食文化と暮らしのエッセイストとして活躍する、平松洋子。子供の頃から本に慣れ親しんでいる彼女が、「一歩も動かないのにどこかへ行ける」「本は時空間を突破する魔法の絨毯」……そんな風に、読書の魅力と魔力を独自の視点で描いた名随筆。
口語多用の軽やかな文体と大胆な比喩、鋭い分析と弾けた妄想。それらが渾然一体となった旨みが滲み出ている。そこから伝わってくるのは、著者が本の放つ魅力によって読む場所を選べる真性「本の虫」であること。開高健の『戦場の博物誌』をハンバーガーショップで読むくだりは、その最たるものだ。
随所で綴られる、食にまつわるエピソードがまたいい。無類の食道楽・獅子文六を「がじがじ齧ってみる」妄想や、女優・沢村貞子が26年間もつけていた『わたしの献立日記』をめぐる話は、ページをめくるたびに読書欲と食欲がミックスダブルスで襲ってくる。
個人的に興味深かったのは、第二章「わたし、おののいたんです」での宇能鴻一郎の段。宇能独特の一人称独白体で紡がれた、あの(むかしお世話になった)艶かしい言葉に、著者の見立てで新たな官能が注入されている。その他、山下清、池辺良、室生犀星、虫明亜呂無、坪田譲治、山田風太郎、佐野洋子など全103冊の本の旅へ、新しい発見を道連れに、味わい深〜くエスコートしてくれる一冊だ。
この本を読む人も、このレビューを読む人も、すでに、もう充分に生きている人だから、生きていることそのものを感謝したり、希有なことなのだとは、頭ではいろいろとわかっているつもりではあっても、そうは実感しない。しかし、本当にそうなのだと、この本は改めて教えてくれる。生き様って、中年以降の人にしかあてはまらないような気さえしていたけど、そうじゃない。生まれようとしている子の生き様こそ、まず、すごいのだ。
「子どもって、生まれたって気がする? それとも生んだって気がする?」とはじめて出産した友人に聞いたことがあった。彼女は、両方といった。そういうことだったのだなと素直に今なら納得できる。
かんなぎOPmotto派手にねがヒットした戸松遥さんのデビューシングルです。
表題曲の作編曲の田中
隼人さんは本当にいい曲をつくります。