今さら改めて云々するのもかえって野暮のような気もしますが、アナログで散々聞いてきた方も多いはずのこのアルバムは、個人的なことを言わせてもらえば、その良さは認めるにやぶさかではありませんが、どうしても体質的にたくさんは聞くことのない、いわゆる「
ウッドストック系」の中にあって、例外的に長年親しんできた一枚で、マリア・マルダーは好きと公言する割りに実はこの一枚しか所有していなかったりします。全編、
タイトル通りの「オールド・タイム」な曲調のアメリカン・ミュージックが並び、エイモス・ギャレットのギターが歌に寄り添うように奏でられます(随所にそれっぽいピアノが聞こえるので、もしやのドクター・ジョンも、本名のマック・レヴェナックで参加しています)。楽曲的にも「真夜中のオアシス」やドリー・パートンの原曲と甲乙付け難い「マイ・テネシー・マウンテン・ホーム」、ロン・デイヴィスの「ロング・ハード・クライム」(セルフ・カヴァーもよいです)を始め、いずれ劣らぬ佳曲揃いです。
ジャケのマリアの顔は縦横比が多少歪んでいる。DVDに登場するマリアの姿は、ディランのDVD「ノー・ディレクション・ホーム」でインタビューを受けたときと同じだ。若き日と比べて太り、声がしゃがれたことは事実だが。
DVDで、元気な彼女の姿を確認できるのは嬉しい。ラストの曲ではフィドルの演奏まで披露する。
場所はサンフランシスコ近郊の劇場らしいが、ライヴの年月日は「ハート・オブ・マイン」発表と同時期だろうとしかわからない。その「ハート・オブ・マイン」はディランのラヴ・ソング12曲をカヴァーする好企画だったが、このステージはその全曲を同じ曲順・ほとんど同じアレンジで再現する。それに懐かしのヒット曲「真夜中のオアシス」とJ.J.ケールのM8、ベッシー・スミスへのトリビュート・ソングM12(CDにのみ収録)の3曲を付加したのがセット・リストの全部。くつろいだ雰囲気をDTSサラウンドで堪能できる。
ただ、DVDに日本語字幕はなく、歌詞カードもない。日本語資料はあるが、曲間の楽しいおしゃべりや特典インタビューの内容が完璧にはわからないのが残念。