百選を何度か読んだ後に、この本を読みました。すると、百選ではよくわからなかった箇所や、頭に残らなかった知識が整理でき、判例の理解が深まりました。
この本の良いところは、1、事案の論点・結論が先に書いてある。2、論点ごとに判例の流れを矢印をつかって整理してある。3、「学習ポイント」の項目で、その判例の重要ポイントを解説している。4、判例要旨の後の「伊藤真のワンポイント・レッスン」でその判例についてのプラスαの知識が紹介されている。5、余白に、判例理解のために必要な関連法規の条文引用や説明がされている。というところです。
比較のために、百選のウィークポイントを挙げると、1、論点・結論ががわかりにくい。2、法律構成がわかりにくく、場合によっては重要部分が省略されている。3、学習ポイントがわからない。4、「解説」に独りよがりなものがある。5、判例理解に必要な関連知識・条文が紹介されていない。というところです。
したがって、百選の弱点をフォローするために、この本を使うと、判例に対する理解が深まり、マーク問題への対応力が高まると思います。
法哲学・法思想史の第一人者たる笹倉先生が、法を学ぶ者特にロースクール生向けに、法解釈の手法とその思考方法を多数の有名判例をベースに実践的に解き明かしていく真の良書である。ロースクールでは判例重視の授業が中心に行なわれているが、昨今の最高裁判例至上主義の様相に強い懸念を著者は感じており、判例論理の検証の必要性を強く示唆している。この本を一読すれば、条文解釈の基本と判例論理の分析力がしっかり身につくはずである。また、判例の結論の妥当性の有無のみだけではなく、その理由付け、適用条文、解釈手法(類推解釈等)の妥当性に自然と意識が働くようになるだろう。そのため、新司法試験の論文力向上にも大いに役に立つと思われる。ロースクール生必読の良書である。
去る11月30日、日本記者クラブで開催された党首討論会の共同記者会見において、読売新聞特別編集委員の橋本五郎は、日本未来の党の嘉田由紀子代表(滋賀県知事)に対して、「小沢問題をどういう消化の仕方をしているのか」という非常に悪意に満ちた質問を放った。この為にする「品格」の欠片すらない悪質な問いに、嘉田代表は見事に切り返し、溜飲を下げたことは記憶に新しい。しかし、私なら橋本の嘯く「小沢問題」なるものを逆手に取り、「国民から民主的な選挙によって支持を受け、政権交代を果たした政党や政治家を、民主的な手続きとは別な方法で、それを妨害し、抹殺するようなことはあってはならない」(p.186)という原則的立場を前面に押し出すだろう。もっと直截に言えば、「小沢問題とは、有力政治家を狙ったフレームアップ事件です」と言明しても良かった、と思っている。
さて、本書は文芸評論家、山崎行太郎さんと志岐武彦さんの共著作である。ここで、志岐武彦さんというあまり馴染みのない名前が登場する。山崎さんによれば、「本書の共著者である志岐武彦氏は、司法や法律の専門家ではない。むろんジャーナリストでもない。サラリーマンとして定年まで勤め、今は定年退職し、年金生活を送る一介の平凡な市民である」(p.190)。だが、志岐さんが主催運営するブログ「一市民が斬る!!」について、私は長いこと見続けてきた。とりわけ、陸山会事件等に係る「検察の罠」や「検察の不正」などについては、森ゆうこ参議院議員渾身の著書や郷原信郎さんの『検察崩壊』などで知れ渡っているが、最高裁(事務総局)の“犯罪性”を本格的に暴いた作品は、本作が初めてだろう。「三権」の一角を占める権力機構が犯罪的行為に手を染めた事実は、真にショッキングだ。
なかでも、2010年9月14日の東京第五検察審査会(第五検審)における二度目の「起訴議決」を巡る「疑惑」は、志岐さん達の情報公開制度等も活用した、地道な粘り強い取り組みの結果、生じたものだった。そして、当該審査員の平均年齢の度重なる間違いや、国会でも森議員が追及した、第五検審で説明を行ったとされる当時の東京地検特捜部・斉藤孝博副部長の発言、行動記録等も踏まえ、志岐さんは以下のごとく推論する―「検察審査会は開かれていなかったのではないか」と。こう仮定すると符節が合う。まさしく第五検審は「架空議決」を行ったのだ。少なくとも、小沢一郎さんと菅直人が民主党代表を争った9月14日には開かれていない…。勿論、その背後には最高裁(事務総局)の姿がくっきりと見える…。さらに、前出の橋本が禄を食む「読売」などが「架空議決」の片棒を担いでいたことも…。
|