とにかく基本は学習を疎かにせず、しかもその背景と理由と真意を汲み取る努力が、自然と自分にやるべきことを自覚させるように感じさせられました。そして、立場に甘んずることなく、自らが範を示すことできることが大事であることをこの本で知らされました。対極的な佐久間象山も素晴らしい人間かも知れないですが、住む人々の苦労と痛みをどれだけ理解していたのでしょうか。ひけらかすことなど何も必要ないのです。ただひたすらに苦しむ領民を幸せにするために、自分がすべきことを時には淡々と、時には大胆に実行すればいいことを知らされました。素晴らしい刺激を受けました。 私は河井継之助を人生の師と思ってきましたが、その河井が尊敬する人物を知ることができ、また喜びが膨らみました。
登場人物も個性的で、面白かった。 ただ時期、時間がよくわからないとこがあった。 呂蒙の生涯は短いけど内容はあったと思う。
王陽明の生涯を読んでいると、何とも言えないやるせなさがこみ上げてくる。陽明は、誰よりも朝廷に忠誠を尽くして、功績をあげた人でありながら、その朝廷に殺されたといえる人だからだ。 陽明はその生涯で三度兵を指揮した。朝廷でも手におえなかった札付きの賊徒がはびこる騒擾の地へ放り込まれ、電光石火の奇襲戦法によって、次々に賊徒の巣窟をつぶし、寧王という藩王の謀反をわずか14日で鎮圧した。そして生涯の最後に、病躯をひきずりながらも瘴癘の地の反乱鎮圧に赴き、その地を鎮撫した。しかし、それに対し、朝廷は恩でなく仇でむくいた。陽明の功をねたんだ奸臣らは、寧王の謀反鎮圧という陽明の功を横取りしただけでなく、逆に陽明の弟子をとらえ拷問にかけ、陽明を謀反の首謀者に仕立て上げようとしたのだ。さらには何の罪もない良民を、寧王の残党としてとらえ殺し、それを自らの手柄とした。もはや正気とは思えない悪魔の所業である。王陽明の生涯は、我々に、人間とはかくも高潔に生きられるのだと示す反面、人間ここまで腐れるのかとという負の面をも示し、そしてどちらも人間なのだと教えてくれるのである。 この小説は、作者独自の創作はあまりない。小説としては、もっと創作をいれた方が面白かったかもしれないが、王陽明の生き様を如実に我々の目の前に蘇らせてくれていると思う。
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