1994年6月27日、松本で何者かが発生させた有毒ガスにより7人が死亡した。偶然、シアンや硝酸銀を所有していた著者は、警察はもとよりマスコミからも犯人と決めつけられた。誰もが知っている松本サリン事件である。
著者は本書で、あの事件の詳細を経時的に振り返っている。一緒にテレビを見たあと母親の具合が悪くなったので、当然息子は父親が犯人でないことはわかっている。そんな息子や娘たちが気丈夫に父親を支えていることも印象深い。同時にマスコミによる報道のありかたに大きな課題を提示している。
警察の能力がこんな体たらくであるから、同じような事態に自分が巻き込まれる可能性は誰にでもある。そんな時にどう考え何をしたら良いかを知る上でも本書は有用である。
(1) 警察は真犯人を捕らえるために仕事をしているわけではない。誰でもよいから犯人と考えられる人間を検挙し事件を終わらせたいと思っている。本事件では、息子が自らもサリンで負傷し入院していた父親に「お父さんがもしダメなら僕が働くことになるから苦しい生活になるけれど、それはそれで充実した生活になると思うから楽しさや喜びを見いだしていけると思う」と、父親を安心させ自らを励ます気持ちで言った言葉を刑事が立ち聞きし、それのみで著者に対する疑惑を深めている。
(2) 従って警察はどんな手段でもとりうる。マスコミに事件の内容をリークさせ、自分たちが疑っている者が犯人だと世間からも認められるように誘導を謀る。本事件では、著者や家族さえも容疑がかかっていると知らされぬ間に、マスコミは「殺人容疑で第一通報者の会社員宅を家宅捜索している」と伝えている。
(3) 滑稽なことに、警察のポリグラフ(ウソ発見器)の信頼性は全くない。本事件では、「あなたは長男に薬品が入った容器を隠すように指示しましたね」という質問に「いいえ」と答えると、ウソの反応が出たそうだ。著者はもともと犯人ではないから、こんな誤反応をしていては、このポリグラフはほかの捜査にも全く使い物にならないことがわかる。もし、自分が同じような状況になったら、本書で使われていたポリグラフは当てにならなかったと警察に言うべき。
(4) マスコミはそのうち、売り上げを伸ばすために扇動的でいい加減な記事を書き始める。後からそれが間違いであったと判明してもなかなか謝罪しようとしない。マスゴミは最初からたとえ裁判で負けても数百万円支払えばいいという認識で臨んでくるから悪質である。要するに誠意のかけらもない。最も酷いのは週刊誌で、そうすると現在発刊されている週刊誌の内容の信憑性も、本事件と同様に相当低いと考えられる。
(5) マスコミ業界というのは、決して子供に誇れる職業でないことがわかる。
(6) 著者の所持していた薬品からサリンなどできるはずもないのに、化学を専門とするある大学教授はできるかもしれないと証言した。大学教授の言うことも信用できない。これは原発事故でコメントしていた東京大学の教授をみれば理解できる。
著者の妻はサリンの被害で亡くなった。オウムサリン事件が発覚しなければ著者はどうなっていたかを想像すると恐ろしい。警察とマスゴミは、実際に犯罪被害、えん罪被害、報道被害を同時に受けた著者の意見に真摯に耳を傾けるべきである。最終章、「文庫本あとがき」は著者の主張が凝集されており白眉である。マスコミは是非とも一読する義務がある。
【お客様は、2011/2/17にこの商品を注文しました。】
メディア・リテラシー関連と言ってよいと思いますが、 少なくともひとつの(情報源)のみで、物事を判断せず、 多角的に情報に当たって、最終的には(自分自身で) よく考えてみる(→[一度、情報源を疑ってみる。])、 ということの必要性を、よく分からせてくれる良書と 思います。
【追記】
この書籍は、『移行期的混乱』と並んで、震災前に入手しておいて(触れておいて)、 〔本当に〕良かった、と言える、〔本当の〕良書です。m(_._)m
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