終電を逃して テクテクと修行僧のように吟遊詩人のように 延々とブツブツ言いながら歩いた事がある人ならきっと気に入ると思う。
それと女子高生の親父さんも良かった。 頭ごなしに交際を反対するんではなく 一応伊藤の落語の腕前を吟味するところが。
それにしても酷い落語だったけど(笑)
痩せていた伊藤克信は日本のアルパチーノだった(らしい)。
豪華な出演陣にびっくりしたが、それだけでなく内容が濃く、 参加している全ての人の愛にあふれている! 森田芳光という人の伝記でもあり、人生讃歌として感動を覚えた。
本書は惜しくも昨年亡くなられた〈2011・12・20逝去、享年61歳〉森田芳光氏の追悼号であり、森田作品全27本の解説(森田監督自身の自作語りつき)や森田監督の生前のインタビュー及び森田作品出演者の追悼インタビューが掲載されており、充実した内容となっている。
森田作品の思い出といえば、やはり森田氏の出世作となった『家族ゲーム』〈1983〉だろう。父母兄弟の四人家族が横一列に並んで食事を摂る光景は何だか異様であり、またその家庭に突如として現れた家庭教師・松田優作(吉本勝役)も異様な(『遊戯』シリーズの鳴海昌平が銃器を参考書に持ち替えてそのまま家庭教師になったような)雰囲気を醸し出しており、当時小学生であった私が見ても子供心に不思議な違和感を感じていた。
ただ、それ以外の作品については特に思い入れもなく(氏の作品を映画館で観たのはリメイク版『椿三十郎』〈2007〉くらいだ)、全作品のうちのいくつかは観ているのだが『家族ゲーム』以外は特に印象はなく、ただ断片的にその映画の変な場面はよく覚えている。
『未来の想い出』は原作者の藤子・F・不二雄先生が易者役で出演されていた事や作中主役の漫画家(演:清水美砂)が『美味しんぼ』をパクったような作品で大ヒットを飛ばしていた場面、『模倣犯』ではクライマックスで主演の中居正弘氏の首がピュ〜と飛んでいく場面(このシーンを見た時、唖然とした)、『黒い家』ではボウリングの玉と大竹しのぶの怪演ぶり(突如胸を露にして「乳吸え!」の絶叫が印象的)、『模倣犯』『海猫』における監禁される伊東美咲の扱い(これを見て思わず私も伊東美咲を監禁して飼いたいと思ってしまった(^_^;)) その他、食に関しても『家族ゲーム』における伊丹十三の目玉焼きや『模倣犯』での藤井隆のたこ焼きの変な食べ方(余談だが、映画における変食名場面に関しては伊丹十三監督作品『タンポポ』〈1985〉で役所広司がホテルの一室で異性と繰り広げる食材プレイが最も印象的だ!)など伊丹十三と同じくらい変食(変わった食べ方)のこだわりが強いのも特徴的だ。
本書を読んでみて今回改めて映像作家・森田芳光について見直す機会を戴いた。 個人的に驚かされるのは映画監督だけでなくプロデューサーとしての見地から特に才能ある新人監督や俳優として実績のない役者たちを数多く抜擢してきた事だろう。劇場映画デビュー作『の・ようなもの』〈1981〉の伊藤克信、『(ハル)』〈1996〉の深津絵里と内野聖陽、『39 刑法第三十九条』〈1999〉の堤真一、『模倣犯』〈2001〉の津田寛治、『間宮兄弟』〈2006〉の塚地武雅、製作総指揮を担当したオムニバス映画『バカヤロー』〈1988〉では当時まだ無名であった中島哲也監督〈第2話〉を起用し、8ミリの自主映画『茅ヶ崎ライブラリー』〈1978〉のポスターをメジャーになる前(『童夢』『AKIRA』以前)の大友克洋氏が手掛けているなどまさに慧眼を持った先見の明には驚かされる。
読後感の感想として日本映画における森田芳光氏の存在は単に作品における受賞や評価以上に見えないところでの森田芳光によって引き出された素質や才能を開花させて今日の日本映画界で活躍する人材を残した影響は大きく、人としても改めて大きな存在であった事を感じさせると同時に亡くなられた事が残念でならない。
故・相米慎二監督同様、60歳70歳を迎えてからさらに円熟的な作品というのも観てみたかった。
間違いなく名作だ。 有名な「家族ゲーム」、「バカヤロー」で表現された「森田ism」は、本作品(35mm デビュー作)にて全て表現されている。後期(例えば「刑法39条」等)の作品では全く現れていない「映画の魅力」を遺憾なく発揮している。 例えば「家族ゲーム」で表現される車のおもちゃのシーン、あるいはあまりに有名な最後のケチャップのシーン。また、存在そのものが「違和」であった戸川純の棺桶に関するセリフ。格好付けて言えば「日常生活の異化」とでもいうべきシーン。初期森田にこの「日常生活の異化」を扱わせれば右に出るものはいないだろう。 本作の中でも、あまりに擦れ違うことで成立していく会話の積み重ねがあまりに見事。他でもない「映画」という表現形式を採用することの「意味」を痛感させてくれる作品だ。あまりに凄い「日本映画の可能性」を感じるためにも必見だと思う。
この作品、松田優作のキャリアの転機にもなった作品であり、どんどん一人歩きしている伝説の作品です。全く同時期に高校受験をした私にとっても、時間を共有していた生涯忘れられない映画です。もともとは有名な原作があり、長渕剛の家庭教師役でTVドラマ化されて(暴力を思い切り振るうのが彼の本質とマッチして、『順子』のイメージから『とんぼ』へと変身する画期となったドラマだった)、そして作られた話題作だったのです。ATG作品でもあり、心ある識者がこぞって絶賛、『キネマ旬報』でも邦画ベスト1に。時代の顔でした。何と言っても有名なのが、地上波放送時のクライマックスカット騒動です。当時私は「最後の晩飯のシーンが見たい!」という部分もありましたが、その一方で森田監督の英断にスカッとしていたものです。 映画の中身といえば、もうこれは名シーン、名台詞のオンパレード。あげていけば切りがありませんが、このオフビートな感じは1980年代日本映画の秀作の一典型となりました。特に伊丹十三監督作品との類似点は、彼自身父親役として出演しているということもあり、考察すべきテーマだと思います。 そうとう戯画化されているのにも関わらず、恐るべき事にこの映画が持つ人間関係の歪みは2000年代の今でさえ通用します。かつて高校生だった私は今や高校教師になりました。生徒にこの映画を見せてあげたいのですが、ひょっとして今だからこそ見せてはならない位にシャレになってない作品のかも知れません。だから生徒達には悪いけれど、この映画とDVDは私の秘めた宝物にしています。 〈追伸〉爆笑問題の太田さんもこの映画のファンだそうです。彼がこの映画の撮られた場所を訪ねるという番組がWOWOWでありました。とても良かったので、DVDがリニューアルされた時、是非盛り込んで欲しいです。
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