アドベンチャー・ゲームとしての評価ということでは星3つ、というくらいが妥当な線かもしれません。しかしそのお話の中身を味わいつつプレイしてゆければ星4つ、ドラマCDなどのサイドストーリーを聴いて再プレイすれば星5つの味わいがあります。
3人の女子中生が近未来のインターネットの仮想空間を、意識を乗せた「ネット・ダイバー」として動き回り、巨大ドラゴンと化したウイルスや悪者ネット・ダイバーを退治するお話。
1990年代半ばにこれほど今日のネット社会を具現化していたスタッフたちに驚かされます。昨今のオンラインRPGを見たとき「これ!ありすイン・サイバーランドのネットダイバーじゃん!」と膝を叩きました。
世の中に新しい世界が開ける以前に、その世界を予見しドラマを考え作品にする・・・、ジュール・ヴェルヌが書いた小説や手塚治虫が描いた「アトム大使」等の漫画が、ここではゲームという今日のメディアを得て作品となり得た・・・、と書いたら大げさでしょうか。
漫画家・キャラクターデザイナーとしても今日考えられる最良の絵師、森山大輔さんの絵が得られたことも幸いでした。
今ではグラムスもなく、ソフトやCDドラマも中古でしか買えませんが是非ソフトとCDドラマ一緒に楽しんでください。
ともかく楽しく、元気が出る作品。賛否が分かれそうな「あれから数年」の設定やエンディングまで含めて、堪能しました。あのラストに関しては、「女だって、心のなかに大切なものがあるなら、誰にも頼ることなく独りでも生きていける」というメッセージを素直に受けとることができれば、まあOKではないかと。ティム・バートンがこれほど「女性向けの語り口」も上手にこなせるクリエイターだということ、今回はじめて実感しました。
ある意味、チョコレート工場のとき以上に、素顔がわからないほど作り込んだメイクと演技で挑んだジョニー・デップは「女性陣を引き立てるための添え物」っぽくなっています。そのぶん、綺麗だけれど強い個性を感じさせない(そういう役柄だから、あれでカンペキ)アリスと、さして出ずっぱりというわけでもないのに強烈な印象を残す赤白ふたりの女王の独壇場と言ってよい。
現実世界でアリスを取りまく「女は結婚してなんぼ」という価値観で生きている女性たちも、目立っていないかもしれませんがそれぞれに個性的です。あれが見事に描けているからこそ、自由に羽ばたいていこうとするヒロインの姿勢が立体的に、きわだってくる仕掛けとなってくる。
赤の女王の孤独語りは、私的な好みでいくと少しわかりやすくしすぎかとも思いましたが、あれはあれでよい塩加減。スパイシーです。全般的に悪玉よりも善玉のひねりかたが面白い。特に、白の女王の「いまにもキレそう」な危ない演技は絶品! この映画、原作はルイス・キャロルつまりイギリスものですが、映画つくりのベースとしてはイギリスよりも『ジャンヌ・ダルク』『ロバと王女』といったフランス映画を彷彿とさせます。
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