シューマンの『謝肉祭』といえば、わたしにとってはルービンシュタインの録音がベストでした。決して重くなりすぎず、まるでサーカスの練達の芸人が難しい芸をいとも簡単そうに演じてみせるように、洒脱に弾きこなしていたものです。
これまでシューベルトの録音ですぐれた成果をあげてきた田部京子さんが新たにスタートさせたシューマンのツィクルス、驚くことに、今回のアルバムはライブ収録です。もちろん、後で手を加えた部分があるのかもしれませんが、最初の「前口上」から最後の「ダビッド同盟員の行進」まで、じつにテンポよく曲を進めています。「フロレスタン」や「エストレッラ」「告白」など、シューマンならではの感情の振幅も、はったりを感じさせることなく誠実に、説得力をもって表現されています。
とくにすばらしいのは、SACDならではのダイナミックレンジの広い録音でしょう。とくに「前口上」と「同盟員の行進」で強打される和音が、古い録音のようにつぶれたり混濁したりせず、しっかりと表現されているところなど、さすがにSACDの底力を感じさせます。アンプの電源部が弱いと、腰の据わらない音になってしまうかもしれません。拙宅ではSACD時代に対応するため、分電盤から200Vの線をオーディオ専用に引き、トランスで100Vに落として各機器に供給していますが、これは正解でした。
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