これは聴衆やマスコミの批判に立ち向かい、傷だらけになりながらも、必死に闘い続ける偉大なロックアーチストのの記録だ。
デビューに至るエピソードやウディ・ガスリーに会いに行った話なども、もちろん面白いけど、最も注意を惹き付けられたのは、ディランがロックバンドを率いてからの、受難の日々だ。聴衆のブーイング、他のミュージシャンたちの困惑。「雨の日の女」で歌われる「奴らは石で打つだろう」というのは、この批判のことなのか。これはドラッグの歌という説もあったので、私はあまり気にしていなかったが、当時のこの大騒ぎのこともディランの頭の中にあって、歌っていたのだろうか?
そしてラストの『ユダ!」の野次に応えるディラン。CDでは聴いていたが、映像で見ると、ディランはそんな野次は全然気にしてないようにも見える。だが私には、既に傷だらけになり、それでも立ち上がろうとするボクサーのようなディランが見える。そして「でかい音でやろうぜ」と言い、ライクアローリングストーンが始まる。この時、聴衆はどんな思いでこの歌を聴いたのだろう?そしてディランはどんな思いで歌ったのだろう?「どんな気がする?」という歌詞をディランは誰に向けているのだろう?聴衆か?それとも自分自身なのか。帰る家もないのは、ディランなのか、聴衆なのか?
この後、ディランはバイクで事故を起こし、活動を休止する。もしこの事故でディランが死んでしまっていたら、人はこの騒ぎで、疲れ果てたディランが自殺したと思ったのではないだろうか?
アイドルでもなく、金持ちでもない、理解もされず、聴衆の無遠慮な攻撃に晒された痛々しいディランの姿は、キリストの最後の日々とオーバーラップした。
ブラスロックや、ジョンレノンばりの赤裸々な歌心、そしてフリーソウルとも呼ばれたジョリーのような甘い名曲。様々な顔を持つソングライターのアル・クーパー、その名曲、名演をフリーソウルとしての着眼点から、コンピレーションしたこの編集盤。レノンマッカートニーの曲を ブラスロック化した曲がファンファーレの如く聴く人を導いて、名曲の数々に自然に誘ってくれているそんな心憎い選曲です。 車で聴けるアル。そんな感じか。
遂に出た歴史的名盤『Super Session』のリマスター盤。とうの昔にCD化はされていたが、リマスター云々以前のものだったし、97年に続編的なライヴ・アルバム『The Live Adventure Of Al Kooper & Mike Bloomfield』(邦題『フィルモアの奇蹟』)のリマスター盤が出て以来ずっと待ち焦がれていたが、その甲斐があった高音質による再発だ。『Super Session』は、当時コロンビア・レコードのスタッフ兼プロデューサーだったアル・クーパーが68年に企画したジャム・セッション・アルバムで、ボブ・ディランの『Highway 61 Revisted』で共演したマイク・ブルームフィールドを誘って録音(アル・クーパーはヴォーカル、オルガンの他にアレンジ、プロデュースもすべて担当)。録音途中でマイク・ブルームフィールドが体調を崩したため、残りは、バッファロー・スプリングフィールドを解散したばかりのスティーヴン・スティルスが急遽代役を務めた。そのため、アナログA面がマイク・ブルームフィールド、B面がスティーヴン・スティルスとのセッションを収めた形となっている。時代がちょうど3分間のシングルからアルバム単位へと重要性が変化した頃の象徴的な作品で、様々な制約から自由になった演奏を収録するという画期的なアルバムだった。このアルバムでのマイク・ブルームフィールドの鬼神に迫るギター・プレイは、彼を一躍ギター!・ヒーローへと押し上げた(今から思うと嘘みたいな話だが、当時ブルームフィールドはクラプトンと並ぶスターだった)。特に有名な「Albert's Shuffle」は名演中の名演。他の曲でもブレイクビーツの定番でもある「Stop」のファンキーな味わい、ドノバンのカバー曲「Seasons Of The Witch」(こちらはスティーヴン・スティルスがギター)の秀逸なアレンジなど、どれもが聴きどころ満載。ボーナス・トラックでは「Albert's Shuffle」のホーン無しのリミックスは感激モン。こちらも名演揃いの『The Live Adventure Of ~』と一緒にどうぞ。
時に自分とまったく同じ感覚の持ち主ではないかと思える発言をする人間に出くわす。私にとってはジェフ・エメリックとこの本の著者がそういった人たちだ。共通するのはちょっとひねったユーモアのセンスであり、なんだかんだ苦労がありつつもシリアスになり過ぎずにさっと肩の力抜いて生きていく姿勢だ。長いことこの本は絶版状態であったのだが、ついに2007年までの書き足しをつけて再販となった。とにかく随所にビシビシ炸裂するギャグは笑えるし、ディランをはじめとする伝説的アーティストとの交友の広さに驚く。ジョージのセッションに参加中、ジョンの訃報に接したあたりの記述はビートルファン必読。非常に英語的な言葉使いで綴られているので邦訳は出ないと思うしされても雰囲気が伝わらないだろう。これを読めるようになるために英語力を磨こうという心意気を持とう。
Free Soulシリーズの中でとくにお気に入りの一枚。目覚めの時に聴いたり、気分転換のときに聴くのが大好きです。某FMラジオ番組で定期的に流れているので知った「Jamaica Song」(17曲目)がとってもなごむ。
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