硬質でサイバーな世界と、無重力圏での人体解体など鮮やかなグロテスクに酔わされる。世界観がたいへん美しい。物理化学など理屈っぽくて理系心をくすぐられる一冊。
若干ワンパターンの傾向がありますが、なかなか読ませてくれる作品がそろっています。
遺跡を調査して回る主人公の旅を連作短編の形式で描いていますが、さまざまな異世界を描く描写は豊かなイメージを提供してくれますが、その感触はあくまでモノトーン。主人公とその相棒となる結晶生命体の会話はありますが、極めて淡々としており、派手さはまったくありません。
各話ともコアとなる謎が用意されており、その謎が明らかになる過程が、淡々と語られていきます
絵でいえば、水墨画のような味わいを示してくれる作品ですが、たまにはこういった作品も面白く読めました。
日本人の書く宇宙SFはあまり多くないが、堀晃さんの作品は本格的で面白い。 本作も宇宙SFとして立派な作品。もっと評価されて良いと思う。
堀さんの作品を読むのはこれが2作目。1作目は「遺跡の声」だった。
今回読んだこの作品もすごく面白い。導入部分から自分も物語の宇宙空間の中にいるような気分にさせてくれた。290時間の慣性飛行の間の描写は、普通であればつまらないものになりかねない。しかし、その間も作者は、主人公マキタの思考を書きつづる。「太陽系空域の境界はどこにあるか」。通信士、操縦士、宇宙観測基地の観測員のそれぞれが、境界を全く違うスケールで捉えているという描写はリアルで面白い。12ページ目で早くも「バビロニア・ウェーブ」という言葉が出てきて、それについての概略もほどなく語られるというスピード感は、自分にはぴったりだった。
操縦士である主人公マキタは何も知らないまま次第にとあるプロジェクトに巻き込まれていくのだが、知らないが故に色々と質問し、そのことで読者もまた謎を一つ一つ解決していくことができる。このマキタ、スペースコロニーの出身者で、地球の環境はほとんど知らない設定。その彼が地球人とはやや違った視点・感覚で重力や人の特徴を捉えている描写が興味深い。プロジェクトの遂行の中で次々に事故死する仲間達。残されたのはマキタと教授。そして・・・。ラストに向けてのスケールの広がりは見事。バビロニア・ウェーブの正体が明かされ、マキタはただ一人、重要な役割を果たすことになる・・・ところで物語は終わってしまう。ぜひ続きが読みたい終わり方だった。
このアルバムは一昨年の大震災以降に芽生えたふるさとを思う心をテーマにしたアルバム。 こういうアルバムは、キングレコードらしい企画で、最近多い楽譜出版社系のメーカーでは出来ないだろう。 選曲で素晴らしいのはタイトル曲、『この国は』。 自衛隊10周年を記念して書かれた隊歌で作曲はあの古関裕而である。 オリンピック・マーチにも通ずる古関メロディの爽やかな行進歌で、今まで録音が市販されてなかったのに驚くが、ここでようやく一般のリスナーにも知られるようになったのは良い事だ。 また前半に収録された、『陸軍分列行進曲』や『君が代行進曲』と言った昔からのレパートリーを改めて新録音しているのも評価できる。 とはいえ、日露戦争をテーマにしたあたりではさだまさしや久石譲といった新しい作曲家ばかりだけではなく、例えば『軍艦行進曲』(瀬戸口藤吉)『東京湾凱旋観艦式記念行進曲』(吉本光蔵)はたまた描写曲『攻撃』(山本銃三郎)のような当時の吹奏楽曲を入れて欲しかった。 またバーンズも中途半端に第四楽章だけ収録するなら、警備隊一周年記念で書かれた行進曲『大空』(須摩洋朔)やこれも古関の隊歌『栄光の旗の下に』等の知られざる自衛隊関連の曲を収録して欲しかった所。 現代の作曲家では七彩の奥羽国が良く、特に第3楽章では(ミキシングされた音ではあるが)ヘリコプターや小銃等が使われており、非常に面白い。 演奏に関しては大変に素晴らしく、どの曲も迫力のある吹奏楽ならではの響きが楽しめる。
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