友川カズキを既存のジャンルに当てはめる間違った認識もあるようだが、
実際彼の音楽ジャンルは「友川カズキ」である。
歌詞集本体については他の方のレビューが秀逸ですので付録DVDについて。
ドキュメンタリー、ライブ映像、インタビューの2時間以上に及び、このDVDだけでも充分元が取れます。
前半は同行
スタッフによるドキュメンタリー
タッチのヨーロッパ公演。60を超えて世間に再浮上してきた友川の実力を見せつけます。音質はイマイチの部分もありますが、友川自身の歌質には全く遜色はありません。むしろ貴重な映像を収録してくれた制作サイドへの感謝の方が大きく勝ります。また、本人の「逆」こだわりが見える雑談的なカットなども多々あり。1時間が短く感じます。
中盤から2010年夏の宮城ライブ。自身出身の東北ということも絡めた軽妙な毒舌と、気合が圧縮された歌唱とのギャップ。自分と同じ人間の体から出るとは思えないある種の振動に背筋の震えが止まらない。目の前に戦慄がある。固定カメラで飾り気は全くないが、逆にライブ会場にいるかのような仕上がりに。
最期は約20分に及ぶインタビュー。彼の音楽に触発される諸氏にはぜひ御覧になることをお勧めします。痒い所に手が届く鋭い質問から漏れ出てくる真摯な言葉の数々。どのようにして彼の言葉が生まれてくるのか、どのように生きているのか。彼の歌詞の裏側にある基礎のようなものが見えてくる。それらは決して彼個人的なものに収まらず、若い世代へ向けた強烈なメッセージでもある。
ドミューンでのライブを見た友人はライブ終了後、「何をどうしていいかわからない、体に力が入らない」と初めての経験に困惑していたが、そういった楽しみがこのディスクにもある。
本書を隅までしゃぶりつくしたいのなら、「2時間ぶっ続け」で御覧になる事をおすすめいたします。