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JFK暗殺や911同時多発テロと同様、日本海軍機動部隊による真珠湾攻撃もまた、多くの人のイマジネーションを掻き立てるものらしい。その際たる産物がいわゆる「ルーズベルト陰謀論」だが、著者は本書でその様々なバリエーションを俎上に載せ論破しようと試みている。結局、現在までに明らかになった資料を前提とすれば、ルーズベルトが「真珠湾」という場所まで特定した上で日本の攻撃を事前に察知していたと断定できるだけの証拠は揃っていない、ということになりそうだ。本書を読む限り、陰謀論が多くの論理の飛躍や決めつけ、出所不明の「発掘資料」に依拠していることは読者も納得できるのではないか。
 ハルノートを巡る評価など、細部の議論については個人的に違和感のある部分もあったし、全体的にもう少し詳細に論述してほしかったという思いも残るが、著者の姿勢は概ね冷静かつフェアなものではないかと思う。それでもなお、「やっぱりルーズベルトは知っていた!」と唱える人がいれば、ぜひ説得力ある反論を聞いてみたい。
 また本書はこれ以外にも、ルーズベルトの天皇宛親電や日米通商航海条約廃棄の過程等を対象とした論考を含んでいる。なお、陰謀を証明する決定打として近年一部でセンセーションを巻き起こしたが、やはり本書で批判の対象となっているスティネット『真珠湾の真実』に関しては、秦郁彦編『検証・真珠湾の謎と真実』(PHP研究所)も同時に参考にして頂きたい。
 
 
   
スペシャルピンナップはストライクウィッチーズの
坂本とシャーリーのサンタコス。
 アイドル戦艦陸奥と長門の水着姿、表紙絵の3枚。
 付録は米軍現用兵器ギャルズカレンダー2012。
 
 日米開戦70年という事で、今号では、間も無く映画も
 公開となる連合艦隊と山本五十六の特集になっています。
 まず入門編として、連合艦隊とはどんな組織だったのか、
 どんな艦艇や航空機を持っていたのか、どんなプランを
 立てて、どのようにして戦ったのかを解説。
 イラスト入りで4ページに亘って分かりやすく説明され、
 大まかな組織図や日本海軍艦艇関連用語集もあります。
 
 艦艇と航空機に分けられた擬人化イラストも充実していて
 写真・図版・スペック、兵器ごとの特徴やエピソード等も
 載っていて見応えがあります。
 毎度の事ながら、むっちりで肌色が多めです。
 山本五十六の解説は、人間として、軍政家として、指揮官
 としてどういった面があったのかをテキストとイラストの
 4ページで書かれています。
 
 新連載の「サバゲやろうよ」は知識の無い初心者からでも
 楽しめるように、基礎から載せていくコーナーのようです。
 
 
   
真珠湾攻撃に至る数日を多くの資料とともに記述しています。
日本とアメリカだけでなく、ロシアと戦っていたナチスドイツ側
 の視点も交えてあります。無論全ての記述を鵜呑みにする必要は
 ありませんし、これ以後もいくつか史料は出てきていますので、
 本書と併せて読めば、真珠湾攻撃に至るプロセスが概観できる
 でしょう。
 資料としてよい書物だと思います。
 
 
   
山本五十六に出会ったのは、中学生の時、阿川弘之著「山本五十六」(新潮社)でした。だれよりも米国と戦争をする愚を知り、命を狙われながらも戦争への道を頑強に阻止し、
 しかし御聖断が下ったら、軍人として最も有効な作戦をとるべく全力を尽くす。
 この本との出会いは、人生に大きな影響を与えました。
 本作品でも、右著作は、参考文献となっています。
 
 ワシントン軍縮会議での米英日の主力艦5.5.3条約締結、航空隊司令・空母赤城艦長時代のエピソード、
 海軍次官として実際に命を狙われながら対米戦争に直結する日独伊三国同盟に頑強に反対し、
 海軍大臣米内、軍務局長井上らとともに、海軍の右傾化をこれも命懸けで阻止した。
 航空本部長時代に零戦を含む長距離攻撃機を生むきっかけをつくり、一応日本の航空技術を世界レベルにし、当時は全く新しい発想であった機動部隊を生み、
 自ら作ったそれらを率いて対米戦に不本意の極みながら、実戦部隊最高指揮官として臨む。
 
 とても描ききれないと思ったが、やはりそのあたりは割愛である。
 (本気でこれらを描こうと思ったら、12時間は必要である)
 
 しかし、山本の信念や思想、指揮官としてのスタンス、階級や職種にこだわらない気さくな人柄、
 これらはしっかりと描かれている。
 戦闘シーンはごく短時間で印象的に挿入されるが、CGの完成度はなかなか高く、
 白黒でしか見たことのない空母赤城や蒼龍も、『きっとこんな感じだったのだろう』と思えるくらいによくできている。
 本作品は人間ドラマだが、戦闘を描くならばそれなりの描写が必要であり、この点、一応十分である。
 長すぎず、あっさりめに戦闘シーンを入れているのは、作品としてはメリハリを生み、成功と思う。
 
 しかし、工業力のない日本の海軍が、空母を4隻喪うことの絶望感、優秀なパイロットが一人戦死することで絶望的に下がっていく航空隊の技量、
 そもそもミッドウェー攻略作戦にどれほどの意味があるのか等の背景が、世間でどのくらい理解できるかを考えると、
 この作品に描かれた端的な戦闘シーンが、筆舌に尽くしがたいとも言える大変な状況を示しているのか分かる人は少ないと思われ、
 そういう立場からすると、かなり物足りない作品になるかもしれない。
 
 また、山本が、作戦の最中に将棋をしていたり、味方の損害にかるく相槌をうったり、
 そういう行動を、あの時代、山本という立場、ある思想をもった人間がどういうつもりでしていたか、
 これらは、上記以外にも含まれるさまざまなエピソードと、対米戦の実際の経過や国力の違いに対する山本の認識を知らないと、
 単に嫌味や山本の不真面目さとして見えるかもしれない。
 (私見だが、空母3隻炎上の知らせに対し、色めく参謀たちを尻目に軽く相槌を打つのは、『やはり来るべきものが来た』という気持ちと、
 工業力10倍(実際はそんな生易しい差ではないが)の米国と戦争をしておいて、今更空母が沈んだ沈まないの言ってみても、
 どのみち将来は彼我の建艦能力の差から、日米海軍の量的差異は想像を絶するものになるから、どうしようもないではないか、
 といった諦観に近いものがあり、また、博打好きの山本が、『ついにツキが落ち始めた』ことを認識してのことだと思う)
 
 戦闘シーンを含む、全体のメッセージ性はよく、また役所の演技は非常に光っており、
 かなり山本の人物像を研究し尽くしていると思われ好感が持てる。
 現場の雰囲気や日本海軍の気質も、なかなかよく出ていると思う。
 
 ただ、映画「パールハーバー」のように、真珠湾攻撃に関する事実関係はどうでもよいが(曲がりなりにも歴史を扱った映画で、あらゆる項目に渡ってこれほど出鱈目な映画を他に知らない…)、
 ただ特撮を楽しむべし、といった娯楽性はなく、一体どれほどの人数がこの映画を観て、訴えるもの、主題となっているものを分かるかが余計なことだが心配である。
 
 もし日米戦に興味をもち、この映画をもう少し理解するなら、日米合作の『トラ!トラ!トラ!』を観て歴史背景を知り、
 山村聡演ずる山本の言動を観てからの鑑賞をおすすめする。
 
 
   
82歳になる母が見たがったので入手しました。映像を見ながら昔を思い出している様です。
 
 
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