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癖が少なすぎる感じです。
全体としてはまぁまぁ・・・・

中華人民共和国 (ちくま新書) 200頁も満たない文章で「中華人民共和国」という国をポイントを押さえながら解説している。難しいことを考えなければ、はじめての入門書として本書は必要十分な内容を備えている。本書は四部構成。第一章では中国が「表の顔と裏の顔」を持つ国で、メンツを重んじ、原則主義を標榜しながら、常にどこかに逃げ道を用意しておく現実主義の国であることを教えてくれる。即ち、何らかの政治問題が起こった際、最初に現れる中国の表の顔に感情的になることなく、日本人は裏の顔を読み取るか、じっくり現れるのを待つか冷静に対処するという「対中基本方針」のようなものを導き出せるだろう。共産党と人民解放軍に支配される政治体制が簡便に鳥瞰され「共産中国」の看板の下での資本主義化への悪戦苦闘、大国化貫徹のための現実主義外交、ただ「中国の根本の問題は、政治の全面的改革」とする結びは、共産党の変革ないし退場の期待を暗示する著者の本音が見て取れ、凡庸な結論だと思う。
中華人民共和国誕生の社会史 (講談社選書メチエ)  ロシア10月革命もそうなのだが、中国の共産革命のときも、何があったのか、本当に知るのはむずかしい。日中戦争終結後、人民解放軍が農地解放を進めながら農村を押さえつつ都市を包囲する一方、腐敗した国民党軍は人民の支持を失い、文化財などのお宝をかき集め台湾に逃げたというのが、毛沢東思想に基づく中国の公式的歴史認識である。しかし、それでは戦局はどのように推移したのか、いつどこで行われた戦闘が決め手になったのか、その間中国社会では何があったのかなどの詳細を知ろうとすると、ほとんどまともな歴史書はないのが現状である。

 本書は1945年から1950年初頭までの国共内戦および人民共和国成立初期の四川省の行政文書、新聞記事などから、当地で何があったのか、社会がどのように変容していったのかを、一般向けに解説した本である。その点では、本書表題はいささか大げさであるが、重慶市がある四川省は、国民党軍の最後の拠点だった場所。兵員、糧食の補給源として最後まで収奪を受けた地域であり、この地の研究をもって中国全土での社会変容を推測することは、まちがいとはいえないだろう。

 そこで起こったことは、混乱の極みである。金を積んで徴兵のがれ、食料の隠匿が横行する。物資徴発を課せられた行政機関は、ノルマ達成のため書類を操作し、ない物資をあるように見せかける。大量に流れ込む難民たち。地方公務員は職場放棄し、末端行政が空洞化していった。これでは総力戦自体が成り立たない。人民革命は民国期に残存していた封建制度の矛盾から起きた歴史的必然ではなく、総力戦の負担に社会が堪えられなかったことが主たる要因であると、著者はいう。

 人資物資が逼迫するなか、しだいに地主や企業経営者などの富裕者に対する敵意が醸成されていく。共産党はこの敵意を積極的に利用する形で人民のなかに支持を広げていった。開放後、崩壊した行政機関、相互の信頼を失った地域社会が、負の遺産として共産党政府に引き継がれた。文化大革命に横行したつるし上げの伝統はこの時期に始まったといえるだろう。

 しかし、だから中国はだめなんだ、などといってはいけない。明治維新以降、自立的な地域社会を「ムラ社会」に再編してきた日本とちがって、中国は「したたかであつかいにくい『自由』な民」の社会。「日本のように特異な凝集力を持ち、総力戦にも過度に適応しうる社会は、むしろ例外的な存在であったことに気づく。その意味では、中国が経験した事態のほうが、世界的にはより普遍性をもっていたのではなかろうか。」

 グローバル化した現代経済の下で、日本はかつての「ムラ社会」の特質を失いつつある。かつて中国で起こったことは、形を変えて現代日本でも起こっている。金を積み、単調な仕事、危険な仕事を貧困者に押し付ける富裕層。会計操作で投資の損失を隠す大企業の経営者。窮乏に瀕した人間がすることは、いずこも同じなのである。

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