楽しい本である。網羅的に記述されている内容は平易で読みやすく、各章末の問題や文献の案内も充実していて、初心者や体系的に学びたい読者にぴったりである。特に文献紹介は一般的な新書本から論文までがピックアップされていて簡単なコメントもついているので、著者のねらいである独習者には非常に役立つ。 全三巻の「地質学」教科書の第一巻となる本書では、地球という惑星の成り立ち、他の惑星との比較から始まって、地球の内部構造、プレートテクトニクスの解説などが続く。このあたりは個々の知識はあったものの時系列でまとめて読み直すことで非常に納得がいく。 後半は水、エネルギー、元素、そして生命の循環という内容で、物質の転換・循環による生きている地球の仕組みを知ることが出来る。化学式の登場回数が多いが、図も適度に掲載されているので、反応自体にとらわれずに原因と結果を追っていけば中高生でも理解できると思う。 著者曰く、このような「広範囲な内容を一人で執筆するのは、ほとんど暴挙といってよい」ということだが、第二巻は三年半後に無事上梓された。第三巻が待たれる。
この本はもともと東大博物館で開かれていた「異星の踏査」展の図録として作られたものでしたが、展示会期間中の図録完売品切れという驚異的な売れ行きをうけ、このたび東京大学出版会から「惑星地質学」と名前を改め販売が開始されたものです。
実は私自身も惑星科学を研究している者なのですが、この本は我々研究者の目から見ても驚くほどクオリティが高く、現在日本語で読める惑星科学の教科書としては、文句なしに最高クラスの一冊だと思います。太陽系の惑星について一通り学ぶのに最適です。
これほど素晴らしい本は、そうそう手に入るものではありません。惑星科学に興味のある方はぜひご購入されることをおすすめします。 「異星の踏査」展で図録を買いそびれた方も、今度こそはしっかり手に入れておきましょう。
専門用語の説明に、別の専門用語を使用するということは避けられない。しかし、本CD-ROMの場合、説明文の中で用いられている専門用語のうち、この事典に収録されているものは、リンクにより一発でジャンプできるようになっている。これは、書籍版にはない便利な点で、大幅に検索の労力が軽減される。また、欧州語からの検索も可能であり、英、仏、独のほか、本事典に収録されている用語すべてではないが、ロシア語からの逆検索も可能になっている。書籍版の用語の説明文の中で用いられている数式や化学式、図表関係は、もらさず図版で収録されている。さらに、EPWING規格に準拠しているため、同規格の広辞苑や新英和中辞典などと同じ検索ソフトで併用することができる。
日本の地質学のパラダイム転換の時代を通じて一貫して最前線で研究した、著者の自然と社会そして研究への考え方を、広範囲に読みやすく書いている。帯の「地質学をリードしてきた著者が熱く語る」という惹句はぴったりマッチしている。個人的には、今からみれば夜明け前の、学生~大学院生時代の記述に当時の熱気が偲ばれた。 プレートテクトニクス革命については、泊次郎『プレートテクトニクスの拒絶と受容』(東京大学出版会)があり、科学史として非常に興味深く読めるので、併読もお勧めです。同書にも著者の名前は、16年間空白だった東京大学地学科教授への着任者として、一カ所だけだが出てくる。本書でも「はじめに」で東京大学の地質学教室の閉鎖と地球惑星科学専攻への統合再編について触れているが、まだまだ生きている歴史ということか、本文中ではさらっとしか書かれていないが、興味のあることろである。 最後の「付録 これから論文を書こうとする若い読者のために」は、サービスかも知れないが、本文とも照応する部分が感じられた。 目次は多少詳しく項目が記載されているが、著者の思想に触れるためには、索引があれば有難かった。 心臓バイパス手術をしたとのことであるが、著者の健康と活躍を祈る。 33ページ1行目「~ダーウィンが一九三五年、~」は「一八三五年」の誤り。
お陰さまで解らない鉱石の名前が解りました。 大変助かります(^v^)
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