スティーブ・ジョブズもアップルも有名だけれど、アップルがどのような会社なのかは知られていない。ジョブズが追放されていたときには、学者が研究することもできたようだが、ジョブズが復帰してからは製品の宣伝以外で外部に情報を流すことはいっさいないからだ。ジョブズ自身もあまりインタビューを受けなかったし、幹部であろうとも社員がアップルについて語ることをジョブズは禁じた。もっとも、ほとんどの社員は自分の仕事以外は何も知らされていなかったのであるけれど。本書は、この徹底した秘密主義が貫かれているアップルの内部がどうなっているかを探ろうとしたものであり、同時にジョブズがいなくなった後もアップルは輝きを失わないのかを探った本でもある。
しかしながら、アップルの現社員どころか、元社員でさえアップルの組織構造など内部を語ってくれる人は少なく、興味深い話はあるものの断片的で、アップルの内側はよくわからないままに終わる。アップルがどのような企業かを語ろうとしても、結局ジョブズについて語ることになってしまう。それだけジョブズの存在が大きかったということなのだが、ほとんどが既知のものであり、物足りなさが残る。また、アップル・ウェイがこのまま続くのか、他の企業でも通用するのかという問いに対する答えも、今後明らかになるだろうで片付けられている。ただし、アップルの元社員がつくった新しい会社について述べられているのは興味深かった。アップルのすべてはまねできないだろうが、実現できることはいくつかありそうだ。
アップルのインサイドがベールを脱ぐことはまだまだ先のようだし、ジョブズのDNAが強く残っているのならば、その日は来ないのかもしれない。
この本には、過去100年間に世界に大きな影響を与えた21の演説が紹介されている。
著者は、それぞれの演説を年代順ではなくテーマに沿って4部に分類し、配置した。著者が序文で書いているように、これらの演説を紹介するだけがこの本の目的ではない。その背後にある歴史上の出来事や思想にも目を向け、今日の私たちの世界観がどのように作られてきたかを考え、探るための一冊である。
第一部は「人類はみな人間」というテーマで、女性解放、人種差別、死刑、植民地主義を取り上げている。身近なテーマで分かりやすく、特に第1章の「自由か死か」は、女性の権利のために命をかけたエメリン・バンカーストの演説で、今日、女性があたりまえのように享受している権利がどのようにして勝ち取られてきたかを知ることができ、非常に興味深かった。
第二部では「敵か味方か」というテーマで、民主主義と共産主義の対立、イスラムとアメリカの対立、そして、テロよりも危険な兆候を示している気候変動についての演説が取り上げられている。人はよく、話を分かりやすくするために、世界を決まり言葉でわけようとする。「西側」とか「第三世界」とか「悪の枢軸」とか。その傾向は、9.11米国同時多発テロ以後の「イスラム世界」と「西洋」の対立によくあらわれている。そういった対立と、そして、必ずどちらかの側につくことが求められる国際間のありようが、演説から読み取れて面白い。
第三部は「力は正義」というテーマで、戦いをもって平和を得ることができると信じる、あるいは、それを隠れ蓑に経済的・政治的利益を追求する指導者たちの演説である。「正戦論」はギリシア・ローマの時代からあり、「目には目を」というのがアラーの教えだと知っても、どこかしっくり来ない気持ちは否めない。そんな中で、ティム・コリンズの演説「カインの印」は、心を打つ。志願して戦いにのぞむ兵士も、集団では狂気にかられたかに見える軍隊も、個人個人は心ある人であることを思い出させて救われた。
第四部は「平和にチャンスを」というテーマである。平和のために徹底した非暴力主義を貫いたガンディー、武器によらず知性と良識ある行動で争いを収めるべきと説いたアイゼンハワー、イラク戦争に反対して英国下院議員を辞任したロビン・クック、我が子をテロで失った母親、そして、「核なき世界」に向けた働きかけが評価されノーベル平和賞を受賞したオバマ、各氏の演説が紹介されている。三部で紹介された、武力こそが平和への道と信じる人たちの演説とは対照的である。
