前作、前々作とは、また違う趣ではあるものの、 特質な違和感はあまり感じなかったつもりですが…、 やはり最初はちょっと戸惑ったと告白します。 しかしながら、聞き込んでいくと彼ららしさのセンスと こだわりがいっぱい詰まった作品であることが解ってきます。 ただ、午後の昼間にエアコンつけて聞くと眠くなることがしばしば。 でもそれは退屈なことからではなく、 このアルバムの心地よさが睡眠の方向へ引っ張っていくだけであって、 こんな気分のいいことはないのです。
基本はオーソドックスなポップロック、でもとても瑞々しい。初夏を思わせる爽やかなポップチューンから、アシッドな風味のナンバーまでの多彩な楽曲が、ブレのない音作りで並んでいるのに、それぞれがその世界を鮮やかに見せてくれます。彼らの場合、デビューから一貫してブレの無い姿勢と音で魅力を放ち続けているわけで、まさに驚異的です。デジタル音源も多く使われていますが、ギターやドラムスなどのキーとなるセクションは、きっちりとアナログで押さえているので、骨格がしっかりして安定感があり、アコースティックな仕上がりになっています。ナチュラルなヴォーカルのトーンもこの音楽には欠かせない要素で、それは印象的なコーラスアレンジにも十分に生かされています。音作りは全体を通してドライで、ポップな曲もタイトな曲も過剰な感情移入が無く、新鮮なのに嫌味がありません。何とも見事なバランス感覚。 淡々としているようで、ドラマティックな面もある。どこか懐かしいのに新鮮。オーソドックスなのにコンテンポラリー・・・本当に見事としか言いようのないバランスです。
有無を言わせぬシングル「ハートビート」のキャッチーさで一躍、ギターポップ界の救世主となったフランスのバンドの1st(2000年作)。このアルバム以降、かなりフランスの多くのバンドが今までにないほど垢抜けていった気もするほど影響力は大だった。アイヴィーやファウンテンズ・オブ・ウェインもここから人気に火がついたわけだし、やはり時代を代表するレコードであることは間違いない。そしてこれが特別になりえた一つの要因は、ボーカルのグザヴィエ・ボワイエの歌声だろう。コリン・ブランストーンを敬愛するという彼のボーカルは、かなり高いレベルで完成しており、独特のシルキーヴォイスは今までのギタポバンドにはなかった風通しの良さを感じさせた。それはギタポというよりソフトロックやシンガーソングライター的なクリアーな心地よさだ。 ただ、アルバム全体通すと、多少冗長に感じる部分もあり、次作以降もその傾向は強まり伸び悩んでいる感はある。僕としては、クラブ的指向をグザヴィエが捨て去り、内面に走ったほうが、素晴らしいものが出来上がるような気がする。
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