1970年12月3日公開作品。シリーズ10作目は前作「花と龍」の続編というか類似編となっていまして妻役が星由里子から中村玉緒に代わっております。彼女もいいですね。藤純子がドロドロの彫り物師役をやっていまして健さん(玉井金五郎)にベタ惚れ状態であります。前作同様二部構成になっていて2時間弱の大作となっております。脚本が素晴らしいので物語性が強く本来の侠客伝とは一味違う仕上がりが二作続いたなという印象です。高倉健の演技も深みが増してるように思えますし年齢も39歳となっていて若さではなくいぶし銀のような渋さが出てきたようにも思えます。
原作者は火野葦平。
舞台は
九州、福岡、若松。そこの荷揚げ人足(ゴンゾウ)たちの頭になった男とその妻の豪快な話し。
時代はそもそも明治。歯時計思い切り逆回転させないといけない。
渡哲也と香山が主人公を演じる。古ぼけた倍賞知恵子の妹がいかさま博打の壺ふり。
おお!いい作品。★は4つ。
いい時代だった。
火野葦平は、アジア・太平洋戦争の始まる中でこの本「土と兵隊 麦と兵隊」を書き、ベストセラーとなった。当時、この本は120万冊
とも140万冊とも言われるぐらい売れたという。戦時中にしては異常な出来事である。
この「兵隊作家」といわれる火野は、戦後まで戦争を賛美する「翼賛作家」とされ、そして火野は戦後「戦犯作家」ともされた。
なるほど、この書かれたものを読むと、時代の風潮に呑まれて戦争を賛美する内容も多々ある。だが、火野がここで描いているのは、
兵隊の目から、庶民の目から見た戦争の現実だ。1937年から始まったその中国戦線の戦争の実態は、火野が淡々と描くがごとき、
勇ましくもなければ、華々しくもない。延々と続く、広い中国大陸での行軍である。もちろん、時には戦闘もある。しかし、火野が
体験するのは、地平線まで続く麦畑の中の行軍と、何処までも続く泥沼の中であえぐ兵隊の姿だ。
兵隊作家としての火野は、このように、庶民の目から、戦争と中国の大地ー民衆を描ききった、と言えよう。こうして言えるのは、
この本が、
タイトルにあるように、「土と兵隊・麦と兵隊」の戦争の壮大な記録である。
この本が改めて復刊されたことは、今の社会状況の中では、必然と言うべきか? 政治家は、この本の中心テーマというべき、中国との
戦争を煽り、なかには徴兵制や軍事国家まで説く人々まで現れている。こういう人々こそ、ここで描かれる戦争の実態を知るべきである。