幻の翼 (百舌シリーズ) (集英社文庫)
『百舌の叫ぶ夜』の続編。
死んだと思われていた新谷の兄が生きていた……?という話で、
ひとことで言えば後日談、言い換えれば長いエピローグとも言える。今回の“敵”は院長が替わった稜徳会病院。
シリーズキャラクターの一人と思っていた倉木があんなことになるなど、
意外性もリーダビリティも依然として抜群なのだが、
読み終わってみると“幻の翼”というタイトルの意味が分かる仕掛けになっている。
それが幻だからというか、何かスカされたような感じを抱かせる、
何か損をしているような作品。
評判が良かったからつい書いてしまった、という続編ではあるまいか?
とはいえ、それがこれだけ面白くなるんだから、逢坂剛恐るべし、ではある。
神牌演義アナザー 大阪城炎上
神牌演義のいいところは、少年ジャンプ的なノリです。
ハラハラ、ドキドキの連続!!!
戦国BASARA 武将巡礼Vol.2真田幸村
本書は人気ゲーム「戦国BASARA」に登場する戦国武将ゆかりの地をたどるガイドブックである。戦国武将一人ひとりを取り上げるシリーズ物の一冊で、本書のテーマは大阪の陣で活躍した真田幸村(真田信繁)である。
「戦国BASARA」は戦国武将達を操り、敵をなぎ倒す爽快さがセールスポイントのアクションゲームである。戦国武将がスタイリッシュに描かれ、歴女(歴史好き女子)ブームの一因にもなった。
「戦国BASARA」自体はフィクション性の高い設定である。幸村は武田信玄に仕え、伊達政宗とは宿命のライバルになっている。また、戦国武将の衣装や武器も時代考証から離れたものになっている。これに対し、本書は史実の真田家に関連する名所を紹介する。
紹介する地域は真田一族発祥の地である真田の郷(長野県)、上杉氏・北条氏・武田氏・真田氏の間で争われた沼田(群馬県)、徳川の大軍を二度も撃退した上田(長野県)、幸村の兄・信之から初代藩主となった松代(長野県)などである。取り上げる内容は城跡や寺社、温泉、旅館、名物料理、土産物まであり、旅行ガイドブックになっている。
幕末まで続いた真田松代藩では8代藩主・幸貫は下級藩士の佐久間象山に洋学を学ばせた。象山は洋学の第一人者となり、吉田松陰や勝海舟、坂本龍馬ら幕末を動かした人物に影響を与えた。ここに本書は実戦的かつ合理的な真田家の精神を見出す(61ページ)。戦国時代というスポットで限定するのではなく、幕末にまで続く流れとして歴史を見ることも勉強になる。
興味深いのは歴史関連書籍やグッズを扱う「時代屋」若女将・磯部深雪氏のコラムである。若い女性ファンには幸村をはじめ、石田三成や島左近、大谷吉継ら関が原の合戦時の西軍武将が人気という。そこには切なさやロマンがある。これに対して、豊臣秀吉や徳川家康のような一度でも勝者になった人達には切なさやロマンは感じにくい。幸村達の精神面の美しさやカッコよさに魅了されるとする(89ページ)。
「歴史は勝者のもの」と言われるが、西軍武将人気は正反対である。歴史上の人物を勝ったことではなく、何を成し遂げようとしたかで評価する。これまでの歴史常識からは外れるが、実は真っ当な人物評価である。歴史は為政者にとって国民支配の道具にもなる。そのような官製の押し付け歴史観に対抗する意味でも歴女の感覚に健全性を感じた。