小粒ながら、豊かな内容と優れた構成を併せ持つ秀作アニメ。控え目なたたずまいの中に爽やかで心のこもった演出が施されている大いに好感の持てる作品です。原作漫画はまだ完結していないので、かなり短縮した作りになってはいるものの、オリジナルの魅力が誠実に伝えらえていることは確かです。
宇宙人の血をひく少女、成恵と平凡な地球人の少年、和人とのラブストーリーがその骨子ですが、宇宙がらみといっても大げさなSF色を前面に打ち出してはおらず、あくまでもささやかな日常が舞台となっているところに新鮮さを感じます。はらはらするような恋の駆け引きに主眼が置かれているわけではなく、ごく自然な流れで恋仲になった主役カップルと周囲の人々との心の触れ合いがさりげなく、しかし感動的に描かれているところがとてもいい。
コンパクトなワンクール尺の中にバラエティに富んだエピソードを無理なく散りばめた構成が素晴らしい。主役カップルの動向を描くだけではなく、成恵の両親の出会いのエピソードや、銀河軍から脱走してきた悲しき星船である春名のエピソードなどが随所に配されてドラマとしての厚みが加わり作品全体の印象度を高めています。また成恵と和人の恋をめぐる展開も、ちょっとした冒険あり、可愛らしいすれ違いあり、心和むロマンティックな場面ありと観ていてとても微笑ましい。
たくましくも純粋な成恵と穏やかで心優しい和人の魅力はもちろん、このカップルを囲むサブキャラクターたちの魅力が十分発揮されているところもこのアニメの良き特色です。最初は接点の無かった登場人物たちが出会い次第に心を通わせていくあたりの演出もさりげなく自然体。気難しそうでいて実はとても面倒見のいいSFマニアのはじめ、友達思いの野球少年正樹、宇宙からやってきた成恵の姉でどこか寂しげな香奈花、孤独な香奈花を温かく見守りながら導く星船の化身バチスカーフらのキャラクター造形があくまでも優しく実に心地いい。
宇宙人としての宿命を背負いながらも故郷である地球をこよなく愛し真直ぐに生きる成恵。その彼女のありのままを優しく受け入れる和人。アイデンティティの壁を超えて一生懸命恋をする若き二人の存在が初々しく温かく、そしてちょっぴり切ない。身分や立場に関係なく相手の存在そのものを愛おしむことの大切さが心に染み入ります。成恵の両親のエピソードや春名の恋路にまつわるエピソードでも、このハートのあるスタンスは一貫しています。そういった意味でも本編はSFながら、オーバーなまでにテクノロジーや戦闘能力をひけらかす作品ではなく、心から人を大切に思うことの尊さ美しさをごく自然に優しく語りかけてくれている味わい深い人間ドラマであると言えるでしょう。
まだまだ小粒ながら素晴らしい隠れたアニメーションが存在することを実感させてくれる、これはささやかだけれど、確かなときめきと温かさがいっぱいの珠玉のボーイ・ミーツ・ガール。
DVDボックスのサンプラーとしてなら、ちょっと高くないかい?というお値段なので、CDが本命でDVDがオマケ、っていう人の方が多いような気が。しかし、「成恵」の真価が有るのはオーディオドラマですねえ。アニメ版からもサウンドシネマ版からも、途中を大幅にすっ飛ばしたエピソードなので原作を読んでいるのが前提になりますが、そうなら言うことなしの素晴らしい出来なので買っても良いと思います。いやあ、自分の間で実力を存分に発揮している声優達の芝居が気持ち良いですねえ。なんとか次を、と思うのはボクだけでは無いはず。
物語も終盤にさしかかったのか、シリアス度が増してきてますね。それでもやっぱりほのぼのラブコメが似合う世界は変わっていません。
終わって欲しくないと思わせる漫画ですね。11巻がでるのはまた来年かな。
ところでこの巻は今までになく読者サービスシーンが多いです(笑)。
タイトルの「成恵の世界」って「非Aの世界」のもじりだそうですが、A・E・ヴァン・ヴォークトがどうこうなんかどーでも良くなってる程作品にはまっているのが素晴らしいですね。成恵が(はじめや香奈花も、だな)和人を媒介に自分の世界を広げていく話のタイトルに、これ以上のものはありますまい。 第7話「天使と宇宙戦艦」はハルナ登場の話。成恵の貧乏性と和人の健気さが可愛い。声だけのドラマでもインパクトがあるハルナの”エンゲージ!”を映像でも観てみたいですね。第8話「親愛なる私へ」は成恵が分裂する話。珍しく和人がカッコいい。第8話「しあわせな生活」は原作の動物園に行く話とハルナの旅館に行く話を一緒にした話。ちょっと無理が無理があるな。でも面白いです。
友達も少なく世間知らずで、ちょっとズレている中学生の成恵と和人が出会 い、互いを好きになるまでを簡潔に描いた第1・2話である。 後のエピソードでは、二人を中心に多様な人間関係が広がっていくのである が、まず序盤では、二人のミニマルな関係性に焦点が置かれている。 成恵と和人は、世間ずれしていない、徹底的にピュアで無垢な存在として 描かれており、見ていて微笑ましく「こういう打算や下心とは無縁の、純な 男女交際を学生時代にしたかったよなぁ~」と、羨望を感じるに充分である。 散々出てくる成恵のパンツ描写は、単なるサービスではなく無垢の象徴でも あり、それを見て、鼻血は出すが決して手は出さない和人も、またピュアな 存在である。 原作の成恵が持っていた「クールな毒舌家」という側面はバッサリ削られ、 初っぱなから可愛さ全開な成恵には違和感もあるが、この方が二人がつき合 いだす経緯に関しては、すんなりと受け入れやすいとも言える。 主演の能登麻美子と阪口大助はまさにハマり役で、透き通るほどピュアで、 純潔を絵に描いたような(まあ、実際に絵だけど)成恵と、青臭くシャイな がら、常に懸命で一途な和人を見事に演じ切っている。 副音声のコメンタリーを聞く限りでは、お二人とも学生時代に恋愛には恵ま れなかったそうで、羨ましさと恥ずかしさに身悶えしつつ演じているそうだ。 一視聴者である僕としては、二人のデートの初々しさに身悶えし、一生懸命 マニュアル本を読んで事前学習する和人に、かつての自分を重ねて気恥ずか しさに震え、そして、成恵の「カ~ズちゃん♪」という甘やかな呼びかけに はもう転げ回るしかなく、視聴している姿はちょっと他人に見せられない。
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