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トラフィック [DVD]  本作は封切り時(2001年)にどこかのシネコン(場所忘れた)で見た。本DVDは他店で70%引となった際に購入。このほか北米盤HD―DVDも米アマゾンより購入(日本語字幕はなし。極めて高画質)。
 間違いなく現在まででソダーバーグの最高作は本作だ。2004年以降、メキシコでは政府の対麻薬戦によって既に、現在までに約2万人もの人が殺されているのだそうだ。最近でも高校生が巻き添えを食って十何人も一度に死んでいる。こうれはもう内戦状態と言える。本作は正にそうした状況の予兆を描いているわけで、いかに時代を先どりした映画だったかが、今だからこそわかる。
 米国の麻薬禍は正に、今そこにある危機だ。別に麻薬の効用が人体にとって危機だと言うのではない(中毒になるとかならんとかの効用は人それぞれだからな)。そこに巨悪の根源である非合法組織と統治組織の腐敗が絡むことが法治国家としての危機を招いている、ということだ。
 この映画が素晴らしいのは、米国麻薬禍とその取り締まりというイタチごっこの深刻な状況を、メキシコ・ルートに限定し、米国側・メキシコ側双方、しかも取り締まる側と巨悪側、その上部組織から末端まで、さらには市場を形成する需要者等々と、あらゆる角度から多角的にその実態の描出にスリリングなドラマの形で切り込んでいるという点だ。
 ただし、一つ一つのエピソードはさほど面白い話でもないので、中には退屈して眠る人も出てくるだろう(現実に劇場ではそういう人がけっこういた)。それを回避させるてくれるのが、場面ごとに違った人工色をかぶせる処理を施したこと。ソダーバーグの芸術的感性の鋭さに改めて感嘆する部分だ。この異様な色が生み出す緊迫感の効果は、個人的には相当に成功していた(これでかえって眠くなったという人もいたが)。とくに麻薬取締の政府トップに就いたマイケル・ダグラスの娘が麻薬に溺れ恍惚感に涙を流すシーンの「青一色」の凄さといったらない。ある種文明社会の終焉を点描しているここは何度見ても鳥肌が立つシーンだ(HD―DVDだとその効果は抜群だ)。
 これも極彩色を精細に表現してくれるブルーレイでこそ楽しみたい映画の1つ。是非、国内盤ブルーレイの発売を望む(北米盤は発売済み)。

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