時代小説が好きで今までも鬼平や眠狂四朗にはまりましたが、木枯し紋次郎は特に良いです。時代小説のジャンルを超えた おもしろさがあります。名作なので全十五巻再販してほしいです。
実在人物を配しながら家光暗殺計画を阻止するための集団(一味)の活躍が面白く描かれている。意外な人物も現れ守り立てている。歴史小説153作品目の感想。2008/08/28
とにかくド助平なのである。笹沢佐保の小説に出てくる女たちは。 純愛ラブストーリーなんてものではない、愛欲セックスストーリーそのものだ。
主人公・香織は会社の同僚・水沼と愛人関係にある。水沼との不倫旅行中に殺人事件が起き、水沼は容疑者として疑われることに。主人公は愛する男の無実を証明するために奔走するが、しだいに水沼に対する疑念が心の中に生れてくる・・・。
とはいえストーリーとともに、主人公の愛の対象は、水沼自身というよりは男とのセックスそのものに変わっていく。 水沼のペニスを「これを水沼のものだという意識はない」と感じて、ペニスを「X」と名付けて、「Xと別れるのかと思うと辛かった」となるのだからたまらない(笑 笹沢佐保の面白さは、これほどのド助平女でも嫌味に感じさせない筆力にある。主人公の性欲の強さに苦笑いしながらも、どこかしら可愛く感じてしまう。これは他の笹沢作品でも同じだ。
面白いことは間違いないが、三十年前の小説だ。古さは否めない。さらに二時間ドラマっぽい終わり方もいささか・・・ それで★を一つ減らした。
小説の前半で二つの殺人事件とその容疑者の死が描かれ、後半を事件に疑問を抱いた休職中の刑事が独自に捜査したものを上司に報告した「特別上申書」という形で構成されていて、前半が問題編、後半が解決編といった具合です。
通常、こうした場合に刑事がなぜ事件に疑問をいだいたのか?というのはある種のパターンがあって、例えば、捜査中は無関係だと思っていた人物が被害者と関連があったことが後から分かる、などというのがよくあります。この作品では再捜査を決意させる展開 が実に上手い。そして恐ろしい。ある意味事件そのものより恐ろしいかもしれません。この作品にはこうしたパターンのひねりが随所に見られ、小説として深みを与えています。これが処女作というのだから、「笹沢左保」はただ者ではありません。
この作品、いわゆるトリックが満載。アリバイ、密室、暗号など、処女作だけあって作者に意気込みが尋常ではありません。しかし、この作品の最大のみそはそこにあるのでなく、別にあるのです。ややもするとトリック満載の本格物は「はたして、犯人はそんな面倒な方法で人を殺すだろうか?もっと簡単な方法があるのでは」という突っ込みが入りがちです(第二作の「霧に溶ける」はこうした問題が顕著です)。もちろん、この作品もそうした部分がない訳ではないものの、最後に明かされるミソの部分が上手く機能して「こうした犯人ならこうしたこともするかもしれない」と思わせて、リアルティを確保している部分がすばらしいです。
私的オールタイムベストには必ず入れる一品です。復刊されたのは、喜ばしい。
もっとも、今持っているのは旧光文社版。以前は角川版も持っていたのですが笹沢氏が亡くなられた時に布教(笑)のために知人にあげてしまいました。という訳であくまでレビューは旧光文社版についてになります。
で、早速、新版を本屋に注文しました。来るのが楽しみ・・・
記念すべき木枯らし紋次郎第一話「赦免花は散った」だが残念ながら TVドラマ未発表作で映画化はされているが菅原文太氏が主役で 中村敦夫氏のイメージが強い私としては一寸残念な気がする。 さてストーリーだが、幼馴染の兄貴分に騙され絶海の孤島三宅島に 流されるのだが、流人仲間と共謀して脱出し自分を騙した兄貴分を 探し出し復讐するという内容だ。 南海の楽園とはほど遠く、近年起こった島民全員島外避難のニュースを 見てもそうだが火山の爆発による溶岩の流出と毒ガス。 受刑者への銃殺刑が青く晴れ渡った空の下、9月なのに真夏の様な暑さ が非情とも思えるようなムードの中でボロボロの衣装を着た流人達 の見守る中おこなわれ、読み手のほうも汗がにじんでくるようだった。 三宅島の噴火が起き、島民たちの大混乱に乗じて紋次郎と流人グループ が脱出に成功した場面は映画「パピヨン」とアレクサンドル・デュマの 「モンテクリスト伯」を連想させた。 お花・源太の島抜け船上のまぬけな行動には笑ってしまった、流人同士の 結束の無さが一層紋次郎の孤高さを強調する様に思えた・・・。
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