小学4年生のさよが、図書館の片隅で出会った『七夜物語』。夢中で読むのに、内容は覚えていられない不思議な本。
新聞の連載小説を読むことができなかった私が生まれて初めて読んだのです。川上さんの文章も好き、酒井さんの絵も好き。 毎日、読み続けられたのも奇跡だったんですが、ゆっくりまとめて読みたい思いもあって、単行本化はずっと楽しみにしていました。 だからすぐに購入して、読み始めました。 挿絵もちゃんと掲載されていてうれしかった。
あれ?
私、この物語読んだんだよね…加筆されているとはいえ、不思議と初めて読むかのように読みました。 『七夜物語』は覚えてられない物語なのだけど
こどもなりにいろいろ考えているさよを通して、私は自分自身を思い出しています。 『不思議な国のアリス』『ナルニア国物語』『小さいモモちゃん』『おしいれのぼうけん』…大好きだった物語が蘇ります。
私もかつてグルクレルに会ったことがある…と思いたい。
70代のセンセイと、38歳のツキコさん。二人に共通するのは「孤独」。一人で、生きて、ひとりで食べて、一人で旅してきた二人。行きつけの居酒屋で、約束もせず会うようになってから、いつの間にか互いがなくてはならない存在になっていく。 二人の会話の中には何も熱い想いや、激しいものはない。いたって、日常的な、先生と生徒の会話。でも、そこからとても温かい優しい気持ちが伝わってくる。センセイの老いだけが、悲しく横たわり、「永遠」のないことを意識させる。 ゆっくり味わって読める1冊。
なんともいえないセンセイと月子さんの会話とペースに、とても引き込まれましたよ。ユーモアもありで面白かったです☆ 私自身が31歳年上の方とお付き合いしているので特別な感情も残りました。
本作は、近松門左衛門作「曽根崎心中」の翻案であり、ストーリーはそのままに、角田光代が 遊女 初の口を借りて 元禄の浮世に彼女が夢見た儚い数日を描いたもの。
原作を知る者も 知らない者も 遊郭の淡い灯りを思い描き 初の言葉に身を委ねてもらいたい。次第に その時代 そこにいた人々 を肌に感じ そして ほんのりと浮かぶだろう 初の儚い夢現に包まれていく。
これだけ世に知られた原作にネタばれもないだろうが、原作では明らかになる心中のきっかけの真相が 本作ではラストで逆に曖昧なものとなっていく。(このネタが分からぬ場合、読後にwikipediaを一読いただきたい) この違いは、事実を知らぬ初 事実を疑う初 という大きな違いとなるが、その違いを味わうなら、角田光代の描こうとしたものに、より近づけるのではないだろうか。
浄瑠璃とも歌舞伎とも違う より映像的な世界に翻案されながら その映像は 元禄の遊女から 現代の私達が確かに受け止められる言葉になっている〜終盤 二人が見た あかり それを感じながら。
川上弘美の原作を、主演:沢田研二・坂井真紀、演出:久世光彦、音楽:cobaで音楽劇に。 作中で引用されるのが伊良子清白から萩原朔太郎になっていたり、センセイが朗らかなキャラクターになっていたりと、浮き世離れした場面を除けて「老境に差し掛かった男と若くない女」の恋物語に焦点を合わせている印象。 個人的には、無礼な若い男のピアスを盗る場面や、ふと意地悪になるセンセイも見たかったのですが。 しかしツキコとセンセイの話に主軸が置かれているからこそ、あの切ないラストシーンがある。 また久世氏らしいコメディ要素も随所にあり、全体がほんのりとあたたかい(それは昭和の香りだろうか)。音楽も当たり前のように舞台に溶け込んでいて良い。 時折取り出して愉しみたいDVD。
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