いつも期待を裏切らない、中井久夫氏のエッセイ集。その文体は、とてつもない知性と理性を感じさせながらも深い優しさと鋭い感受性、洞察力に満ちていて、読むものに満ち足りた時間を与えてくれる。
この10年のエッセイということで、阪神淡路大震災に関する文章が多い。被災者でもあり、治療者でもあった著者の、PTSDに関する考察、災害被災者についての差別の問題、ボランティアの問題など、初めて知る事柄も多く、勉強になる。
次の巻が出るまで時間があくので、ストーリーを忘れてしまっているのが悲しい。
私はわかりませんが、妻がこれがいいというので、多分いいのでしよう。妻のいうことが一番です。
ひっそりと誠実に生きてきた人に突然スポットライトが降り注ぐ瞬間がある、そんな物語が集められた短編集です。コンビナートの荷役を30年にもわたってひたすらやってきた蟻んこ独身男の前に突然現れた絶世の美女、以前の男が忘れられず思い出と共に過ごしている妻とそんな妻を愛する夫、追われているヤクザを匿うことになった幼馴染の恋人、敗戦で逃げてきた中国の記憶を不倫相手の婚約者に助けられて取り戻してゆく初老の男、婚約者に捨てられた40男と不倫相手にすっぽかされた30女、子供の頃に自分を捨てた母親に再会する娘が母への腹いせにつきあっている男。誰に見られるわけでもないのに、毎日を誠実に過ごしてゆくことがいつか幸せにつながってゆく、そんなことが感じられました。40歳過ぎの方にお勧めです。
夏目理緒の作品としては初期の作品に当たる。まだ変な計算とかがなく、ういういしい表情が全快しています。健康的な感じが全編に出ていて、大人のエロティシズムとかはもちろん出ていません。初期の作品としては、そういうところがいいのではないでしょうか。独特の舌ったらずな話し方は相変わらずでとてもチャーミング。最近の作品に飽き足らない感じを持つ人は原点回帰として良い作品だと思う。
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