火野に誘拐された生徒を救出するため、ジーザスが罠の渦中に飛び込んでいくのだけれど、途中からエレメンツ・ネットワークの台場巽が介入してくる。読み終わってみたら、ジーザスが暴れていたのか、台場巽が主人公になってきたのか分からないくらい。
24の残影がまだまだ影響を及ぼしている。登場する敵たちは、皆それぞれの理由で復讐を口にする。意図せず大切なものを断ち切られた者は、善悪を問わず、失ったものを埋めるための何かを必要とするのだろう。そして、彼らにとってはそれが敵なのだから。
「"護り屋"楯雁人……! 依頼を受けて参上した!」
エレメンツネットワークの、台場巽の依頼を受けた「イージスの楯」が、遂に戦場にその姿を現します。
"龍門幇"の若き頭首・劉伊健の恐るべき戦闘能力。作中で描かれる、その壮絶な過去。原作の七月先生曰く、「『闇のイージス』に代わっていたかもしれない、もうひとつの物語の主人公」として生まれた伊健は、実力も華麗さも凄絶さも、「闇のイージス」登場時より遥かに増し、ジーザスを窮地に立たせます。
"龍門幇"の真の頭首と呼ばれる、劉家長兄・劉小剛。そして「24」の老人派の首魁。新たな、闇の中に潜む者たちも現れ、いくつもの悪意と思惑が入り乱れて、戦いはさらに苛烈なものへとなっていきます。
伊健やカイザに言われた言葉に揺れ、その上で決意を新たにして、ジーザスにある頼み事をする綾木日奈。そんな彼女の前に新しく現れた戦士は、あの──。
「闇のイージス」「暁のイージス」も併せて読んでいた方は感涙するでしょう(私はしました)。必読の第8巻です!
人工物による危険性で最大級のものがテーマとして登場しましたか、ついに。ある意味、ホットな話題ではありますが。最後には、あの人物が登場して、すべてをさらって行きます。世界を変えようとするものと、世界を守ろうとするもの。その対決のときは、すぐそばに迫っているようです。
全体の流れの中では、今回のテーマは世界が瀕している危機、ということなのでしょうが、もう少し小さな、個人のレベルでもテーマがある気がします。何かに敗れたものが再び立ち上がる。冒頭でのホセの台詞がそれを現しているのでしょう。みんなが乾杯をするシーンは、刑務所の中なのに、なぜかとてもすがすがしい。不思議な気分を味わいました。
『JESUS砂塵航路 狼たちの邂逅』です。この最高のハードボイルド・アクションも9巻目に突入しました。
本巻は、大きく二つの物語に分けられています。
前半では、あの野坂亜紀が登場。彼女とジーザスの、富士の樹海での会話も描かれ、彼女はジーザスのただ一人の弟子として、綾木日奈の前に立ちはだかります。
このエピソードを読んで、しみじみと思いました。ジーザス、あんたはほんとに立派な教師だよ!
……後半部は、3年前のチェチェンの物語。先行しているクロスオーバー作品『死がふたりを分かつまで』で語られている、チェチェンでのジーザスと土方護の邂逅。そのジーザス側の詳細が、遂に砂塵航路で描かれます。
凄惨を極める戦場で出会った、伝説の死神と剣の鬼。
人間を、幼い子供を弄ぶ「TPC」へと向けられるジーザスの苛烈な怒り。
その戦う様の凄まじさには、文字通り圧倒されずにはいられません。
読み終えたときの感想はただひとつです。ああ、早く次巻が読みたい!
夢に出る怖さです 藤原先生は絵が大変だったろうなぁ
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