このドラマの4年前の同じNHKで制作された『藏』で、
松たか子の子供時代を演じた幼少期の
井上真央が、この作品では
松たか子の娘役として共演します。現代の日本を代表する2人の女優の共演作としても価値のある作品ですが、内容も日本のドラマ史に残る名作の一つに挙げられるのではないでしょうか。
特にラスト近くの二人のシーン(「あなたは本当の娘ではない」と告白するシーン)は
松たか子と
井上真央の白熱の演技がぶつかりあう最高に感動的な名場面です。最近ようやく演技が認められるようになってきた
井上真央ですが、この時(12才)すでに完成された女優であることを証明しています。ちなみに彼女の出世作『キッズ・ウォー』はこの同じ年にスタートします。
くしくも日本
アカデミー賞において2010年に
松たか子、そしてつい先日2012年に
井上真央が最優秀主演女優賞を受賞しましたが、私個人的にもこの二人が今の日本の女優さんの中で一番素晴らしいと思っています。このあと二人の共演はありませんが、是非またいつか素晴らしい作品で共演してもらいたいものです。
テレビ放映を見ていなかったので、完全版と迷って総集編を買いました。
「こんな感じだったんだぁ〜」という全体の流れが見えることについては、総集編はばっちりです。座談会やインタビューも、大河ドラマを作り上げるということが、役者にとってどんなことなのかがわかって、見る側の気持ちを盛り上げてくれます。
・泣かない滝沢くんが、目を赤くしていた撮影終
・頼朝役の
中井貴一さんの滝沢くんへの言葉
は、私としては心揺さぶられる場面でした。
いわゆる「おいしいところ」をつなぎ合わせているので、短い時間で
源義経という人の生き様を知ることはできます。しばらくの間は、これで満足ですが。
やっぱり、完全版を見たくなりますね。
・・・完全版を見たくなるようにするマジックなのかな?
「櫂」の続編的な自伝的小説群の一作(他の方が述べられているように、発表はこの後の時代の「朱夏」の方が先)。「櫂」が母・喜和の目を通しての物語だったのに対し、「春燈」は著者の分身・綾子が主人公となり、彼女の目を通して語られる。一部(綾子が母・喜和の元から岩伍の家に戻るまで)は、「櫂」と重なっている部分があるが、綾子の目を通してみると、また違う感覚がある。
「春燈」を読んで感じるのは、綾子という人物が感性豊かに感じられる。甘やかされ過保護に育った弱さと我儘さ、驕慢さと共に、一面お人よしで家業から来る劣等感。そういったものがないまぜになった感覚が非常に良く伝わってくる。作者の綾子に対する描写はときに辛辣とも思える部分もあるが、それは過去の自分を振り返っての、自分自身を客観的に、また欠点も含めて余すところなく描きたいという作者の意志を感じる。
だが、この辛辣ともいえる描写、変に共感できるところはある。誰しも綾子ほどではなくても、自分に甘かったり都合よく考える部分はある。この本を読んでいると、ちくちくと刺されるような思いと共に、苦笑いしながらも共感している自分を見出してしまう。
この後「朱夏」「仁淀川」へと続いていき、「櫂」も含めて四作で一つの作品としてみることもできるが、「春燈」は一際愛着を感じる作品だ。