大衆娯楽とは対極にある、極めて芸術性の高い映画。だいぶん表現手法は違うが日本版フランス、ヌーベルバーグというべき印象、無機的であり、知的でユーモラス、俗っぽさも満載で、人生の喜怒哀楽、人とは何かという問いかけが全てがつまっている傑作。芸術を作ろうと思う側の人間ならば、かならず繰り返し見るべき、面白いとか面白くないとかいうそんな低次元の映画ではありません。・・・私が今まで見た回数は数えきれません。
アルバムタイトルとなっている「歌うように話せたら」は名曲。 仲代圭吾・行代美都の両氏はTVではなく、コンサート中心に活動をしている シャンソン歌手だが、シャンソンだけではなく、オリジナルや世界の名曲もコンサートに取り入れている。 CDには、オリジナル・シャンソンが中心となるが、彼らの良さは、実際のコンサートの方がよく伝わる。 なんと言ってもMCが最高なのだ。 また、実兄仲代達矢氏の詩の朗読がいい。 情景が目に浮かび実にいい。 コンサートでは、達矢氏がマイクを持ち、シャンソンを歌う。これもまた見物である。
老化も進化という題名から中高年への自己啓発書を想像しましたが、本書は仲代達矢さんの自叙伝といってもさしつかえないかもしれません。本書の中身は全編亡き宮崎恭子さんへの愛が綴られていて、仲代達矢さんの役者人生や若き苦労時代のことも書かれています。宮崎恭子さん共に無名塾を立ち上げ苦労しながらいかに塾を続けて来たか、また宮崎さんが亡くなった後どうやって仲代さんが立ち直ったかが真摯な言葉で語られています。本書が書かれて時点ではお一人で暮らされているようです。個人的には、本書の中にある「過分は借金である。」という言葉が強烈に私の中に残りました。経済優先で「過分」に生きてきた私たち日本人にいまそのツケが回ってきたからです。俳優としての仲代達矢さんは全てが完璧な孤高の人だと思っていましたが、「私は舞台の一役者である。」と高齢になられた今も初心を忘れずに新しいことへチャレンジされています。最近の仲代さんは、ロンゲとロングヒゲでますますカッコ良くなられていますネ!
仲代さんの人生は日本の映画の歴史そのもの。「人間の条件(全6部)」「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」「炎上」「鍵」「股旅三人やくざ」「切腹」「大菩薩峠」「殺人狂時代」「激動の昭和史 沖縄決戦」「他人の顔」「華麗なる一族」「金環食」「不毛地帯」「御用金」「闇の狩人」「鬼龍院花子の生涯」「影武者」「乱」「上意討ち」「怪談」など、出演した映画は150本以上(巻末に作品一覧)。 仲代さんは映画会社にも所属することがなく、いわば映画界ではフリーの存在。もって生まれた陰気なところ、モヤっとした性格。仲代さんは自身をそう語っているが、実際、ユニークな俳優だった。メインは俳優座の演劇人だった。映画出演と部隊との関わりをうまくコントロールしてくれたのは、佐藤正之というプロデューサーだったようである。この人のおかげで、長い俳優人生を送れたと言っている。 映画では監督との出会いが印象的。小林正樹、黒澤明、岡本喜八、五社英雄、成瀬巳喜男、市川昆、木下恵介の話が興味深いが、なかでも小林正樹監督との関係は、「黒澤・三船」に匹敵するものだった。その小林監督と組んだ「人間の条件」での撮影秘話では、北海道での撮影の苛酷さ、こだわり(満洲の雲がでるまでロケを待つ)が伝わってくる。 苦楽を共にした同僚(佐藤慶、田中邦衛、井川比呂志、原田芳男、山崎努)、共演した俳優の話もつきない。三船敏郎、市川雷蔵、中村錦之介、石原裕次郎、丹波哲郎、勝新太郎、原節子、月丘夢路、高峰秀子、新珠三千代、夏目雅子、岩下志麻、夏木マリ、など。 黒澤監督「影武者」では、主役のはずだった勝新が監督と対立して降板、仲代さんは代役となったが、撮影ではシコリが残って、苦労が多かったようである。 どの作品が一番かと言う問いには「切腹」と答えている。カンヌ映画祭ではグランプリの自信があり、祝賀パーティも準備していたが、ヴィスコンティの「山猫にさらわれれたとか。
映画の時代を生き抜いてきた仲代さんは、いまの映画のつくりが、効率重視が先行し、時間をかけることをせず、時代考証も怪しくなってきていることを心配している。ポッと出の監督と台詞もしっかりできていない俳優とでは、いい映画ができるはずがないと言う。
映画史・時代劇研究家の著者が、役者仲代達矢との10回、15時間ほどの対談をまとめたもの(2011年6月)。ほとんど仲代さんが語っている映画人生なので、仲代著であってもおかしくないが、事情があって、対談の聴き手(編集者?)が著者になっている。
これは読み応えのある作品です。何度も読み直しています。グッド!!
|