曲は一部で編集されているものもありますが原音です。初めて見に行った洋画が「未知との遭遇」でしたから、同じ年代の方なら自分の人生と重なり、懐かしさもひとしおです。
ミシシッピの片田舎からメンフィスへと舞台を移しながら、美しい風景の中でくり拡げられる4日間のエピソードを描いたエンタテイメント・ロード・ムービーである。 スラップスティックな前半に続き、中盤では少年を取り巻く人々との人間模様、そして後半のクライマックス、草競馬レースの緊迫感、終盤はフォークナーの硬骨なメッセージ、起承転結が明瞭で切れ味のいい展開だ。
スティーヴ・マックイーンがクレジットされると派手なアクション系のヒーロー映画を連想しがちだが、この映画で彼が演じるのはお調子者の下男、他作とはひと味違う軽妙なキャラクターでルーシァス少年の脇を固める。 まさに「ハキダメに鶴」、美しくて心やさしく、そして気骨のある娼館の女 (シャロン・ファレル)、物語のキーマンは出自にいわくのある黒人(ルパート・クロス)、それぞれ個性溢れる持ち味で好演している。 加えて1905年製黄色のウィントン・フライヤー、セリフこそ無いもののこの映画の重要な登場人物として古き良きアメリカの街角をエレガントに疾走?、マックイーンが運転しているのもご愛嬌だ。 ジョン・ウィリアムズのテーマ音楽は雄大にして爽快、音楽担当にはラロ・シフリンの名前もあり、カントリーなバンジョーのブレイクダウンやディキシーランド・ジャズなどを聞かせてくれる。 二人のナンバーが場面ごとの雰囲気を実に巧く盛り上げている。
下男に唆かされたとは言え、周囲の人々に嘘をついてまで出奔した少年。彼をベルトで打とうとする父親に祖父は言う。 「罰を与えられたことにより罪が消えた、許されたと思わせてはいけない。」 続いていて少年に、「嘘に傷つくのは結局は自分、自分の力でそれ(自己嫌悪)を乗り越えなければいけない。」と語りかける。 いかに上手く嘘をつくか、時にそれを称賛さえする私たち、小手先の世渡りを、知らず知らずのうちに子供たちに見せてはいないだろうか。
マックイーンも愛読していた文豪フォークナー原作だが、決して格調高い「文芸映画」仕立てでなく、人種偏見など当時の社会的背景も描き込みながら、娯楽映画として見所一杯の仕上りだ。 フォークナーの小説は視覚的に優れ、映画化された作品も多い。 「八月の光」など誰か映画化してくれないだろうか。
アクション俳優のマックィーンとは別の魅力満載の作品で、。ウイリアムフォークナーの世界が見事に表現されている。 後期の隠れた秀作。
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