天才的なメロディメーカーの代表作。昨今コンピレーションやカバーでこの曲へスポットが当るたび、このコンポジションの流れるような自然さに至上の心地よさを覚えます。そして同時に槇原氏の曲の特徴である旋律と強く結びついた言葉のストーリー性も、やはり今作でも同様に最後まで楽曲にひきこまれる点です。
「どんなときも」もそうでしたが、彼の曲には彼の伝えたいメッセージの強い衝動が濃密につまっており、一気に言葉と旋律とを同時に生み出すような、両者の切っても切り離せないシンクロ性の強さを感じさせる作品が多いです。分業体制から仕上がるシステマチックな曲ではなかなか起こらない、この相乗しあう歌詞と旋律(そしてそれを吹かす彼の透明で温かい声)が槇原楽曲の優れた点のように私は感じてきました。
この「もう恋なんてしない」もAメロからBメロへのバトン、そしてサビの階段を登り主題を鳴らす構成は、水を流すように美しく、旋律を聞いてるだけで心模様が伝わってきます。そしてその音型へリンクする言葉たちの風景の色。淋しくセンチメンタルな描写のAメロから、心の動きが綴られ始めるBメロへ、心のざわめきはコードに表れ、そのまま気持ちが加速しサビメロの主題へ。歌声もいつしかメゾフォルテからフォルテです。
音と言葉が共通の目的のために本当に一緒になって動く楽曲、そんな印象が槇原氏の楽曲にはあります。心で叫びたい景色が鮮やかに音楽に変わり、その温度を伝えてくる、だから彼は凄く心に響くメロディメーカーなんじゃないだろうかと思わせる代表曲でした。
kiss~dramatic love story~に収録されている曲が若干消えて、全く違う人の曲が入っています。 kiss~dramatic love story~Music Boxというのであれば、収録曲は変えずに発売するべきでしょう。たとえオルゴールであっても。曲を変えてしまっては、別の曲と変えられたアーティストには失礼です。
最もレコード売上が凄まじかった時代こそこの頃。90年代初頭。その理由は、色々ある。レコードからCDへの移行によって、音盤に接触できる手軽さなど。。現在CDが全く売れていないのは、不況だの、ネットダウンロードだの色々言われているけど、この頃との圧倒的な違いは、メロディーの美しさだろう。自分が最近の曲を拒絶しているのは、勿論年齢のせいもあるが、この頃(含む80年代)の旋律やアレンジの美しさを一度味わったせいでもある。
もちろんこのCD全ての曲が大好きとは言えないし、タイアップ等勢いだけで売れた曲もあったが、楽曲の良さで大衆の圧倒的な支持を掴んだという意味で、現在の音楽とは明らかな差を当時感じた。今聴いてもこの頃の音楽は、心地良さを常に提供してくれる。
選曲自体は、ありきたりかもしれないし、自分だったら「上京物語」「you&I」「北風」「LOVE(ボラン)」「もう君を離さない」等を選択したのに、、とか或いは、「また逢う日までbyKIXS」「天使の休息」「24時間の神話」とか隠れたバラード沢山あるのに。。、一発屋はそれ自体が名曲という位置付けなのでJWALK、藤谷、山根辺りは異論が無いが。。否、一発屋でさえも「ドライフラワー」「恋という名の翼」等隠れた名曲は多い。。ネタは挙げれば限がないけれど。
ともかくこれほど有名曲だと、当時共有していた人との想い出に返り咲けるという利点は確かにあるだろう。またそれを狙うがために、敢えて超有名曲を選択したのかもしれない。
タイトルにもある通り、自分を含めた30代の人には、圧倒的な懐かしさを提供してくれるだろう。歳を取るのが段段嫌になってきているこの頃だけど、一つだけ良い事は、ティーンの頃に聴いた曲に懐かしさが加わり当時以上の魅力が備わってきた事。これが所謂「懐メロ」というのか。と実感する。勿論当時を知らない20代10代の人にも推薦できる。
しかし、☆をひとつ落したのは、最近この手のコンピで少ないコストで大金を掴もうとするレコード会社の魂胆がまる見えというのと(15年近く経過した既成曲集なのだから1500−2200円が過去の例から妥当だし、或いは2枚組位にすべき)、そして現在でもこのような珠玉曲を作る歌手が出てきて欲しいという願いも込めて。。
ちょっと最近見つけた1枚です。
avexさんとの共同開発と言うことで所属のartistの比重が多いのは仕方が無い事ですが、それでもこの時代を駆け抜けて行った私には懐かしくも思い出のある楽曲ばかりです。
聞く方によって好みによって良し悪しの評価が分かれそうな楽曲集ですが、それでも聞いてみる価値がある感じです。
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