「からすがね検校」、「ヤマトフの逃亡」、「おれは不知火」、「首の座」、「東京南町奉行」、「新選組の道化師」、「伝馬町から今晩は」の7つの作品を収めた時代短編集。「首の座」、「東京南町奉行」の2編が明治初期物、他が幕末物である。いずれも山田先生の冷徹な人生観、人間に対する鋭い観察眼が溢れ出た傑作揃いである。執筆に当っての丹念な史料調べの様子も窺えるし、何より短編にしては各物語のスケールが大きいのも如何にも山田先生らしい。
例えば冒頭の「からすがね検校」は、悪徳検校の一代記(そういう一面もあるのだが)かと思いきや、物語の進行に伴い登場する人物の驚くべき多彩さやその人間模様の複雑さに唸らされる。一種の数奇な因果応報譚とも取れるが、問われているのは読者の人生観だろう。歴史上の実在人物を自身の物語に縦横に織り込む手腕は山田先生ならではのもの。また、山田先生の戦争(及びそれを導いた日本人・組織の体質)嫌いは夙に有名だが、「ヤマトフの逃亡」はそれを幕末の清廉で自由闊達な武士(兼蘭方医)の運命に託して描いたもの。主人公の悲憤と山田先生の怒りとが重畳的に伝わって来る渾身の一作。それにしても、エンディングで出て来る人物は......。このコンセプトを敷衍して、更にまさしく"妖怪"を主人公として、明治初期の政治家・元武士の人間模様を緻密かつ雄大なスケールで描いたものが「東京南町奉行」。一見ヘンな題名だが、読み通すと山田先生の意匠が良く伝わって来る秀作。また「首の座」は、この題材をモチーフにした作品を多く見るが、これを人間の"欲"の観点から描いている点が卓抜であると共に、読み進むに連れ誰を主人公としているかを明かして行く手法が鮮やか(本編を含む幾つかの作品は"主人公当て"の楽しみもある)。
非常に充実した短編集で山田先生の世界を改めて堪能した。本作と同一趣向の短編集が後二作刊行される由で非常に楽しみである。
これ以外で今お勧めなのは「蟲師」ぐらいかなぁ?
というぐらい、出来が良いです。
コミックがすごく良かったので、期待はしていました。
全編通して、良かったです。
普段アニメを見ない人にも、お勧めです。
特に時代劇物が好きな方にはお勧め!
主人公の技?に酔って下さい。
「そうきたか!(コミックを見ていたので)」と唸りました。
第19話「猛女姦謀」と第20話「仁慈流々」ですね。
第19話・・・小四郎!おまえ気が付けよ(笑)好きな人も判らんのか?
女の人を怒らせると怖いねぇ・・・(朱絹さん、怖い・・・)
第20話・・・左衛門は辛そうだねぇ・・・
豹馬といい左衛門といい、なんか気の毒で・・・
いい人なんだけど・・・
他の山田風太郎先生の作品で、こんなに大人数で戦う作品は、名前と忍法だけで、キャラはたっていないが、この甲賀忍法帖は、大半のキャラが立っている。
一人一人の個性が際立ち、それぞれの忍法も『無敵じゃないか』と思えるほど、強そうなのだが、戦う相手が相性が悪く、負ける展開が実に面白い。
主人公、甲賀弦之介が、この忍法合戦を知り、戦う決意を固めるが、愛する朧を討てるのか?
朧が自分を裏切ったのかと悩むシーンが実に読んでいて切なくなります。
『バジリスク』のコミック、アニメを観た方も、是非とも本家本元の『甲賀忍法帖』を読んでほしい。
山田風太郎の文章の美しさ、魅せる文章の力に、のめりこむ事間違いなしです。
今巻の五・六話より甲賀側も不戦の掟が解かれたことを知り、伊賀側の奇襲などもあり双方入り乱れてのサヴァイバル戦に突入します。回を追うごとにごとにお気に入りキャラが消えて・・・。つらい展開になっていきます。
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