富岡多恵子女史の作品は、とにかくパンチの効いた女性が多い。
加えて、諦観のような、達観のような雰囲気さえある。
セレブぶった女が考える『女はこうでなくっちゃ(ハート)』とか、
古典的な男性が求める『女性らしさ』などをお探しの方は
この本を手に取らない方がよいだろう。
生々しい〈女〉が描かれた「波うつ土地」「芻狗」「環の世界」
中でも「芻狗」は最高作品なのではないだろうか?
ちなみに芻狗とは、儀式のときに祭壇に捧げられる藁で作った
犬のこと。
作者・富岡多恵子は元詩人だったが、その後小説家になった。
この本に収められている作品たちは、コトバによる表現を失ってしまった
その後の人間の様子が描かれているように思う。
旅人を襲った山賊は女を手に入れるが、その美しさに魅せられ女を満足させるため無理して都会に住んだり、人を殺して切り落とした首をあたえたりすようになる。最初は力と暴力で自分の物にするつもりだったのに、女のペースにはめられ抜け出せなくなり、哀れな最後を迎える事となる。これは時代劇とは全く違う、独特な感性の世界で岩下志麻演じる女が本当に人間なのか、いつの時代でドコの話なのか全然分からないし(知っても意味無いし元々設定もないだろう)あまりに現実味が無く誰かの妄想を覗いているような不思議な気分です。”桜の下には死体が埋まってる”とか”人を狂わせる”とかダークなイメージもある桜を使って、狂気の世界を表現するラストあたりになるともうすっかり訳分かんなくなってて、でもそれでいい、何かハッキリした答えなんかなくてもいいや、って気になります。