CD4枚セットのヴァイオリンの名曲集です。もとからヴァイオリンの曲と、ピアノやその他の曲をヴァイオリンで弾いている曲からなっています。それぞれ楽しめるのが、個人的には、ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」がピアノでなくヴァイオリンだとこんな風に聴こえるのかと驚くとともに、お気に入りの1曲になりました。曲の多さや演奏者が複数いることなど(もちろん1曲に1人ですが)から、飽きがきにくいように思います。初めてヴァイオリンの曲を購入するという方や、ヴァイオリンの曲をバラエティー豊かに聞きたいという方にお薦めです。
川畠成道さんの優しい性格がそのまま音楽から伝わってくるような演奏でした。 冒頭の「ウィーン奇想曲」は他のアーティストと比較しても抒情的で優雅な香りが漂っています。20世紀初頭の華やかなウィーンの雰囲気がふんだんに感じられ、それでいて知的な演奏は彼の持ち味なのでしょう。それが絶妙の味わいとなって伝わってくるところがクライスラーの趣なのかもしれません。このアルバムでは、誰もが親しみを感じるクライスラーの曲が18曲収めてありました。
「美しきロスマリン」でのスラーやポルタメントの箇所の処理が効果的で、優雅な味わいとなってリスナーを魅了することでしょう。 その昔、名曲アルバムには必ず収められていた「愛の喜び」はクラシック音楽という堅いイメージとは真逆の親しみやすさに包まれた名曲ですし、ここでも丁寧に美しく奏でられていました。
ドヴォルザークの「ユモレスク」も解説に書かれてあるように、クライスラーの編曲のおかげで今日皆に親しまれているわけで、その理由は間違いありません。 続く「愛の悲しみ」での寂しさが混じる最初のテーマから愛らしさが伴う長調のテーマへの変化が巧みで心地よさに包まれています。
個人的には「中国の太鼓」が好きです。ヨーロッパ人が感じる異国情緒あふれる東洋趣味の曲ですが、ヴァイオリニストの表現力が試される曲でもあります。中間部の気だるい雰囲気から最初のテーマに戻る瞬間、景色が変わるようで、この変化がたまりません。川畠さんの演奏もお気に入りの一つとなりました。
ラストの「オールド・リフレイン」は、オーストリアの作曲家ヨハン・ブランドルのオペレッタの歌曲から取られたものです。「昔懐かしい歌」という意味そのものの雰囲気が感じられる愛らしい小品でした。優しい気分に包まれています。
リーフレットは16ページで、音楽評論家の奥田佳道氏の「思わずほほ緩むフリッツ・クライスラーの音絵巻」が1ページ、音楽ジャーナリストの萩谷由喜子さんの楽曲解説が6ページ、川畠成道さんの略歴、ピアニストの寺嶋陸也さんの略歴がそれぞれ1ページずつあり、あとは川畠さんのポートレイト他が所収してありました。
川畠成道はヴァイオリストである。 この本を読む前にまずは彼の音楽を聴いてほしい。 私は普段、ロックやR&Bを中心に音楽を聞いているが たまたまレコード屋でクラシックの視聴があったので聞いてみたら 感動!感動!感動! 視聴したのは二作目の「アヴェマリア」でしたが、 即購入してずっと聞いていました。 私は名前は全然知らなかったのですが、俄然どういう人なのか 知りたくなりこの本の存在を知り読みました。 もし、第三者が彼について書くとしたら 「苦難を乗り越えたサクセスストーリー」となるでしょう。 これは第三者的な見方で、じっさいの本人による説明となると 素朴に自分の人生を邁進している姿が書かれています。 目が見えないことがヴァイオリンを弾くきっかけとなりますが、 一流になるためには、音楽が好きだからというだけではなく 「職業としての音楽家」のプレッシャーにも打ち克つことが必要です。 第三者的に見れば才能があると不安なんかないように見えますが、 「職業としての音楽家」になることへの自問自答は 私たち学生にも共感できるのではないでしょうか。
ハイフェッツの名アレンジによるガーシュウィン、そしてそれを見事に再現している演奏は本当に素晴らしいです。決してやさしくはないこの曲を、細部にわたって丁寧にここまでよく弾けるものだと感動しました。相当なテクニックの持ち主でいらっしゃるのでしょう。それに、原曲であるオペラのクラシックでお洒落な雰囲気が出ていて最高でした!もちろん、他の曲も聴きごたえ充分で本当に楽しめました。
「イタリアのさわやかさ、そのままが私にとってのヴィヴァルディの四季である」そう川畠氏は述べている。たしかに全体の印象は「さわやか」だった。多少音程の不安定はあったものの、明るい音色で、ロンザーノ教会での響きと共にボローニャ歌劇場管弦楽団がとても良い演奏をしている。クラシックにあまり馴染みの無い人でも、朝をクラシックで目覚めたいという人にお薦めだと思う。小鳥のさえずりを聴いているみたいで楽しい気持になる。
ただし「四季」という楽曲を極めて聴きたいという人にとっては物足りないかもしれない。夏の稲妻と雷の襲う部分もさわやかなのだ。また冬も氷の上を恐る恐る歩いたり、寒さで歯がガチガチなるような様子は見えない。川畠氏が、嵐や台風の中、農作物の心配をしながら暴風の中を歩くということは経験してないのだろうから想像しにくかったのかも知れないし、逆に今どきそういう作業をしない時代なので現代の時代に沿った四季の解釈ともとれる。また、収穫の悦びに酔っ払って千鳥足になるという部分も、本人は経験が無いのか美しく仕上げてあったという印象だ。しかし、冬のラルゴは恵みの雨がとても美しい。ここはさすがだなと思う。クレーメルは薪のはじける音と解釈していたが川畠氏は雨の方の解釈をとった。私も雨の方が好きで美しく歌い上げて欲しい部分なので嬉しい。また、じっくり聴いていくと川畠氏の美しいViも健在ではある。
バッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲は、第2ヴァイオリンのエマヌエーレ(顔写真の紹介が無いのが残念だった)が深い味わいの演奏をしていてよく川畠氏とマッチしている。少し残響が響きすぎる気もするがヴィヴァルディの四季と似た感じに仕上げてあるので、さらりと聴けるのではないだろうか。私としては、川畠氏の折角持っている高音の美しい部分を伸び伸びと聴かせる部分もほしかったのだが。
とにかく全体のキーワードは「川畠成道の感じたイタリアのさわやかさ」。朝、会社に行く前に聴いていくのには最高だと思う。
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