横浜優勝は決して松坂大輔独りによるものではない。
松坂の横浜は3年間で夏と春の1回ずつしか甲子園に出場していない。
あれだけの好投手を擁しながらも、なぜか。
それはチームワークにあった。
その類い稀な素質と技術が故にチーム内で孤高の存在であった松坂。
投手としてもさることながら、4番を任されていたことからも、
当時の横浜高校はまさに「松坂頼み」の様相が拭いきれない。
松坂自身も「自分がしっかりすればチームは勝てる」という誤った自信を持ち、
独り相撲に走った上に勝てない原因を自分以外に求めてしまう。
現に高校2年の神奈川大会決勝でもそれらが原因で敗退していた。
チームメイトを完全に信頼していたわけではなかった中で、春の選抜優勝。
今では珍しくなくなった150キロの豪速球投手はマスコミに大いに取り上げられた。
結果、全国の高校球児は打倒松坂を目標に掲げる。
余談だが、いわゆる「松坂世代」には好投手が多い。
和田(島根・浜田高/現ソフトバンク)、杉内(鹿児島・鹿児島実業高/現ソフトバンク)、
藤川(高知・高知商/現阪神)、久保(大阪・関大一高/現阪神)、
久保田(埼玉・滑川高/現阪神)、館山(神奈川・日大藤沢高/現ヤクルト)、
新垣(沖縄・沖縄水産高/現ソフトバンク)など…
迎えた夏の甲子園。
3回戦まで自責点ゼロで抑え、準々決勝、対PL学園戦。
PL打線に打ち込まれる原因を解明し、試合中に修正し本塁打も放った捕手小山。
9回までに5点を奪われながらその度ごとに追いつくチーム。それが松坂に力を与えていく。
さらに普段は自然体を説く渡辺監督から「こんないい試合、絶対負けちゃいかん!」という檄。
そして延長17回に途中出場の常磐が勝ち越し2ランを放つ。
それを見て松坂はブルペンで涙を流す。
準決勝、対明徳義塾戦。8回までに6対0の劣勢。
そこから横浜打線が息を吹き返す。
不振だったファースト後藤のタイムリー。
センター加藤のセーフティバント。
チームプレイに徹する松坂が送りバント。
そして左の代打の切り札、柴のサヨナラ安打を呼ぶ。
対京都成章の決勝戦でもバックが盛り立てる。
ショート佐藤や先制ホームランも放ったセカンド松本の好守備。
夏の甲子園優勝は、まさに松坂を中心にチームが一体となった結果である。
今まで甲子園を沸かせた偉大な選手は多くいるが、
延長17回の準々決勝、
6点差まさかの大逆転の準決勝、
ノーヒットノーランの決勝と、
ここまで劇的なストーリーがあった大会は類を見ない。
その背景にはチームメイトとの絆の物語があることを忘れてはならない。
表やグラフを多用していて非常に比較がわかりやすい。
ほんの10年の間に5倍に膨れ上がったMLBの収益。
その裏には、凄まじく洗練された商魂と商才がある。
30歳前後で球団社長の職に就くその人材登用が凄い。
大学生へのアンケートでMLBへの就職を希望している若者が他のスポーツ界より圧倒的に多いのも頷ける。
MLBは単に野球で凌ぎを削るだけでなく、ビジネスの戦場として優秀な若者がチャレンジしたい土壌が揃っている。
チケット販売、グッズ、ネットワーク中継、テレビ局、マイナー球団、そのほかにもありとあらゆる垣根を越えてビジネスを展開していく様は本当に頼もしい。
そういったひとつひとつの事例を球団ごとや、過去との対比をしながらわかりやすく解説してくれている。
NBA、NFLよりもMLBが大好きな私は非常に将来への期待を持てる内容でした。
「その場」にいた人物にしか書けない内容で、実に面白かった。
特にイチローについての、
「神が舞い降りたのではない。イチローが神を引っ張り舞い降りさせたのだ」
というコメントは、間近で見ていた人にしか語れない万金の重みがあります。
非常に貴重なWBC体験記録です。
やや「とってつけた」ようなタイトルにメゲずに、ぜひ手にとって読んでみてください!
あの激闘から10年。見る者をその直向さ、一生懸命さで感動させ、その高い技術と気持ちによって野球の奥深さ、面白さを教えてくれた素晴らしい戦いでした。しかしあの試合を演じてしまったため、逆に過去の自分という幻影に捕われ、あるいは松坂大輔という不世出のピッチャーに出会ってしまったため自らの道を狂わせてしまった者もいました。それでも懸命に壁を乗り越え、自分の道を切り開こうとする元高校球児たちの姿がここには描かれています。 現東北楽天ゴールデンイーグルスの平石洋介選手の「最終的には人生で勝ちたい」という言葉が印象に残っています。当時の横浜・PLの選手たちは確かに野球の力では松坂に遠く水を開けられてしまっているのかもしれませんが、自分の歩んでいる世界で目標に向かって頑張る、その点では松坂と何ら変わりのない人生を送っています。 この本を読んだ後に当時の映像を振り返って見てみると、この球児たち、あるいはスタンドで応援している高校生も今では1人1人必死に人生を生きているのだろうな、自分も頑張ろう、自然とそんな気持ちにさせてくれました。
素晴らしい試合の裏側には、さらに素晴らしい真実がありました
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