漫画を読んでこんなに笑ったのはいつ以来か、というほど笑った。
「きららの仕事」のスピンオフで、きららのライバルであった慶太が主人公のシリーズ。
料理漫画は味を漫画で表現するための大仰なリアクションやセリフがお約束だが、これの「お約束」はこの主人公慶太の「キャラクター」だ。
お前は何故料理人なんだ!とツッコミたくなる外見もさることながら…いやこの先はぜひ読んでその目で確かめてもらいたい。
料理漫画としてのテイストはもちろん健在。ストーリーもテーマもわかりやすい。
だが慶太のキャラクターが、この作品を普通の料理漫画では終わらせていないのだ。
大真面目にやってくれるからこそ面白い。次巻が待ち遠しい。
寿司があんまり好きではなかった自分がちょっと寿司好きになったきっかけのマンガです。「きららの仕事」本編がいったん終わって、今では「ワールドバトル篇」という、寿司の世界大会篇が始まっていて、これはその第6巻です。
この6巻に限らず、このマンガでは寿司職人たちがネタ、シャリ、技法、独創性などを競って戦う完全バトルを繰り広げるといういたって集英社のりな展開を繰り広げるのですが、これが実に面白いのです。筋肉を極限まで鍛えた、どう見てもヤクザ風なライバルがいるかと思えば、本物のごろつきな転載職人もいる、古風な技の継承者も、海外で活躍中の新しいタイプの寿司職人もいる。もちろん、いまどきの漫画なのでイケメンだったり、パティシィエ出身の職人もいる。
そういうメンバーが集まっての戦いなので、荒唐無稽な部分も勿論多いんだけれど、娯楽作品としては十分水準を越えています。
今回、主人公のきららは弟弟子と対決。
主人公の海棠きららは、幼い頃に母を亡くし父もいなかったため、老舗の寿司職人であった祖父に育てられた若き寿司職人です。彼女は、祖父が病で倒れた為に、一人で店をきりもりしようとしますが、経験不足からそれもままならず、祖父の紹介で地方の名店へ寿司修行に出ることになります。 その修業先につくと、そちらの店も閑古鳥が鳴いており、よくよく事情をきけば近くの回転寿司チェーン店の攻勢にさらされて潰れる寸前だとわかります。その寿司チェーン店のオーナーこそがのちのちきららのライバルとなる坂巻慶太という寿司職人です。絶対的な腕をもつこの職人と勝負したきららは、奇跡的な勝利を得たことで、かえって鮨の道の奥深さを知り本格的な料理人への道を進み始めます。またまさかの敗北を喫した坂巻も、ふたたび徹底的な修行へと向い、この二人のライバルのぶつかり合いが、やがて鮨の世界全体をまきこむ寿司バトルへと繋がっていきます。 こうやってストーリーだけを書くと少年物の典型パターンのようで、考えてみれば確かに寿司を通じての戦いの連続です。しかし、この「きららの仕事」という作品は絵柄の助けや主人公のキャラクターもあり、けっこうドロドロした話やアクの強いキャラクターが出てくる割にはさわやかな作品に仕上がっていて、一気に読ませます。物語後半に入ってからは、きららにとっては結構つらい戦いが続きますが、それでもそのどこか清々しいようなさっぱり感はなくならないので、けっこう意識的にそうしているのでしょう。 また、うんちくも美「味しんぼ」なみに出てくるものの、押し付けがましさがなく、そのあたりもさっぱりとして美味しさをいかに伝えるかというところにポイントを置いているようで、それが僕みたいな寿司に興味がなかった人間にも鮨を食べてみたいなと思わせる要素となっているのではと思われます。 さて。 ここで作品中に出てくるタイトル説明なんですが、「江戸前」というのは別に江戸・関東方面で取れる魚を使って云々という意味ではないのですね。 料理に一手間かけて、その魚を美味しく食べさせる工夫をした鮨という意味だったことを僕はこの作品ではじめて知りました。関西人ですから、素直にそのままネタを握ったのが鮨だという認識をしていましたから、あれこれ手間ひまかけて工夫するそのままの食材ではない江戸前鮨(もちろん、こういうのだけではなくてもっとオーソドックスの形も多いのでしょうが)というのに新鮮な驚きがありました。あぁ、書いているだけでまたお寿司が食べたくなってきました。
九州最大の回転寿司チェーン経営者である坂巻との対決がメインの第3巻です。
料理漫画といえば、主人公が試行錯誤・右往左往しつつ料理の極みを求める展開がお約束です。
お約束といえばマイナスなイメージがありますが、そんなことはまったくありません。
読者(というか私ですね)は、努力する主人公に自分を重ねて共感度を高めるのかなと思います。
さて、修行先の唐津で思いもかけぬトラブルに見舞われるきらら。
確かに鮨修行外のトラブルではありますが、それすらも成長の糧にする彼女の姿はとても良いです。
この漫画を読んでいて思うのですが、軸足はグルメより「江戸前」という職人芸にあるのだなということです。
鮨のウンチクはもちろん述べられるのですが、それよりも祖父から受け継いだ「江戸前」の技法にこだわる姿がメインなのだろうと思います。
いろいろと料理漫画を読んできた私ですが、わりとこの切り口が気に入っている次第です。
成長したきららのつけ場に立つ笑顔がたいへんいいです。自分もカウンターに座ってみたい。また、亀岡の変貌も驚きです。
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