弁慶中村吉右衛門さんは男らしく優しく素晴らしい。勧進帳安宅の関の場面は後世にに残る迫真の演技、いつも観る度に感動しています。
18年前、毎水曜日の午後8時、吉様の弁慶にワクワク・ドキドキでした。 NHK来春の「義経」の弁慶役は吉様以外には考えられず残念だったのが、この度の総集編の発売に感涙の状態です.吉右衛門さまの若き頃に会えるのがうれしく存じます. 今も素敵な男の色気、セリフの上手い、スゴイお役者は他に追従をゆるしません。
戦災で親を失った主人公の小えん(若尾文子)は、幼い頃から水商売の道に入り、現在は売防法の隠れ蓑的営業をしている神楽坂芸者。前半のうちは法律と実態のイタチゴッコを描いたコメディーかと思って見ていたんですが、話がどんどん進んで、小えんは芸者からバーの女給、そして二号さんへと変身をとげて行きます。後半になって、どうも本作のテーマは小えんの心理的変化、あるいは成長なんだとわかります。普通の恋愛を知らずに男遍歴を重ねて来た彼女がひとりの男と一緒に暮らし始めるのですが…。
若尾文子の魅力と男女関係の難解さを教えてくれる本作ですが、キャッチフレーズ「女は二度生まれる、はじめは女として、二度目は人間として…」の通り、観客の想像にゆだねる余韻に満ちたラストシーンの後、彼女はひとりの人間として地に足を付けて生きていくのでしょう。
『姿三四郎』の突風の中の決闘シーンの凄いこと。それを映像化するのに黒澤明がどれほど、"あの風"を待っていたか想像するだけでも身震いする。 『七人の侍』は、アクション・スペクタクルとして世界に類を見ない大傑作。 その語り口のうまさに思わず唸ってしまう娯楽大作『赤ひげ』。 ソ連映画!!『デルス・ウザーラ』のスケール。 こんな骨太な作品群を創り出す映像作家が今後、世に出ることはないであろう。
誰でも知っているけど、読んだことないのが「姿三四郎」。大衆小説に限らず、忘れられた作家や作品をよみがえらせるのは至難のわざであるが、この著者は「姿三四郎」とその作者の富田常雄にかんして、見事にそれをなしとげた。
調べの進みぐあいを実況ふうに入れながら、「姿三四郎」という作品の面白さを多面的に読み解き、同時に作者である富田常雄という作家の姿を、生き生きとよみがえらせる筆致は、見事なものだ。
手間もヒマも元手も十分かかっているのに、調べて書くよろこびが素直に伝わってくる軽やかな文章もいい。のめりこみすぎず、適度につっこみを入れながら、しかし親愛に裏打ちされている感じも。
貴重な写真もかなり掲載されており、良心的な本作りだ。巻末の単行本リストや映画化作品一覧リストなども、著者以外に必要とする人がいるとは思えないけれども、貴重な仕事。
泉下の富田先生もきっと喜んでおられるでしょう。「よしだ君、一本!」
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