おどろきでした。
わざと原作にはあたらずに、NHKのラジオ朗読をおいかけていました。
明治期の快作です。
初めての言文一致態で書かれた小説。当時は『当世書生気質』、『滝口入道』など擬古文調の文章で小説を書くのが当たり前だったため、この本は革新的であり、現在でも文学的にも歴史的にも大変価値のあるものであると思う。ただ、言文一致と言っても現代の小説並みではなく、落語っぽくおもしろおかしく節を付けて茶化しているような所があり、擬古文よりはましだが、やはり若干読みにくい。
貧乏ではあるが頭の切れる書生、内海文三を通して当時の風俗を描写した作品。居候をしている娘のお伊勢に惚れてあくせくしたり、免職を食らって職を探して奔走したりと出来事の正確な描写が例の節を付けた文章と相まって芝居かなんぞの様に展開していくのはなかなか面白い。一昔前の言い回しが多く注釈が非常に多いのが気になるが、それ以外は別に古文の教養がなくても何の支障もなく読みこなせる。読みにくいとはいえ節のついた言い回しも慣れれば非常に面白く感じられてくる。細かな感情描写もなかなかのもので、これもいいと思った。
ただ、どうも後の方になってくると、事態の深刻さと文章の軽い調子に少し齟齬が出てきてだんだん興が冷めてくる。一応お伊勢に対する恋愛がベースになっているものの、二葉亭本人の唱えた正確な描写に拘りすぎている感があり、読んでいると面白いかというとちょっと微妙だった。途中で著者が投げ出してしまっている(つまり未完)でもあり、知古との諍いや、職の復帰など片づかないところが多く、自分自身で後のストーリーが予想されるほどのところで終わっているのならば良かったのだが、中途半端で不満が残った。
文学的には価値があると読んでいても感じさせられるところがあるが、残念ながら面白いかと言えばそうでもない。資料的な興味がある人は読んでもいいかもしれないが、微妙なところ。
すらすら読めない重さがありました。一語一語反すうしながら ”孤独” を考え、読み終えた時、この本の満足感と共に様々な想いが、考えさせられるものでした。
還暦を迎える年齢でようやく手にした必読本。作者はロシア語の大先輩にも当たる人です。同じような年齢の人にお薦めです。
一読した上での感想ですが早く続きが読みたくなりました。 今回も橋本さんなりの謎解きというかオリジナルな解釈が随所にみられます。以上本題とは関係ないですが今作の二葉亭四迷 また過去 小林秀雄の恵みの中の本居宣長への橋本さんの愛はなんとなく感じましたが、三島由紀夫への愛がその2人と比較すると感じられないという印象を本作品から過去著作へ結びつけると持ってしまいました。気のせいかと思いますが また本作品でのラスト 『平凡』の中のお糸さんの所の橋本さんの解釈はけっこう好きですね。
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