水野英子氏は若手人気マンガ家の梁山泊と言われたあのトキワ荘唯一の女性住人であった。その彼女がロシア革命を下敷きに描いた作品。1964年当時の少女マンガはお涙頂戴の母子ものなどが主流だった。その中で、ロマンスを主軸にしながらも、こんな骨太の歴史物を描けるとは!その力量は今読み返しても充分読み応えがある!農奴の娘ロタ、実は両親は貴族で母は稀代の歌姫という本人も知らない秘密が。幼馴染のコサックのアドリアンは彼女を自分の命に代えても守ろうとするほどロタを深く愛している。そして革命を先導し、皇帝に反逆を起こす貴公子もまたロタを。歴史の渦に巻き込まれていく3人の運命は?この8年位あとに池田理代子の氏の『ベルサイユのバラ』が発表されたとき、水野氏の影響が確実に見て取れる。このように水野氏の後進作家への影響は多大なものがあるが、中途半端なお嬢さん芸のマンガ家が表面だけマネの出来るようなやわな世界ではない。池田理代子氏のよな歴史観やポリシーのある作家であってこそ影響を引き継ぐことが出来る。
美術館に残る、黒衣の少女の肖像画 それを描いた画家とそのモデルとなった少女の神秘的な愛の物語 小学生の時に読んで忘れられませんでした。
1960年代の水野英子先生の作品で、読みたくても本を入手する事がかなり難しかった「ローマの休日」の復刻版がやっと発行され、喜んだファンの方も多かったと思われます。
この作品は1960年代に2回発行されていますが、それ以来43年ぶりの発行です。 初出は、りぼん 1963年9月号 別冊付録 りぼんカラーシリーズ。 再録は、別冊りぼん 1966年春の号 です。
ですが、この2回の作品は、同じではありません。 初出の、りぼんカラーシリーズ の最後の6ページ分が、 別冊りぼん では描き直されて8ページ分となり、本編が2ページ増えています。 今回発行されたこの復刻版は、この2ページ増えた 別冊りぼん版 が収録されています。 2ページ増えた分、初出より表現が少し変わっています。
作品名「ローマの休日」の扉絵は、初出の りぼんカラーシリーズ では、この復刻版に於ける10〜11ページの1色の左右見開きのみで、本の表紙は水野先生の絵ではなく日傘をさした少女の写真で、 別冊りぼん では、本編最初に水野先生のカラーの扉絵が新たに加わっており、 この復刻版では、その絵が本の表紙となっており、1色で最初の扉絵にもなっています。
復刻版の帯は2種類あり、このAmazonの製品写真とは別の帯では「46年ぶりに待望の復刻 !! 」という文ですが、これは初出からの年数の「決めのフレーズ」だからいいとしても、別冊りぼん の発行以来なので正確には「43年ぶり」だなあ、とか、復刻版が発行される時はセリフが変更されたりする事がありますが、別冊りぼん、復刻版、それぞれナレーションも含め変更されている部分を見つけたり、この復刻版の8〜9ページの絵も りぼんカラーシリーズ と比べて構図は同じですが描き直されているとか、色々興味深い発見がありますし、本編1ページ目の英語のスペルが少し気になった人もいるとは思いますが、復刻が待たれていた「ローマの休日」は、もし著作権関連が無ければ、当然、ずっと以前に再発刊されていたはずですので、やっと読める喜びは大きいと思います。 この復刻版は、本の装丁も魅力的です。
クラシック音楽は好きなのだけれど、オペラになると少し敬遠してしまう方もおられるでしょう。オペラを初めて触れてみようという初心者には実に分かりやすく親しみやすい本だと思います。
代表的なオペラを10作品取り上げ、題名のない音楽会等での軽妙な語り口で親しまれている音楽家青島広志さんが文を書き、半世紀以上少女漫画を描き続けてこられた水野英子さんが分かりやすい漫画で紹介するという内容でした。
各作品とも、作品解説、ストーリー、キャラクター、キャラクター相関図が各1ページ、見どころ、聴きどころが4ページ、水野さんによる名場面の漫画が6ページ、オペラの裏側が1ページという構成になっていました。
紹介作品は、椿姫(ヴェルディ)、魔笛(モーツァルト)、ラ・ボエーム(プッチーニ)、カルメン(ビゼー)、ドン・ジョヴァンニ(モーツァルト)、アイーダ(ヴェルディ)、魔弾の射手(ウェーバー)、ワルキューレ(ワーグナー)、蝶々夫人(プッチーニ)、トゥーランドット(プッチーニ)の10の名作でした。 これらの作品は日本だけでなく、世界中で親しまれている名作ですので、オペラ鑑賞する前に事前に知っておくだけで愉しみ方が変わるでしょう。
プッチーニ「ラ・ボエーム」や「蝶々夫人」、ビゼー「カルメン」などは、本書の説明で十分理解できるでしょう。ストーリーが分かりやすいオペラは本書の得意とするところです。 ただ、モーツァルト「魔笛」のように背景にある奥深さと複雑さを本書で知るには少し無理があるでしょう。青島さんも「でも、あまり深く考えずに、王子が、囚われた王女を救い出すというお伽話だと思って観るのが、気楽で一番ですよ。」と書いています。
ワーグナーの「ワルキューレ」ほどの「難易度が高く長大な作品」を理解するのは並大抵ではありません。本書では有名な「ワルキューレの騎行」の場面が漫画で描かれていました。難しい作品も本書のような入門書があると親しみやすいのは事実ですので。
トキワ荘は、手塚治虫が住み、彼を慕って漫画家の卵たちが集まってきた伝説的なアパートである。その集まってきた漫画家たちが凄い顔ぶれで、石森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄などがいる。当然、伝説的なエピソードが満載で面白い。著者は、当時出版社にいて後の巨匠達を暖かくまた冷静にみつめていた人である。それにしても何故、これだけの才能が一堂に会したのか?運命と言わざるを得ないか。彼らは現代文化の創造者たちであり、今の日本の一面をつくった人たちといえる。彼らの若かりし頃の楽しく、ほろ苦いエピソードがとてもいい。
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