原作は読んでいないが、一度見てからその面白さにはまり、連日見てしまった作品。 大阪の昆布問屋に丁稚奉公から入り、その商才を認められて暖簾分けを受ける代わりに、店主から姪との縁談を押しつけられる男が森繁久弥。彼の妻となるのが、きかん気で可愛げのない山田五十鈴。森繁と淡い恋心をお互いに抱きながらも、結ばれない同じ昆布問屋に奉公している娘が乙羽信子。乙羽信子がすごく可憐。 森繁も上手いが、山田の凄みのある新妻ぶりがよかった。お互いに好きで一緒になったわけでもなく、祝言の後の初夜に口げんかした後、山田が花嫁衣装のまま、昆布を削る姿が忘れられない。森繁も「こん畜生」とばかりに、一晩中仕事をする姿がいい。 男と女って、こんな風にして一緒に暮らし、夫婦になって家族になっていくんだな〜ってしみじみ感じた。特に昔は恋愛結婚なんて珍しかったし、見合いや親の勧めで結ばれることがほとんどだったから。「愛」や「恋」から生まれた関係ではなく、共に暮らし苦労し、喜びが生まれる生涯の「同志」(パートナー)が、日本人のかつての夫婦の姿だったと思う。 全編に浪速の商人の「暖簾」に対する気持ちが伝わり、商魂たくましさが小気味いい。 森繁が、ひょうひょうとしてどこか抜け目のない息子役と二役を演じ分けていて、そこも見所。 他にも名優達がしっかりと脇を固めていて、俳優達の演技だけでも充分見ごたえがある。 飽きずに最後までひきこまれた映画。
主人公である壱岐正が、戦闘機という高額商品の受注戦においてどのように情報を得、商戦を制していくかというシナリオの展開には血肉沸き躍るような興奮を覚えた。 長編小説が苦手な私だが、モデルとなった瀬島龍三氏に興味をもち何の気なしに読み始めたが、シベリア抑留生活を描いた冒頭からどんどん引き込まれていき、4巻にわたるこの長編を一気に読んでしまった。 何がそんなに魅力なのか?それは壱岐正の研ぎ澄まされた知性とニヒリズムなのかもしれない。
やはり主演の唐沢寿明の演技力が光るドラマでした。江口洋介や石坂浩二・伊武雅人・西田敏行など脇を固めるメンバーも豪華で久々に硬派なドラマであった。ただ大阪が舞台となっている為か、西田敏行とその取り巻きが下手な関西弁を操っていたが、その部分は拘る必要がなかったのではないかという印象を受けた。
それぞれの個性が丁寧に描かれていたことが、よりドラマに深みを持たせたのではないか。
唐沢が江口より真実を告白され涙ながらに漏らす「怖くはない。ただ無念だ。」の一言はとても重みのある台詞で見ている方も涙が出て来た。
阪神銀行頭取・万俵大介の野望は果てしなく大きい。佐分利信の憎らしいまでの名演技は必見。仲代達矢演じる彼の息子(?)・鉄平は数奇な運命に操られ悲運の人生を歩む。脇役で出ている田宮二郎は、その鉄平を演じることを切望したらしいが叶わず。田宮の78年の自殺法は、状況的見地から…という説が有力だ。
雄大にして繊細な音楽集です。
悠久の時の流れ、歴史の歩みの中では、ひとりひとりの人間の存在は砂粒のようなものに過ぎないが、歴史を作り、衝き動かすのもひとりひとりの人間。
歴史の中に人間が在るように、ひとりの人間の中にも、人間の数だけ歴史がある……
……ガラにもなくそんな事どもを考えさせられてしまいました。坂本龍一さんによるメインテーマM‐1『FUMOCHITAI』の生命力に満ちた拍動を受けて、菅野祐悟さんが力強く、船を漕ぎいだすように展開するM‐2『不毛地帯 ―生きて歴史の証人たれ』は圧巻。
重々しい曲だけではなく、M‐3『近畿商事』の躍動感や、ウィリアム・テル序曲を思い出させるM‐9『未知の世界』の鮮烈な出だしのホーンは、逆境でも希望を失わない人間の強靭さを謳い上げます。
唯一残念なのは、唐沢寿明さんが豪雪の収容所跡に背広姿で佇む印象的なEDで流れたトム・ウェイツ『Tom Traubert’s Blues』が、M‐16にフル収録されているのは嬉しいのですが、歌詞カードが無い…。毎週、話数を追うごとに物語とマッチしてきた名曲、やっぱり一緒に歌いたいじゃないですか(…歌うのかい!)。…この分だけ★ひとつ減、です。
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