20世紀中盤、エルサレム東、クムランの崖上の洞窟で発見された「
死海文書」は、モーゼ五書を含む旧約聖書を検証する上での貴重な資料であり、古代へのロマンを考古学者達に掻き立てさせた。
紀元前6世紀に始まるバビロン捕囚は、ユダヤ人達にとっての受難の歴史だが、当時中東で最先端のコスモポリタン都市であったこのバビロンでの経験は、寧ろユダヤ人達が旧約聖書を生み出す原動力となる。
この作品では、主に
メソポタミア地方における考古学者達の遺跡発掘
調査に主眼が置かれ、やがて聖書に描かれる
エデンの園は実在するのかという問いに帰趨する。ハンムラビ法典の検証部分では、現在の「神明裁判」の映像が挿入され、少し怖い。
また、聖書に描かれる「ノアの方舟」洪水伝説は、古代、粘土板に文字を残したシュメール人による物語「
ギルガメッシュ叙事詩」に由来する物だと言う。イラク南部にある、このシュメールのウル遺跡の王墓発掘場面では、毒を煽って殉死したとされる家臣達の遺骸が発見され、当時の王の絶大な権力を物語っている。
古来から、文明が一早く発達した
メソポタミア文明の強大さと、小国でありながらも、他の様々な文明の影響を受け、旧約聖書をまとめ上げたユダヤ人達という対比の置き方も、また面白い。
少し古い作品ですが、見応えがあり、演出が良く、江守徹氏のナレーションも無私で良い。昨今のレベルの低い考古学特番に慣らされてしまった私としては、少し古い作品とはいえ全然楽しめた。何故、昨今のテレビ番組はこういう硬派で大人な番組作りが出来ないのかと残念に思った。
ポワロファン待望の新作のDVD化が、NHK初回放送後、3年9か月振りに実現した。
この「
メソポタミア殺人事件」は、中東を舞台としたポワロ物長編3作品のうちの一つであり、「
ナイルに死す」、「死との約束」のように映画化こそされていないものの、傑作といって差し支えない作品である。
また、この作品では、アガサが、当時、夫に同行して毎年出掛けていたイラクやシリアの遺跡発掘現場の様子が生き生きと描かれ、その宿舎や発掘に携わった人はプロット作りにも活かされているのだが、そんなアガサならではのリアルな中東色溢れる作品を、要約しながらもかなり忠実に映像化している。ポワロが唯一恋した女性として有名なロサコフ伯爵夫人からの助けを求める電報で、バグダッドまで呼び出されたポワロに降り掛かった、テレビ版オリジナルのとんでもないエピソードも必見だ。
ところで、気になるのは、今後のDVD化の見通しだが、残すところ、長編20作品であり、DVDにして20枚といったところだろうか。新BOX1と2が各16枚で再編成されており、それと比べると、中途半端な数が残ってしまったが、常識的に考えれば、全作品完成時に、新BOX3が20枚で発売される可能性が一番高く、先日NHKで放送されたばかりの第9シーズンの4作品以降の分売も、それまでないと見るべきなのだろう。
問題は、これまでの製作ペースでは、残る作品の完成が、一体、何年先のことになるのか、予想が付かないことだ。ちなみに、第10シーズンも、第9シーズンに引き続き4作品となり、現在までにその4作品、「青
列車の秘密」、「ひらいたトランプ」、「満潮に乗って」、「葬儀を終えて」の撮影を終え、残るは12作品にまでこぎつけているようではあるのだが、私を含めたDVD化まで待ち切れないという熱烈なポワロファンは、NHKでの放送を見逃さないようチェックを怠らないのが、最善の策なのだろう。
「四大文明」の一つとして必ず世界史の授業でも取り上げられる
メソポタミア。
その名前は広く知られていても、その内実はあまりしられていないのではないか。同じ中東地域の
エジプトと比べるとずっと地味な印象であるからか。また、中心地のイラクの遺跡や文物は
エジプトのように気軽に取り上げるのが難しいためかもしれない。
本書は知られているようで実のところあまり知られていない
メソポタミア文明について、どのような人々がどのように考え、どのように生きたかを当時の粘土板文書を中心に読み解こうとしたものであるといえるだろう。
シュメール文明の成立や文字や文書の起源については専門的な議論が展開され、地名や人名も聞き慣れないものが多く、取っつきやすいとは言い難い。断片的にしか残されていない粘土板文書から読み解くため、いまひとつわかりにくかったり、筋が通らない部分もあるが、必要以上に空想や想像を入れないという態度には好感が持てる。
かの有名なハンムラビ法典についてはかなりの紙幅を割いて解説している。「目には目を」についての誤解もあるとおり、内容については意外と知られていないようだ。この法典は
メソポタミアの社会を知るための第一級の史料であり、
メソポタミアを知ってもらうためにはこの分量を割り当てるのは当然なのかもしれない。
わりとわかりにくい内容を中高生にもわかりやすいように記した努力はなかなかのものであると思う。難しいことを簡単に、かつわかりやすく書くのは大変なことである。歴史に興味を持つ中高生に歴史学の入り口を示すという役割は十分に果たせているように思われる。
まず1から5巻までホントに素晴らしい。こういうものはDVDでなければならないと痛感する。劣化の無い画像と音に作品の品質がストレートに伝わってくる。
一番考えたのは第2巻の
メソポタミア文明。イラクの大地から旧約聖書に出てくる門が出土するシーン。現物は今
ベルリンにあるようだが、イラク戦争の落とした爆弾が大地に眠るこれほどの宝も、盗まれていった財宝以上に破壊してしまっただろうと思い、本当に残念だった。
こんな戦争するべきでなかったと思うのは僕だけだろうか。