宮本武蔵をブレイクさせる前の中村錦之助は、
織田信長を当たり役にしていたそうである。「
徳川家康」などの大河歴史小説で知られる山岡荘八の原作を下敷きにした本作も、実は本人によるリメイクなのだ(オリジナル版は1955年に製作された「
紅顔の若武者
織田信長」)。
NHKの大河ドラマのように、信長の一生分を映像化するには、95分という尺はやはり短すぎる。本作では、父・織田信秀の葬式から、「海道一の弓取り」今川義元を破るまでの数年間に限定して、よく笑い、よく泣く、若き日の信長の快男児ぶりが痛快に描かれている。 お馴染みのエピソードの中には、省略されたり、順番を入れ替えられたりしているものもある。ディープな信長マニアや時代考証ファンは気に入らないかもしれないが、その分物語がシンプルになり、一つ一つの場面に十分な時間をかけることによって、「映画の神様の子」錦之助の演技力が目一杯引き出されている。
特に、月形龍之介演じる信長の守役・平手政秀とのやり取りが素晴らしい。特に、「爺には苦労をかけ通した。だから今回は爺に手柄を立てさせてやりたいのよ」と言って、自らの名代として斎藤道三の下に政秀を遣わそうとする信長。翌朝、平手政秀は切腹して果てた。駆け付けた信長に宛てた遺書には、こういう事が書いてあった。原文は「〜候」調の難しい調子だったので現代語訳すると、「あなたはとても聡明で天下を取れる器を持ったお方だ。あなたのお役に立てればこの上ない幸せだが、この年老いた身では足手まといになるばかり。もう私がいなくても、お一人で立派にやっていけるのだから、これからは身支度や言動を改め、この老人が託す夢、天下統一を成し遂げてくだされ」。信長は泣いた。泣いて泣いて悲嘆にくれた(私も泣いた)。この辺り、月形龍之介と中村錦之助の魂の演技が炸裂しまくりである。やはり昔の俳優はスゴい。
とりあえず発売日から30時間ほどプレイした感想を。
チュートリアルもそこそこに、一番最初にプレイしたのは桶狭間の戦いで難易度は中級。大名は南部家。
まず思ったのが支城の多さ。初期の段階でどの大名勢力にも本城が1つに対して必ず1つ以上の支城、多いところでは3〜4つほど支城がある勢力もある。
2つ目は内政。内政はかなり簡略化され、開発、政策、取引の3つになった。
開発は従来通り、城下町に施設を建てるものである。
力を入れられるのは主に農業、商業、兵舎の3つ。それぞれ兵糧、金銭、兵力に繋がっている。
そしてそれぞれが数値化されており、支城では大体200〜300、本城では500程度というのが上限値である。
政策は、名前の通りその大名勢力がなにに力を入れるか、というのを決めるものである。
商人と兵糧、馬、鉄砲などのやり取りをするのが取引で、前作の天道とは違い、1ヶ月で必ず訪れるようになっている。
開発に関して言うと、最初は小規模の施設しか作れないが、開発を重ねていくことによって、より効率の良い施設に建て替えられるというシステムになっていた。
そして今作では、"人口"という概念があり、町に住んでいる人の人数の多さも一つポイントになっているらしい。
人口がある程度増えると、城下町を拡張することが出来、新たに施設が建てられる場所を増やせる、というものになっていた。
拡張する際に、上記の農業、商業、兵舎のいずれかの数値の上限を300〜500ほど増やすことが出来る。(拡張できるのは本城だけ)
なるほどこんな感じになっているのか、とまったりプレイしていたが、どうにも兵糧、金銭、兵力。
全てなかなか増えていかない。城にいる兵力が最大でも本城の4000程度。募兵というシステムは無くなっていたのである。その代わり城に入れる最大値の兵数までは、戦で全滅しようが自動で少しずつ回復してくれていた。
相手の勢力もそんな兵数はいないので、いよいよ出陣。とりあえず本城と支城から少しずつ率いて挑んでみた。
自分の部隊と相手の部隊がぶつかった時に、今作から導入された"合戦モード"というのを、自分の武将アイコンをクリックしてやってみた。
…これはなかなか面白い。陣形が3つ、後退、静止、前進の3つのコマンド。
鉄砲打ち抜き、騎馬突進の2つのコマンド。そしてそれぞれの武将が持つ戦法。
使うのはたったこれだけである。
こちらが陣形を変え、前進すると、兵数で下回る相手の部隊が後退し、戦法を唱え、鉄砲打ち抜きをしてくる。なかなかにいやらしい。
こちらも陣形を変えて戦法を唱え、騎馬突進。後退し、打ち抜き。などをしていると相手の兵力がみるみる減っていく。
戦い方によってはこちらが不利であっても互角の展開に持ち込めるのではないか、と思った。