読み始めた時は、演説が時系列になってないことや、演説の紹介の前に長い解説があることに読みづらさを感じていたのだが、何章か読み進めるうちに、その構成が必然なのだ思えてきた。この著者の文章があってはじめて、それぞれの演説が腑に落ちていった。
この本で紹介されている演説は、歴史をいろいろな角度から見せてくれる鏡のようなものだと思える。どの演説の背景にも、さまざまな重大な出来事が存在している。
良い演説には力があり、聞く人を前向きな気持ちにすることができる。一方で、間違った方向に導く可能性も秘めている。
終章の見出しには「私たちは何をすべきか」とある。過去100年に起こった出来事を演説の言葉を繙きながら追ってみて、そこから何を学び何を教訓として未来につなげていくのか。この本は、読む人にそれを問いかけているのだと思う。
2011年10月25日リリース。ご存知の方も多いかもしれないが、間もなく発売される『スティーブ・ジョブズ II』の一部で最も興味深い二人、新しいCEOティム・クックと工業デザイン担当上級副社長ジョナサン・アイブの章が先行掲載されている。版元の講談社ならではの特権で早速手に取った。
ティム・クックはII巻の第27章、ジョナサン・アイブはII巻の第25章に登場してくる。この二人は、スティーブ・ジョブズの経営者としての側面とデザイナーとしての側面をそれぞれ継承した人物と言えるだろう。
読んでいくとティム・クックを後継CEOにした鍵は『在庫管理』にあったと思えてくる。ジョブズが復帰したときに、アップルは2か月分の在庫を持っていた。それをジョブズは1998年初めには1か月分に減少させている。ところがクックはその在庫を9月には6日分まで、その1年後には2日分まで、そして瞬間風速では15時間分まで減少させる。それだけでなく、製造工程を4ヶ月から2ヶ月に短縮させる。まさに経営の基本とも言える在庫管理の分野でこれほどの力を発揮したクックに経営の後継を委ねたのは当然だと思える。
そして、ジョナサン・アイブとジョブズは最も頻繁に昼食を共にしていたらしい。ほぼ二人で、現行のラインナップのデザインを完成させたといっても過言ではないだろう。
ジョブズは、敏腕の経営者であるとともに唯一無二のデザイナーだった。そしてそれ以上に『人』の中に眠っている才能に誰よりも早く気がつく才能を持っていたことが分る。そしてこの最後の才能こそが、ジョブズの最も偉大な能力かもしれない。
クーリエ・ジャポン12月号はそれ以外にも、さまざな経済学者へのインタビューを敢行していて、そちらもかなりオススメだ。ジョセフ・スティグリッツへの『危機はまた起こるのか』だけでも手に取る価値は充分にあると思う。
ビルゲイツももしかしたらこんなことやっているのではないかと、思わず失礼なことを考えるほど、実在しそうな、けっしてフィクションではないような気にさせる内容。 最初の3分の一は青春サクセスストーリー、あとの3分の2がサスペンス。 コンピュータが重要な小道具になっている作品の場合、「キーボードをたたく手元」と「モニター画面のみのアップ」と「操作者となる役者の顔のアップ」のワンセットがじつに多い。ばらばらに撮影したあと、映像をつなげたことに間違いない。その際の役者とカメラワークを思うと、こういう作品では、役者は「顔のアップの表情」で語るべき内容が多く求められたにちがいない。若き俳優たちに、今後のさらなる活躍を期待する。 ティムロビンスの存在、大きいでしたね。
タクシーのNY版です。マンハッタンが舞台です。クイーン・ラティファが主演でドライバーです。音楽やマンハッタンの風景などスタイリッシュな映画です。美女盗賊団が登場します。でもやっぱり、フランスのタクシー・シリーズの方が断然面白いです。今回は、フォード・クラウン・ビクトリアとBMWの対決になっています。ラストは、NASCARのレースシーンで、ジェフ・ゴードンも出ています。それなりに楽しめる映画ではあります。
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