農家が読んで、冷や汗がでる。 ノンフィクションかとも思った。 ただ、若干気になる点があった。 読んで欲しい本です。
篠田さんの本は本当に好きなんですが、この表題作は正直あまり面白くなかったです。 仕方のないことなのかもしれませんが、出てくる男性が『夜のジンファンデル』や現在毎日新聞で連載されている男性とものすごく重なってるんですよね。エリートで勉強もできて語学は堪能、ルックスもどちらかといえば良い方で、合理的で冷静にものを捉えて、決して自分の感情を表には出さないような。今回の表題作に主人公には実はそうした表面的なエリートとは一線を画してるんだけど…それがあまり意外じゃない。女性の描き方はものすごく多様なのに、不思議と男性像が画一化している気がします。 恋愛小説をあまり書きたくないのだけど、こういう昔の恋愛に憧れる女性も多いから出版社の要望で嫌々書いてるのかしら。少し退屈でした。
内容的には、クラシック界の(特に、バイオリン界の)楽器に対する演奏家から見ての評価とか価値の危うさが垣間見れる作品であり、非常に面白い作品であると言えます。特にバイオリンなどの不可解な価値の根幹にあるのは、楽器演奏者自身の盲目的とも言える信仰心であり、また、演奏そのものより、楽器や奏者のネームバリューが物をいってるという、クラシック界の暗部を表現してます。のだめカンタービレがクラシック界の表と明るさを表すものとしたら、マエストロは裏と深層を表す作品といって良いでしょう。伊藤裕子の冷徹なまでの現実を見据えた演技と観月ありさの一流とはいえない演奏家としての葛藤がよく表されており、出来のいい作品といえます。クラシック界の奥底をのぞかせた、最初の作品ではないでしょうか? クラシックが好きな方、嫌いな方、必見のDVDです。
本書を読むにあたり、連続した強い緊張を強いられる。到底、平常心では読めない。ヒマラヤの小国で永岡が体験した事は、人間の極限状況の連続だ。宗教を含むすべての文化を否定する、絵空事の様な革命思想、強制労働、強制結婚、女性への真の愛情、極度の飢餓、地雷による片足の爆失など、秘仏に対する妙な好奇心を出さなければ、体験する事が無かった事ばかりだ。永岡が強制労働のため、ストレス潰瘍で血反吐を吐くというくだりがあるが、彼が日本で体験したストレスなど、問題にならない。
革命家は、人々から信仰心を奪取する事は出来なかった。
信仰心を持たない永岡ですら、最後は無意識に祈った。
そして、背中にかついだ仏像に宇宙を感じる。
長大な時間と空間をイメージさせられる。
祈りとは?救いとは?慈悲とは?
こんな自問自答をせずにはいられない。
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