チェコ人のメンタリティーがどういうものかに少しでも興味がある方は是非お読み下さい。 ストーリーそのものよりも、登場人物一人一人の心の機微、感情のコミュニケーションの中に、哀しみや暖かさを感じ取れる、心の温かくなる本です。
「ナチス支配下のチェコで夫婦がユダヤ人の青年をかくまう」という設定からして、いかにも重くて鬱陶しいように思えるが、ところがどっこい、とても素晴しき作品だった。 確かに時代背景は重いし、ストーリー展開も重い。いや、だからこそ、そこここに散りばめられたユーモアが生きている。 チェコというのは、昔から何でも笑い飛ばしてしまおうという気質がある土地なのだという。それは常に近隣の大国の支配に脅かされてきた小国の生きる知恵らしいが、そのチェコ人の気質がうまく表現されている。 「ナチス支配下のチェコ」という、あまり日本人が知りえない世界を描かれているだけでも、私にとっては興味深い。
本作の魅力としてまず伝えたいのはその世界観と戦闘の面白さです。 世界観は、現代の渋谷を舞台にいい意味で「王道的なRPG」っぽくない雰囲気を醸し出しています。 外見は独特ですが中身はしっかりRPGしています。ただし武器が剣や魔法でなくバッジだったり、装備も盾や鎧ではなく本当に売っていそうなファッショナブルな洋服だったりして、そこは確かに独特です。 戦闘は、DSを2画面とも使って行われます。 基本は下画面の主人公をタッチペンで操作。タッチの仕方や武器の違いによって主人公が様々なアクションを取ります。 一方、上画面はボタンで相方を操作。2人いっぺんに操作するのでかなり忙しない戦闘が楽しめます。腕はどちら利きにも対応しています。 2画面同時に気を配るのが大変でも、相方の操作は手動か自動かいつでも選べるので大丈夫。 クリアまでの道のりはRPGとしてはそれなりの長さ。ですがやり込み要素は充実していてチャプター(章)ごとのミッションや収集モノ、ミニゲーム「マブスラ」などがありクリア後も楽しめます。
独特の雰囲気もしっかり出し切れていて、間違いなく完成度は高いです。ですがそのために、注意点というか好みの分かれそうな点があります。 現代風の世界観を演出するためにBGMも非常にスタイリッシュなものが多いのですが、ラップ曲が多く好き嫌いが分かれます。曲自体は良いものばかりなので気にならないならBGMはむしろオススメ要素。 また、ストーリーが何の説明もなく唐突な始まり方をしたり、クリアしただけでは釈然としない、クリア後のプレイを必要とする終わり方をするためプレイヤーが置いてけぼりを食らいがちなこと。 そして現代の渋谷というリアルな舞台と、「死神のゲーム」「UG(アンダーグラウンド)」などのアンリアルな要素とのギャップの存在も好みが分かれそう。 要するに、作品全体から伝わってくる「若さ」に抵抗を感じるか否か。これが好みが分かれる決定的な部分だと思います。繰り返しになりますが、人による好みがあるというだけで、完成度自体はどれも高いです。 個人的にはその辺りは問題なく、むしろ不満点としては序盤に造語を交えた文章による解説がバンバン挟まれたことのほうが気になりました。
独特だと言い続けていますが、意味もなく独特な世界観を持っているわけでは当然なく、やはりこの世界観だからこそ成立したストーリーだったと思います。 それと、主人公たちの立場が多くのプレイヤーと近い立場(現代の若い子ども)なので感情移入がしやすいというメリットもありますね。 ちょっと小味のきいた完成度の高いRPGをDSならではの操作で遊べる、いい感じの異色な良作です。
価格が安かったので少し不安でしたが、実際に届いてみて大変気に入っています。 今後も機会があれば購入したいと思います。
長年図書館員、図書館情報学教員(最後は図書館情報大学副学長)までつとめ、定年退職後は全国の司書養成課程で教鞭をとりつづけている。その生涯図書館セールスマンとして、カリフォルニアで図書館学大学院を修了して、国際交流基金の図書館を世界的に評価にまで高めて、その後教鞭とともにイギリス、ロシア、中国などでさらに図書館業務にも携わりながら、研究にも力を入れたポリグロット藤野さんの生涯を圧縮して書き上げられた1冊で、日本における図書館の社会的地位の低さを憂い、将来図書館を担う若者達に図書館の素晴らしさを自らの体験と図書館史で綴った。大変判りやすい明晰な文章で描かれ、著書の面目躍如たる仕上がりである。本来の専門はアルメニア語とアルメニア史であった関係で、十指に近い言語を操るポリグロットだけに、古代のアレキサンドリアから中世ヨーロッパの図書館員に職能はまず言語学者やテキスト校訂者であった旨など、図書館員と学者稼業が必然的に結びついている過程などの分析は、決して素人向けだけではない。現職の図書館員ですら忘れていることを指摘しており、図書館の本質の奥深さを語っている。 23ページのカーネギー図書館の総数を3000を超えるとしたのは、間違いで2500強であるが、全体としてはまとまりもよく、図書館概論の副読本や教科書としても使えるくらいに充実した内容構成である。流石に、生涯図書館学者を勤め続ける自負が現れ、図書館への大きな恩返しが果たされている。著者が前書きで指摘しているように、日本の知力を上げるために、図書館を再度見直すために多くの人に読んで欲しい本である。
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