相手部隊が壊滅し、合戦モード終了。
こちらも兵数は減ったが、相手の城に兵はいない。勝った。と思ったが、いつまでも落城しない。
なんだこれはと思っていると、どうやら相手の城の耐久値以上の兵を引き連れていないと、どうやら城は落とせないらしい。(その時相手の城の耐久は3000、こちらの兵数は2400程度)
仕方なく撤退し、内政をこなしつつ再度攻城。今度はなんとか落とすことが出来た。
今回の創造では、天道で新しく出てきた街道システムが少しバージョンアップしていた。
天道では道を敷設して終了だったのが、今作ではもともと道は繋がっているが、山間部なら1→3まで。
平野部なら1→5までに街道を整備することができる。
前作で出来た前線基地へ兵を全て集めて突撃もしくは守りを固める、というのが今作は出来なくなっていた。
なので、城を攻略もしくは守る場合にこちらの戦力が足りなくなりそうな時、いかに迅速に他の城から兵を出陣させられるかというのがポイントである。
10万の単位でのバカげた野戦や攻城戦はなくなり、2000や3000、多くても2万や3万人程度での戦いになる。
2000人程度の兵でも街道を駆使し、挟撃出来れば局面も相当変化する。
逆に1つの街道しか使わずに攻め、数でゴリ押ししようと複数の部隊を率いても、その1つの街道で部隊が詰まってしまい、最初に到着した部隊だけが攻撃していて、後ろの部隊は兵糧を食っているだけ、という状態になってしまう。
非常に戦略を重視しているな、とやっていて思った。
相当ゆっくりプレイしていたのもあるが、最初の南部家のプレイで7年経ってようやく本城が4つになり、その時に勢力図を見て唖然とした。
近畿では織田が、中部には武田、北陸から越後にかけて上杉、関東に北条、中国に毛利、といった具合にほぼ勢力が確立されつつあった。もはや弱小勢力はほとんど残っていなかった。
この時点で南部家での天下統一は諦めた。
今度は島津家でプレイ。
内政よりもスピーディに進軍し、城を落とすことを考えプレイした。
10数年ほどで
九州、
四国を統一したとき、
九州から山口にかけて勝手に武将が進軍していた。
またしてもなんだこれは、と思ったら、どうやら今作ではある程度勢力が大きくなり、統括できる範囲を超えたら軍団が自動で作らるらしい、そしてそれは解除することは出来ないみたいなのである。
なお、勝手に作られるとはいえ、大名の直轄地?を前線に設定し、軍団を後方に設定すれば軍団が進軍することは無く、自分でそのまま城を攻め落としていける。
なので前線でゴリゴリ進軍し、勝手に城を落としていっていたのだ。軍団のAIは相当レベルが高いらしく、本当にどんどん城を落としていく。
凄いな、と思いつつ少し観ていたが、楽しみが奪われては難なので、軍団は後方で落ち着いてもらった。
ある程度進んだところで織田の勢力とぶつかったのだが、この時に使った設営のコマンドが非常によかった。
設営というコマンドを使うことで、要所での合戦を有利にすることが出来る、というものだった。
最初の段階ですでに1あったが、コマンドを使って1から3にまであげた。
守っていた城は、織田側からは1方向からしか進軍出来ない城だったので、使ってみた次第である。
向こうの13000人の部隊に対し、こちらは4000人+挟撃3500人。ほぼ半分である。が、撃退に成功。
これが設営3の効果だったのか、挟撃のおかげだったのかはわからないが、相当な劣勢を跳ね返せた。
結局そのあとはあまり苦労もせず、AIの軍団もそこそこ使いつつ天下統一を達成。最終的に61年かかった。
ここまで長々と書いたが、革新、天道と続いた信長の野望の系譜からの作品とは思わないほうが良いかもしれない。
正直、腑に落ちない点は多々ある。改善点も多く見られる。
素人目にそう思うのだから、もう少し完成度を高めて出したほうが良かったのではないかとメーカー側も考えたかもしれない。(30周年ということでなんとか間に合わせたかったのかも知れないが)
もちろん、こういう改善点が多く見られる状態で出すのは許せないという人もいるのはわかるし、信長の野望として駄作だ、と感じる人がいるのもわかる。プレイしていて、ここはダメだろうと思うところがあるのも事実。
だが、新しい信長の野望として、こと"戦略"に目を向けたとき、街道や設営、兵数の少なさや合戦モード、外交。
有力武将個人の戦法による力での打開ではなく、あらゆる"戦略"を用いて兵力で大きく上回る相手をはね退けられる。その達成感は非常に良かった。
そういった意味での戦略SLGとして、信長の野望は次の段階に進んでいるのかなと思う。