気で未完に終わってしまいます。
そこがドラマ・映画で多様に展開できるしかけになりました。
武芸帳の謎で、多少の無理もあれ、
これだけ広範囲に深く広く展開しているものはないでしょう。
柳生もののみならず、時代小説の発展に多く寄与した作品というのもうなずけます。
最初の三つ星を撤回し、構成難解・未完の分僭越ながら恐る恐る−1とさせていただきます。
残った★は読者の想像力で楽しみましょう。
山本耕史主演のNHK時代劇ということで大いに期待して毎週オンエアーで見ました。 配役、脚本、演出どれも申し分なく毎週唸りながら時には涙しながら11週間あっという間に過ぎました。 これはストーリーなど細かな事は書かないほうがよさそうです、とにかく主人公は架空の武士、ある事情でお家が取り潰しになりしかも片腕を失います。そして気が付くとあの悪名高き吉良上野介(長塚京三)の用心棒となり、討ち入りを阻む役を命ぜられます。片腕ながらも無敵の剣豪と敵対する赤穂側の堀部安兵衛との友情、ダブルヒロイン、柴本幸とともさかりえ等全てが見ものです。吉良側から見た「討ち入り」も新鮮な解釈で歴史的にも楽しめますので大河ドラマ好きの方でも満足できる切ない系時代劇、しかし外国人には理解しがたい世界でしょうね。最終回は体が震えます、悶えます・・・「陽炎の辻」ファンも絶対見逃さないで。
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