『ブルース・ブラザース』本編には133分の劇場公開版と148分エクステンデッド版の2つのバージョンがあります。
エクステンデッド版を収録したDVD「コレクターズ・エディション」に収められている
ジョン・ランディス監督の解説によると、
ピクウッド・シアターでの初めての試写で、「昔のロードショーと同じアトラクション的な映画として上映したかったから、
途中で休憩時間を入れて」上映を行ったところ、
映画館主たちが「この映画を観る白人はいないだろう」とユニバーサルに伝え、
そのために上映時間の大幅なカットを余儀なくされたそうです。
その後完全版をソフト化しようとしたものの、削除シーンのフィルムは1985年にユニバーサルにより廃棄されてしまったとのこと。
しかしそれから数年後に、12分のカットシーンを含む試写用アンサー
プリントが発見され、
これを監督と編集者が修復、劇場公開版のネガとつなぎ合わせて再編集したものがエクステンデッド版です。
追加されたシーンについては他のレビュアーの方も解説されていますし、
変更点をまとめたサイトも存在しますのでここでは割愛します。
2001年に発売されたDVD「コレクターズ・エディション」(以下CE)(現在廉価盤として発売されている商品も同仕様)は
148分エクステンデッド版のみを収めていましたが、
2005年には劇場公開版本編と新特典を追加した2枚組「スペシャル・エディション」(以下SE)も発売されました。
アメリカやイギリスで発売されているブルーレイは劇場公開版とエクステンデッド版の両方の本編を収録していますが、
この日本盤ブルーレイに収められているのは残念ながら133分劇場公開版のみとなります。
(個人的な意見を言わせてもらえれば、今まで148分のDVDで本作を観てきましたが、
劇場公開版は間延びして感じられた部分や蛇足に思われたエピソードがなくなった分テンポが良いので、
監督の意向はともかくこれはこれで良いと思います。)
ディスクは片面2層。本編はMPEG-4 AVCコーデック、1080p HD画質。
フィルムの質のせいか画質が甘くなる部分はわずかにありますが、基本的にはクリアな高画質映像。DVDとは比べ物になりません。
音声は
英語・日本語ともにDTS 5.1chで収録。
…え、DTS-HDMAロスレス音声じゃないの?! と目を疑ってしまいますが、
はっきり言って音質はかなり良いです。
ロスレス音声を収録した他のブルーレイと比較しても引けを取らないと思います。
音楽が命の映画なので音が良いのは歓迎なのですが、非HDのDTSでこの出来なら
HDMA音声はどんな音を聴かせてくれるんだろう…と思わずにはいられないのも事実。
ちなみに音声仕様はUS・UK盤ともに同様です。
真に理解不能なのは、特典のメイキング映像が「DTS-HDMA 2.0ch」で収録されていること…一体どういうつもりなのか?
ところで、日本語字幕はDVD「コレクターズ・エディション」のものとは異なります(翻訳者クレジットはDVDと同じ金田文夫)。
おそらくは不評だった「スペシャル・エディション」に収録の劇場公開版用字幕の翻訳と同じもの。
おそるおそる観てみましたが、いままでのエクステンデッド版の字幕に慣れ親しんできたということを差し引いても、
古臭くユーモアに欠ける印象。
ニュアンスも違ったりして、違和感が拭えませんでした。
まだDVDを持っていないという方には、DVD版の方も観てみることをお奨めします。
ブルーレイ未収録のエクステンデッド版ですし。
特典映像は今まで発売されてきたDVDに収録されたものから主なコンテンツを抜粋したもの。すべてSD画質。
・メイキング・オブ・『ブルース・ブラザース』(56分・チャプター付)【CEに収録】
・「ブルース・ブラザース」誕生秘話(15分)【SEに収録】
・ジョンを偲んで(10分)【SEに収録】
DVDから削除された特典は以下の通り。
・オリジナル劇場予告編【CEに収録】【US/UK盤BDにも収録】
・テキスト特典(プロダクション・ノートとバイオグラフィ)【CEに収録】
・ダン・エイク
ロイドによるイントロダクション【SEに収録】
・ミュージカル・ハイライト【SEに収録】
・ブルース・ブラザース・バンド:コンサート・ツアー【SEに収録】
画質・音質は過去最高に良いのですが、
劇場版のみの本編、非ロスレスの音声、イマイチな翻訳の字幕、DVDから一部カットされた特典…
と、コレクターズソフトとしてはすべての点において中途半端な出来。
この値段なら「買い」なのは間違いないですが、今後のさらなるバージョンアップにも期待したいところ。