前作に比べボリュームは少ないものの、内容は外すことなく面白かった。
特に浅田氏の他作でもお馴染みの血まみれのマリアまで登場したほか、有名な登山家、(複雑な事情を有した浅田氏酷似の)小説家は相変わらず話を盛り上げてくれる。
また、いじめを苦に自殺を図ろうとする少年も登場するが、いじめを苦に自殺する学生が多い中、そうした悩みを持っている学生に送りたい気持ちである。
浅田氏得意の登場人物の勘違いを背景とした会話を面白おかしく描く技術は本作でも十分に発揮されており、かなり自信を持ってお薦めできる作品である。
いよいよ同作の春(4巻)を読み始めるが、読み終えるのが惜しいような気持ちが生じるほどの傑作!
浅田次郎の小説の原点ともいうべき『プリズンホテル』シリーズが大団円を向かえる1冊です。
主人公である孝之介については、他の作品以上に作者・浅田次郎の投影が感じられます。
浅田次郎が言う所によると、両親が離婚して、それぞれが所帯を持ち、浅田自身は親類に育てられ、また、妻の母とも浅田次郎が同居している現実があります。それを知れば知るほど、孝之介のここでのセリフが読者を泣かせるのは、作者の心の底から発する強い思いが込められているからにほかなりません。母への愛を希求する姿は強い願望となって読者にストレートに伝わってきます。ハチャメチャな後に泣かせる展開というのがまた上手さを感じさせます。
また浅田自身が疫病神に称えられ「くすぶり」と言われていたことを考えますと、登場人物名にあえて、それを持ち出したのも浅田次郎自身の運気の向上と本作がリンクしているからだと考えます。
文壇最高のステータス「日本文芸大賞」にノミネートされたという本作の展開も、『プリズンホテル』が週刊誌に連載中、まさしく『蒼穹の昴』が候補に上がった年で、翌年の『鉄道員』でめでたく直木賞受賞したエピソードを彷彿とします。作者の思い入れを相当感じる作品となっているのは当然かもしれません。ケレン味たっぷりな文章もまた広い読者の獲得につながっていると思います。
1990年代中頃は、『きんぴか』『日輪の遺産』『地下鉄に乗って』『蒼穹の昴』『鉄道員』という彼の幅広いテーマを扱った作品群が次から次へと生まれ出た年代で、この浅田次郎のエンターテイメント小説『プリズンホテル』の4部作が同時期に完結したのも凄い力量としか言えません。読者を飽きさせない小説です。
キャラクターたちが立ちすぎていてともすれば漫画のようにうつってしまう.各巻とも最初に配置された登場人物たちから凡そのラストの結末は予想できる.それでも,この作品は面白い.泣かせ所の書き方が特に秀逸だ.安心して読める作品である.
いきなりの変な三人組にびっくり。そして笑い。感動。本てやっぱりすごい。
夏編に続いて、秋編も読みました。
とにかく、面白すぎる。
少々、付添いの女性とその子供に対して、異常ともいえる冷たさ、暴力が「ちょっと、、、」って感じはするけど、それは、作者のわざと読者に毒をもっておいて、余計に後から心に響かせるという反則スレスレの技と言うことで納得しています。
今回は警察と任侠団体の宴会が重なり、はたまたその中に売れない歌手の悲哀な物語もあり、
この何重にも絡まった話を一気に読ませる作者の力量には相変わらず敬服します。
実際の世の中は、人情が薄くなっているけど、この小説を読むと人情は日本社会にはとても重要な要素、また、日本人が世界に誇る文化だなあ、、、とつくづく思います。
人情味のある人間になりたいと思う 小説です。 ドタバタ小説ですが、お薦めですよ。
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