人生というものの縮図がここにあります。8歳の時に、一つの人生における分水嶺的な出来事に直面してしまった、小三郎が向上心と誇りを持って生きることを選んでしまったことから、この物語は始まります。
詳しい筋書きは省きますが、人の世はなんと生きにくく、人の心とはなんと難しいものであるかを思い知らされます。そんなことで妬むのか!そんなことを根に持つのか!おまえまでもがやっかんでいるのか!人間通とでも呼ぶのがふさわしい山本周五郎によって、人の心の奥襞があぶり出されていきます。
それでも負けじと頑張る小三郎は、やがて三浦主水正になり、主君の寵愛を受けるようになるが…。頑張ること、正しいこと、人のためになること、いずれもそれが賞賛さるべきことであると皆が分かっていることでありながら、人の世はそれを押し通すことを許さない。人間観察力において周五郎は、ドストエフスキーを超えていると思いました。
味わい深い小品というのがぴったりの映画。大作ではないけれど一服の清涼剤のような映画で、今の邦画ではこういう後味の爽やかさはなかなか望めない。全体に黒澤明の持ち味を失わないように配慮されており、キャストも後期の黒澤組の面々で固められています。寺尾聡と宮崎美子は抑えた演技ながら好演でしたが、三船史郎が意外に良かった。お世辞にも演技が上手いとはいえないけど豪快なキャラクターの殿様にぴったりで、この人にもっと映画に出てもらいたいと思いました。
凍てつく東北の山に暮らすマタギ、富治。富治の半生をマタギという狩人としての暮らし、圧倒的な自然の中で壮大に描いた力作巨編。読み始めるやストーリーにぐいぐい引き込まれ、一気に読了した。読書の悦びをストレートに再認識させる本だ。文句なく★5つ。
人間がまっ二つに割れるなんてちょっと荒唐無稽なところはあるも、暗い出生からくるそこはかと虚無的な主人公はまさに雷蔵にぴったりと言っていいだろう。まだ狂四郎がシリーズになっていなかった当時の作品ということも注目していいだろう。殺陣の醍醐味も味わえる中篇の佳作である。
今野先生の本は、「隠蔽捜査」シリーズや「ST」シリーズを読みました。
その先生がオカルト風味な小説を書かれてると知って、手に取りました。
キャラクターはそれぞれ個性的で面白いです。
主人公は刑事総務課所属なんですが、R特捜班という「オカルトチックな事件専門」の部署との連絡係をしています。
その彼視点で進みますが、怖がりなのが良いですね。
親近感が持てます。
何しろ読者も、きっと「見えない人」が大多数だと思うので。
短編集なので全体的にあっさりしていて、全く怖くないです。
あと、心霊的なことに対してのR特捜班のメンバーの関わり方が、好感持てました。
霊能力者たちなのに、「何でもかんでも霊のせいにしない」という、一歩引いた受け止め方が。
基本的に、生きてる人にも、もう死んでる人にも優しい話だと思いました。
心霊人情ストーリーかもしれません。
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