他のレビューアーの方がお書きになっているとおり、筆力の衰えは覆うべくもありません。 「夏の終わり」、「花芯」、「あなただけ」のような脂の乗りきった時期の名作・傑作を期待したら、確かに当て外れでしょう。
しかし、です。作者の年齢(90歳?)を考えると、驚異的だと感じました。 うーん、生涯現役とは、瀬戸内さんのことではないでしょうか。
あえて星五つをつけさせていただきました。 老境作家の筆力には、なんだかんだ言っても、読ませるもの(→衝迫するもの) がありました。 ただし、「夏の終わり」、「花芯」のような完成度、官能の高鳴り、性の深淵をのぞき見るような神秘感を期待しないで、 「爛」とは、こういう作品だ、と思ってお読みになることが、あくまでも大前提です。
何度でも何度でも聴きたくなる逸品。心が楽になりました。
孤独に押しつぶされそうになり、常に自分の人生を考えてしまう私にとって、この本は胸に染みる一冊です。落ちこんだ時、悩んでいる時、この本を読むと、すべての力がぬけ、ゆったりと落ち着くのです。 こんな私でも生きている意味・意義があるのだと教えてくれた気がします。
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