今からみれば、ストーリ設定としてはよくあるものだが、その最初に登場した映画として評価できる。 一瞬も目が離せない点ではインディージョーンズに近いものがある。
国の事情のエアポケットに落ちてしまった男の話。 発想はよかったんだけどね、ちょっとストーリーの進め方に無理が見えてきて、だんだん感情移入が出来なくなる。 確かに面白いのは最初から三分の一まで。 設定に無理があるからトム・ハンクスの素朴でいい人ぶりが鼻についてくる。 物語が進むにしたがって、いろんなところに違和感を感じる。 なによりも「ありえない」と思える展開がいくつもあって、荒っぽい筋立てではないだろうか。 ちょっと面白い設定を考えたけどそれだけでは尺が短いからちょっとした感動話をあれこれ付け足しちゃった、みたいな印象。 だらだらしすぎたおかげで、ラストのエピソードはまだあるのかと思ってしまった。 トム・ハンクスとスピルバーグならもっと凄い話が出来ただろうに、この薄さじゃ物足りない。
なにせトランペットがリー・モーガンとドナルド・バードの二人。ピアノもアンドリュー・ヒルとハービー・ハンコックの二人。後期モブレーのモダンな傑作。ドラムのフィリー・ジョー・ジョーンズもすばらしい。この値段なら買い。
とにかく、アンドリュー・ヒルが今、格好いい。大学でジャズにはまって10年以上聴いてきて思ったのは、レコード(CD)で聴くには、昔(50〜60年代)の作品が良く、ライブで聴くなら現在最先鋭の若手だと。どういうことかというと、現代のジャズミュージシャンは、ライブでは凄まじいアバンギャルドな破壊力、コード、モード、フリージャズ、ソウル、ファンク、フュージョン、ロック等々、あらゆるフィールドの音楽とクロスオーバーして、全方面のテクニックを駆使して攻め立てる。そのライブに感動して、知らない若手でもアルバムを買ってみると、これが拍子ぬけなことが多い。案外アルバムではカチッとまとめすぎて、さらに音質もおとなしく、ポップスやムードミュージックのよう。ライブの過激さがCDで、プレイ的にも音質的にも表現できてない。もちろん、ライブなみの破壊力をCDに録音できている若手もいるのだが、それはエレクトリックジャズに多く、アコースティックなジャズCDにおいて、ライブの破壊力と熱気を!と思ってきた。そして、やはりレコード(CD)で聴くジャズは、50年代後半から60年代後半、特にブルーノートに、その成果が結集していると思う。その真髄の一人が、このアンドリュー・ヒルだろう。僕もここ最近聴くようになったばかりだ。正直、この当時から聴いていたリアルタイムのジャズ評論家が故意にか知らないが、無視しているミュージシャンだ。フリーとも新主流派とも取れる音楽性だが、当時大論争を巻き起こしたと聞く、オーネット・コールマン、セシル・テイラー、エリック・ドルフィーらが、その好悪や理解度合は賛否が分かれるが、どの大物評論家も熱く語るが、アンドリュー・ヒルは語られもせず、ジャズ・ジャイアンツらを集めた解説本でも、単独項など設けられていない。しかし、エリック・ドルフィー、ハンク・モブレー等の絡みで彼を知り、1st 、4thと聴いて、これは凄まじいと圧倒され、次々に聴き進める日々。どの作品も、かなり違った表情、バラバラなメンバーなので、これまた手強いのだが。この2nd「Judgment」。これもまた恐ろしい作品だ。これはどうも、今国内外を問わず、最先端のジャズミュージシャンが、ライブで見せる表情に極めて近い音世界を持っていて、それが、現代ミュージシャンならCDでは手堅くまとめてくるのに対して、流石ブルーノートとルディ・ヴァン・ゲルダーサウンド。恐ろしく生々しく音圧のある音で、破綻寸前のスリルをそのままパッケージして出すこの勇気!
メンバーは、リチャード・ディヴィスが毎回おなじみで、他が流動的だが、本作も凄い、。ヴァイブにボビー・ハッチャーソン、ドラムがエルヴィン・ジョーンズと強力無比。その面子から想像できるように、他作以上に、パーカッシヴで変則的で鋭角的で幾何学的なリズムにこだわった作品であろう。当たり前のように、テーマにドラムソロが組みこまれたり、変な位置にヴァイブやドラムソロが来たりする。かと言えば、「静謐な歪み」とでも言うべき、虚空をさまようような美しいピアノと、氷のような響きのヴァイブが冴える名曲「Alfred」があったりする。エルヴィンのブラシも美しく、それでいて不規則で不穏だ。個人的ハイライトは、タイトルの「Judgment」。彼にしたら比較的ストレートなノリだが、エルヴィンのハネまくるシンバル・レガートとボビーのヴァイブが、メタリックかつ弾力性に富んだリズムを叩きだし、そこに超ハイテク盤セロニアス・モンクといった趣のヒルのピアノが乗る。全ての楽器が叩きつけ、殴りかかるよな迫力で迫ってくる。
1st「Black Fire」のほうが、ストレートなキャッチーさと前衛性のバランスが取れて聴きやすいが、本作の手強い深みもまた、捨てがたい。7/8拍子などの変拍子や、8、12、32小節一区切りというわけでない、奇態な曲構成などは、この当時は理解し難いものだったかも知れないが、ジャズやロックで当たり前のように使われる現代のリスナーなら、案外すんなり入れるのではないだろうか?RADIOHEADとかTOOLが好きなロックファンにも是非!
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