大番頭ジョン・ギルモア(ts)を、"いい音"で聴く、その1。
ジョン・ギルモアの過激な任侠テナーが大好きな俺だが、サン・ラーを離れた時にどんなサックスを聴かせるのかにも大いに興味があった。そして捜し当てたのが当CD。チック・コリアを含むピート・ラロッカのリズム隊は相手にとって不足なし。期待に胸をふくらませてギルモアのサックスに耳を傾けたが…遺憾な結果となった。テーマをなぞるだけの無愛想なサックスは完全に端役だw。と言うかチック・コリアのピアノに耳を奪われる結果となった。何だこの無機質まるだしのピアノは!これはエヴァンスの冷徹さとは似て非なるもの。冷徹ではなくて冷血…#5の不気味な静けさから漂う妖気なんかもうオカルトだもんな怖い。バックでラロッカが複雑なパルスを送ろうが相手にならない…ピアノがドラムを喰っちゃうなんて凄いピアニストだ、チックは。
John Gilmore(ts) Chick Corea(p) Walter Booker(b) Pete La Roca(ds)
Impact Sound Studios, NYC, May 25, 1967
1973年作品。本作は日本では劇場未公開であり、長らくここ日本ではどんな形での紹介もされて来なかった。そのため、欧州の若き鬼才ポール・バーホーベンの名前は、日本では全く知られることがなく時が過ぎ、80年代中盤以降、ビデオ時代になって漸く、数々の作品がソフト化され、その全容がつかめるようになったという次第である。 本作は1974年の米国アカデミー賞の外国語映画賞にまでノミネートされた、作られた当時は衝撃的に受け止められた作品である。 本作は監督バーホーベン、撮影監督ヤン・デ・ボン(その後ハリウッドに渡り『ダイ・ハード』等、そして監督に職業替えし『スピード』『ツイスター』等の快作を作る)というその後も名コンビを組む2つの若き才能ががっぷり四つに組んだ最初の作品で、その才能を画面の隅々からほとばしらせている必見の恋愛映画である。 男女間の愛憎を描くためにその愛欲の赤裸々な描写までを過激かつスキャンダラスに描写する映像作家としてはそれまで、ケン・ラッセルやベルナルド・ベルトリッチ、ロマン・ポランスキーらが知られていたが、バーホーベンはそれに肩を並べる存在であったのに日本では長らく看過されてきた、というわけだ。 しかしただ、描写が過激だけなだけなら低俗な露悪趣味映画になってしまうところだが、そこに優れた考察を行っている脚本に基づいたしっかりした内容のドラマが伴っているから、本作は時代を超えた作品として今日、鑑賞に堪えうるのだ。 個人的にもバーホーベンのとりこになった最初の作品。それに比べれば、ハリウッドに渡ってからの作品は余りに軽い(描写だけは残酷だが)。 バーホーベンの映画は今日まで確認できるものでもわすか14本(多少ずれているかも知れない)。こんなに少ない作品数で大巨匠の貫禄を漂わせている監督はほかにあまり居ない。オランダ時代の作品はほとんどが日本では劇場未公開だが、どれも一度はソフト化されており、必見作。小子は(未公開作で入手しそこねた)1作を除いて、バーホーベン映画は全部、見ている(しかも繰り返し)、というぐらい好きな監督の一人。 小子は本DVDと、米アンカーベイから出ていた輸入盤のDVDも米amazonから購入済み。いずれもビスタのスクイーズ収録で、米盤の方が画質がいいが、この日本盤も満足できるレベル。 『ロボコップ』ブルーレイ盤のレビュー書いたら、さっそく不参考評だけ連投するボンクラ連中がいたので、本作のレビューを書きたくなった(だからamazonさんよかったね)。ボンクラは先にこういう映画を見るほうが良い(そうするとボンクラ度が薄まる)。
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